74黒ユリの裏事情4
シオンとモブがよく喋る回です。
ガチャ
「失礼します…水、持ってきました」
「……そこに置いておいて……」
早速本を読もうとすると、ガラの悪そうな男が数人やってきた。
「チッ…俺に命令するな」
「……」
「偉そうにしやがって!」
ドンッ
男は苛立ち気にガラス製の水入れを檻の外側にある机に置いた。
(……嫌な感じー。そんなにイライラしてこの人大丈夫かな?)
「……ガラスだから丁重に」
「ッいちいちウゼェーだよ、お前!!」
「そうだよ!魔法だけで成り上がった癖に!」
「治癒魔法じゃなければアリウム様の眼中にも入らなかった奴がイキりやがって!!」
「………」
「他のテトラ様なんて努力して今の地位を勝ち取ったというのに、お前はアリウム様のお気に入りというだけで……どうせ大した実力なんてないんだろ?」
「それに、治癒魔法だってその檻にいる奴の方が能力高いんだろ?」
「お前ってもう用済みじゃ?」
(何だ?黒ユリ内で仲間割れか?)
傍から見ると、弱いものいじめに見える。シオンの実力を知ればそんな風には見えないが、男の言っていることに矛盾を覚えた。
「お気に入り?」
(あの扱いでお気に入りではないだろ!!)
「ああそうだよ!白ユリの奴は知らないだろうが、黒ユリテトラになるにはボスの前で実力を示さなければならない。黒ユリテトラに立候補した全員でトーナメントをし、勝ち残った4人が新たな黒ユリテトラとなるのが通例。だがこいつはそのトーナメントに参加せずアリウム様が指名したんだ。」
「………」
「でもアリウムが指名したならシオンは実力があるってことじゃないの?」
「いや…こいつはいつも治癒係としているだけで戦闘はしていない」
(え?)
「俺たちがこいつに攻撃してもいつも反撃しない!」
「ここは強いものが上に立つからやれば良いものの、こいつは避けるだけだ!」
(え???)
「それにこいつの態度が気に入らない!!」
「そうだそうだ!アリウム様の近くに居られる権利があるのだからもっと嬉しそうに仕えろよ!!」
「弱いなら弱いなりの行動があるだろ!!!」
(……なんかズレてるな〜嫉妬も混じってるじゃん。とりあえずここにいる奴らはシオンの実力を知らないのか?いつも治癒に徹しているのならそれも仕方ないのかもしれない。でもだからといってここまで言うか!?)
交流してまだ3日だけど、シオンのことを悪く言うのは許せない。
「貴方たちそれ以上 「……それで満足?」 !?」
「あ?」
シオンの言葉を聞くと、体に冷たいものが駆け上がった。
「言いたい事を言い終えたなら、さっさとここから退出して」
その瞬間、糸みたいな何がプチン、と音をたてて切れるのを耳にした。
「…なめやがって!!!!」
ゴンッ…
主犯と思われる男がシオンの顔を殴った。しかしシオンは何も無かったかのように顔を正面に戻した。
「言葉で勝てないから手を出す……なるほど、これが弱い者の取るべき行動」
「こっのぉおお、弱いのはお前だ!!!」
バシャン…
「………」
すると男は持ってきた水をシオンに向けてぶっかけた。
(結構な量の水を……シオンがビシャビシャになっているじゃない!)
「あなたたちにそろそろ止めなさい!仲間同士でしょ!?」
「関係ねー奴はすっこんでろ!!」
(ヤバい!シオンは煽るような事を言うし、男たちは血が上って周りが見えてないし、どうする!?)
「あーはっはっはっ。こんなに水浸しになって…」
「ハハハ、汚れがこれで落ちるといいな…」
「俺たちは慈悲深いからな、今ならこれで許してやる。だからさっきの嘘を訂正しろ!!」
(何が慈悲深いだ!!……とりあえずシオンをどうにかしないと!)
「嘘?…事実しか言ってないけど?」
「ッ……お前!!!」
(やめて!!これ以上煽らないで〜)
ガッ
男はシオンの胸ぐらを引っ張ってそのまま檻に打ち付けた。そして、水入れでシオンの頭を殴った。
パリンッ
割れたガラスが辺りに転がった。
赤い液体もその破片を飲み込むようにゆっくりと広がった。
その様子で男がどれだけ強くシオンを殴ったか、痛い程理解できた。
「そろそろ訂正する気になったか?」
「お前ら!!!」
怒りをそのまま吐出そうとするとシオンが頭に手を置きながら立ち上がった。
「…そうね」
「ハハハさすが腰抜け!」
「頭を床に擦りつけて謝ればさっきの言動は忘れてやるよ!」
「なんせ、俺たちは慈悲深いからな〜」
「はっはっは!!その通りだな!」
見ていられなかった。
頭から血を流してフラフラとするシオンを笑い続ける男たちと。
「確かに貴方がたは弱者ではない ただのクズだ」
挑発し続けるシオンを。
「そんなに死にたい 「いい加減にしなさい!!」 あ?関係ない奴は黙ってろよ!」
もう我慢できない。シオンがこんな奴らに侮辱されるいわれはない。
「自分より若い女の子一人をよってたかって情けないと思わないの?それとも、貴方たちは器の小さいクズになりたいのかしら?」
「このクソガキ!!!」
(よくもまあ、簡単にキレる人。)
私は侮蔑な目で男たちを睨んだ。
「お、おい……こいつはアリウム様が求めている治癒魔法保持者だ。こいつには手を出さない方が良い」
「……チッ、そうだな」
「シオン、今日のところは見逃してやる。運が良かったな」
ガチャ
男たちはすぐに出ていった。まるでシオンの言葉を聞く前に出ていった感じがするが、まぁ気のせいだろう。
(それよりも……)
「シオン、ちょっと頭見せて」
「……なんで?」
「いいから早く!!」
私は逃げようとするシオンを檻越しで捕まえて、破片で指先を素早くきって血を垂らした。
「な、にを!?」
「何って治癒しただけじゃん」
シオンの頭の傷はすぐに治った。
(良かった……)
「バッカじゃないの!?私は敵で貴方は」
「シオンってこんな大きな声、出るんだ〜」
「……」
珍しくて思わず指摘すると、シオンは黙って破片が飛び散った床を掃除しだした。
「ねぇ、本当はさっきの攻撃避けられたんじゃない?」
「………」
「理由は聞かないけど無理はしちゃ駄目だよ」
「……敵に塩を送ってどうする……」
「あはは……それと、挑発はほどほどにしてよね?聞いてるこっちが怖いわ!!」
「挑発?そこまで煽っていないと思うけど……」
「え?」
(もしかして、自然とあの言葉が出てきたの?ある意味天然だな!?)
掃除が終わると、シオンはすぐに扉に向かった。
そのまま出ていくのかと思えば、シオンはそこで一度立ち止まった。
「……面倒かけてごめん………………でも、ありがとう」
バタン…
「律儀だな〜シオンって」
私は深呼吸して気持ちを静めた。
空はすでに暗くなっていて、寝る時間だ。私はベットに向かってあるき出した。
(黒ユリ内でも色々あるんだな。シオンの事、理事長に話してどうにかして欲しいな〜………まぁ戻れたらの話だけどね)
チャリン…
仮定の話を頭に浮かべていると、何かを踏んだ感覚がした。
足を退けて、それを手に乗せて見た。
「ん?これは…!!」
次は白ユリsideの予定です。
桜の見つけたものはまだ先です!




