82季節外れの転校生
長い間、執筆できずにすみません……。
待ってない方も待っていた方も、改めて「花たちは今日も元気に咲き誇る」をよろしくお願いします!
視点は桜です。
紅い葉が朽ちて、木々が寂しくなったこの頃。
今日から、シオンが私のクラスにやってくる。
「はい、みんなおはようございます!
早速ですが、今日から新しい生徒が加わります!」
「え!!」「卒業まで半年も無いのに!?」「女ですか?男ですか?」
(まぁ、そういう反応だよね〜)
4月から始まった学校生活は、3月の卒業式で、終わりを告げる。だから、10月ぐらいに転校してくるのは相当珍しいことだ。
「転校生!入ってきて良いわよ〜」
ガラッ
「女の子じゃん!」「え、黒髪に赤縁眼鏡…かわいい…」
「じゃあ、簡単に自己紹介してくれる?」
ちなみに目を隠していた前髪は、勉強の邪魔になるからと、理事長が切れと言ったらしい。そういう訳で、シオンの目がよく見えるのだけど……。
(うわ〜めっちゃ嫌そうな顔してんじゃん〜)
__シオンは基本的に無表情だが、数日一緒に過ごした桜、元部下の紅蓮・白蓮には読み取ることができる。つまり、クラスのほとんどが、彼女の本音に気付かない。
「……シオンです」
「席は、桜さんの隣が空いてるからそこに座って」
「…はい」
シオンは静かにうなずくと、こちらに向かって歩いてきた。
「シオン、これからよろしくね」
「…こちらこそ」
私の顔を見ると、意外にもシオンはホッとしたような表情を見せた。
(あ、もしかして学校生活に不安とかあったのかな?)
彼女の経歴を考えれば、大変な学校生活を送っていたのだろう。
キーンコーンカーンコーン〜
午前の授業が終わり、早速シオンを食堂に誘おうとすると、クラスメイトが殺到してきた。
「ねぇねぇ、シオンさんの魔法ってどんなの?」「えっと……」
「なんでこの時期に入学したの?」「あの…」
「眼鏡かわいいね〜いつからつけてるの?」「それは…」
「今から、食堂行くよね?一緒に行っても良い?」「いや、それは」
(うん、なんかシオン、大人気だな〜)
あまりにも質問が飛び交っているので、シオンが目を回している。シオンは慣れてくるとよくしゃべるが、初対面では口数が少なくなる。これは、助けた方が良いかもしれない。
ガラガラ…
私が立ち上がると同時に、教室の扉が開いた。
「シオン様!僕も昼食に同行しても良いですかって……あれ?」
(あーこれもっとややこしくなるやつ〜)
いきなり転校生のシオンを白蓮が様付で呼び、そして顔見知りであると明かすようなことを叫べば、教室は静かになる。さらに、白蓮は普段、大人しいイケメンで通っていたので、そのイメージを崩すような態度を取ると、当然クラスメイトは固まるに違いない。
「白蓮……貴方、空気って読める?」
「あいつ、普段は読み過ぎなぐらい周りに気を使うのに、たま〜に読めないときあるよな〜(まぁ、シオンが絡んでいる時限定だけど)」
「なんか…すみません……やり直しますか?」
「いや、もう遅い…」
「うっ…」
「白蓮何やってんだよ〜(最高だよ!)」
クラスメイトが混乱の渦に巻き込まれてる。
(まぁ、シオンが意外とズバズバはっきりと言うタイプって分かったこともだけど、やっぱり白蓮の様子に一番驚いているのだろな〜)
「紅蓮もシオンもそのへんにしてあげよう〜」
「そ、そうです!誰にでも失敗する時はありますよ」
「失敗……」
あ、今、すみれがとどめを刺した。
「とりあえず、早く食堂に行きましょう。このままだとみんな、昼食が食べれないわよ?」
「柊の言う通り!クラスのみんなには後で説明するから、今はお昼にしよう!」
このままだと収集がつかないので、私たちは無理矢理食堂に向かうことにした。
「……白蓮」
「はい、シオン様」
「貴方、実は反省していないでしょう?」
「え!僕何かやらかしましたか?」
「あ、うん……もういい」
「そうですか……あ、シオン様、袖にソースが付きそうですよ?」
「……私のことは良いから、貴方は食事に集中しなさい」
「ですが……あ、シオン様、その料理は辛すぎるのでこちらと交換しましょう」
「あのさ、紅蓮〜。一つ聞いても良い?」
「だいたい予想がつくけどなんだ?彩芽」
「白蓮ってさ〜………昔からシオンに対してああなの?」
(アヤ、グッジョブ!!)
今、このグループで皆が疑問に感じていることを聞いてくれた。
確かに、病院に入院しているときから、どこか違う態度の白蓮を見ていたが、ここまですごいとは思わなかった。
「あ〜〜」
紅蓮は、嫌がるシオンを甲斐甲斐しく世話する自分の兄を横目に、ため息をついた。
「……最初はああではなかったんだけど、ある日を境に、異常に過保護というか、シオンの世話をするようになった」
「過保護……」
「世話……」
「ある日を境に?」
「ああ、まぁ何かあの二人にあったんだろ…
俺が聞いても、曖昧にされて流されるけど……」
「ますます気になるやつじゃん!!」
「アヤ……おちゅ、落ち着いてください」
「すみれ、貴女も十分落ち着くべきよ」
和やかな会話を眺めていると、ついにシオンが声を上げた。
「紅蓮!…いい加減、これをなんとかしなさい!」
「え〜弟に言われても〜」
「シオン様、さすがに『これ』呼ばわりはヒドイです…」
「……紅蓮」
「俺には手に負えないな、シオン様」
さすがに耐えきれなくなったのか、紅蓮に助けを求めてるけど、全然駄目みたいだ。
(紅蓮、絶対この状況を楽しんでいるな〜)
本当は当人同士で何とかしてほしいが、あまりにもシオンがかわいそうなので、そろそろ助け船を出すことにした。
「あ、シオン!言い忘れていたけど、先生の呼び出しがあったんだった!」
「え?」
「ほら、早く〜先生を待たせちゃ駄目でしょ?」
シオンの手をとり、そのまま食堂の出口に向かう。
「白蓮〜実はシオンの残りの教材を貰いに、理事長室に行かないといけないんだけど〜」
「分かりました!僕が代わりに行ってきます」
「よろしく〜」
白蓮に適当な用事(嘘ではない)を頼んで、追いかけられるのを阻止する。そして、そのまましばらく歩き続けていると、シオンから声をかけてくれた。
「あ、ありがとう…桜」
「ふふ、どういたしまして〜
…何か白蓮ってすごいね?今までのイメージが崩れたよ」
「そう、ね……」
シオンは何か言いたそうな顔をしていたが、結局何も言わなかった。




