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花たちは今日も元気に咲き誇る  作者: 椿想香
冬 願いつづければ、この望みは叶いますか?
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86苦難は続く 3

シオン視点です。

 あれから、理事長からの応援という名の脅しを受け、なんとか勉強のモチベーションは保っている。だが、それだけで問題が解決するわけではない。

 初等教育に関してはクリアしたが、今回の数学のテスト範囲に関しては全然だめだ。そもそも方程式の理解に時間がかかり、理解できたとしても応用問題が解けなかったり、解くのにものすごく時間がかかったり、逆に速く解こうとすればミスを連発してしまう。これでは、時間内にテストを解き終え、さらに見直すことは不可能だ。計算を速くするため、教科書や参考書に載っている問題を片っ端から解いているが、どう考えてもあと1週間ちょっとで解き終わるとは思えない。しかし、終わらないと分かっていても、現状、他の方法はないので、手を止めるわけにはいかない。


 本日の授業が全部終わり、今日も私は白ユリ図書館にて、時間の許す限り問題を解き、閉館後は学生寮の自室で続きを解いた。幸いなことに、明日からテストまでの1週間は、テスト勉強期間ということで、学校の授業は休みになるそうだ。

(これから1週間、一日中問題を解けばなんとかなるはず……と思いたい)

 連日の寝不足のせいか、どうしても楽観的に考えることができない。

 それと、懸念点がもう一つある。ここ数日、白蓮と紅蓮が図書館に来ていないのだ。あの2人がテストを諦めたとは思わないが、今日も来なかったので、もしかするとその可能性もありえるのだろう。


(……私が言えることではないが、大丈夫なのか?)




 ピーンポーンパーンポーン

『図書館の閉館時間となりました。』

 閉館のアナウンスを聞き、私は1人、帰る準備をした。


 図書館を重い足取りで出ると、冷たい風が頬を叩いた。

「もう冬か……」

 ここでの生活は、まだ数週間しか経っていない。しかし、その中身はとても濃いものだった。

 体験したこともなかった学校生活、クラスメイトからの歓迎、桜たちとの何気ない会話。一つ一つの記憶が温かく、あまりにも黒ユリと違った。


(あとどのくらい、私はここにいられるのだろう。

 __このぬるま湯から早く抜け出さないと、もう前みたいには……。)



 その時、風を切るように、人の声が耳に届いた。

「シオン様!!」

 この声、この呼び方。見なくても、誰か分かった。



 私は声がした方を向くと、案の定、そこには走って来る白蓮がいた。

「はぁ、はぁ……良かった、間に合って……」

「白蓮、そんなに息を切らして、何の用?」

数日ぶりに現れた彼に対し、つい、嫌味っぽい言葉を投げてしまった。

「その、実は、今回のテスト範囲の対策問題集を作成したんです!

テストに出そうな問題をコンパクトにまとめたので、ぜひ使ってください!」

「対策問題集?」

白蓮から渡された問題集の目次を見ると、確かに全範囲を網羅しているようだ。目次からペラペラとページをめくると、一単元ごとにたった三問に問題をまとめており、そのおかげで総ページ数を抑えている。


「まさか、ここ数日でコレを作ったの?」

「はい!!紅蓮とか、他のクラスメイトたちの力を借りまして…」


(なんで……) 


「クラスメイトに、前回のテスト問題を見せてもらって、そこから今回のテスト形式や傾向を予測したり……」


(なんで、そこまでするの?)


「あとは、各教科の先生からもアドバイスをもらったりして……」


(私に、ここまでする価値なんて無いのに……)


「シオン様?大丈夫ですか? 先ほどからお疲れのようですが……最近ちゃんと寝ていますか?」


(なんで、こんな私を気にかけるの?)



「…なぜ?」

「え?」

「なぜ、ここまでしてくれるの?私はもう、貴方の上司でもないし、何の関係もない他人よ」

 白蓮の献身ぶりに、思わず疑問が口に出てしまった。

 彼にこんなことを聞いたって、どうせ私の疑問は解消されない。だって、彼は生まれつきの優しい人だから。

 きっと、こんな行動に何の意味も持たないのだろう。

 でも、理由のない善意が怖くて、質問せずにはいられなかった。


「なぜと言われましても……えっと、僕がしたいからとしか…理由がないですね。

僕にできること全てを、シオン様のためにしたいんです!」


(白蓮がしたいから?)


「僕にとって、シオン様は恩人なんです。シオン様がどう考えようとも、無関係になる日なんて来ないですよ」


「おん、じん?」

私は彼を助けた覚えはない。逆に、部下としてこき使った記憶しかないのだが。

「はい。シオン様はボス……いえ、アイツから僕たちを庇ってくれましたよね?」

「は?何を言っているの? ボスの腹心である私が、そんなことをするわけないでしょ?」


「……シオン様が()()()ボスの腹心であるなら、そうでしょうね」


 白蓮にしては、意地の悪い言い方だ。彼にも、こんな嫌味な言い方ができたことに、私は少なからず驚いた。

「……何が言いたいの?」

「シオン様はボスの腹心ではなく、むしろ……。あ、いえ、これ以上は憶測なので……」


「……。確かに、白蓮の言う通り、私はボスの腹心ではない。

でも、私の忠誠はボスの下にあることは変わらないし、貴方を助けてなどいない。そして、貴方たちが白ユリに寝返った今は、敵対関係にある。

なのに、どうして恩人という言葉が出てくるのか、全く意味が分からない」

白蓮の考えが全然読めない。


(彼はいったい何を言おうとした?)


「本当はここまで言うつもりはなかったのですが。

……思った以上に僕はシオン様から信用されていないようなので、言わせていただきます」



 そう言って、白蓮は一度目を伏せた。


 たった数秒間のことだが、私にはもっと長い時間のように感じた。


 彼の言葉の続きが気になる一方で、今すぐ彼が話すのを止めるべきだと警告するもう一人の自分。


 心臓の音が警告音のようにうるさく鳴り響く。


 白蓮と再び目が合った時、いつもの優し気な雰囲気がなりをひそめ、覚悟の決めた顔つきをしていた。



(まさかっ……いや、それはない。あのことが知られるはずがない!!)



「実は一度、アイツがシオン様に暴力をふるっている所を目撃したことがあります。

その時、二人の会話が聞こえてしまって、その内容から僕なりに予想したのですが、


__シオン様も、アイツと契約を結んでいますよね?


そしてその条件は、僕と同じで、シオン様にとって大切な 「白蓮」  」


「もういい」

(これ以上、言わないで)


「……シオン様、不快な気持ちにさせてしまっていたら、大変申し訳ございません。」


(ああ……彼にそこまでバレていたのか……)


彼の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。

思った以上に長くなりそうなので、ここらで一回切ります。

次は今月中に投稿したいという気持ちです。

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