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花たちは今日も元気に咲き誇る  作者: 椿想香
秋 遠方にいる貴女を想う
75/89

73人(敵)と交流しよう3

投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません……

次話は予定通りに投稿します!


カタンッ…


(物音?)

私は目を開けて、音のした方向を見るとちょうどシオンが牢屋から出たところだった。その手前、小さな机には湯気が立っている朝食があった。

「これは?……もしかして食べろってこと?」

敵地で出されたものをすぐに食べる。そんな馬鹿なこと、するつもりはない。

「……ボスからの、命令……」

「ッ!冗談じゃない!!これ以上奴の言いなりになるか!!」


バシャ……


私は御盆の上にのっていた汁物を叩いた。

(睡眠薬?またはそれ以外の薬?何が入っているか分かったもんじゃない!!食べ物には悪いけど……うん、やっぱゴメン…許して…)

お味噌汁は石畳の床にシトシトと静かに流れた。その間、シオンはただ静かにそれを見つめていた。


ガチャ


「おいシオン、しっかり桜に朝食を食べさせたか?」

「…そ、それは……」

「ふーーん……お前はこんなこともできないのか?あれほど桜を丁重に扱えと言ったのに、な?」

「…申し訳…ございまっ」


ドカッ


なんと、奴はシオンの腹を蹴った。さすがのシオンも耐え切れずに地面に倒れた。

「うっ…ゴホッゴホッ…」

奴はさらに追い撃ちをかけるようにシオンに近づき、足で横たわるシオンの顔を上げさせた。

「せっかくお前に料理を作らせたが、肝心のシオンに食べてもらえなきゃその時間と材料、そしてお前の存在は無駄だ。なんとかしろよ?シオン」

「…り…了解ゲホッ……ボス」

「フン…

あと桜、死にたいなら別に死ねばいいが、困るのはお前だからな?」

そしてアリウムは私の方を向いてニヤリとしてから出て行った。


「………」

奴がなぜ(わら)ったか。__奴は私に罪悪感を持たせたいのだ。

私ぐらいの女の子が作った料理を私が雑に捨てた。……作った相手がたとえ敵だろうと、罪悪感はある。


(……確かにこれは私が悪い)

「いただきます」

「……?」

私はひたすら噛みつづけた。朝食は白ご飯と漬物と焼き魚と捨ててしまったお味噌汁。野菜もあって健康に良い食事。そしてなにより……。

「めちゃくちゃく、美味しい〜!!」


「……そう」

私が口に出して言うと、シオンはちょっと柔らかい声で返事をしてくれた。

「シオンって料理得意なの?これめっちゃ美味しいし~」

「……手先が…器用…だから…」

「もう、シオンは自信を持って言えば良いんだよ!この料理はそれぐらいのものなんだからさ!」

「あ、…ありがとう……」

シオンは口を少し、ほんの少しだけ緩めて、お礼を言った。その姿があまりにも可愛くて、私からもお礼を言った。

「こっちこそ、こんな美味しい料理を作ってくれてありがとう!シオン」

「…こ、これは…ボスからの命令……それだけ」

すると今度は顔を背けて素っ気なく答えた。私はシオンの機嫌を悪させちゃったのかと焦ったが、よくよくシオンの耳を見るとそれは誤解だと分かった。

「ふふふふ」

「……何?」

「何でもなーい」

(耳元まで真っ赤になっているじゃん!

意外と照れる子なんだ〜かわいい〜)



それからは朝・昼・晩の食事はしっかり食べた。だってシオンが頑張って作ったものなんだから、私はしっかりと味わいたい。

ここ二日間で分かったことは、シオンは食事以外の時間も私を監視するために、この部屋で本を読んでいる。あまりにも集中しているので、どんな本を読んでいるか気になった。………別に監禁生活が退屈であったとか、そういう訳ではない!


「ねぇ、シオン。何の本を読んでいるの?」

「…答える意味は 「え〜〜いいじゃん!暇なんだから会話相手になってよ〜」 ………」

「で、それ何?」

「はぁ………神話…」

「神話ってこの世界の成り立ちの話?」

「…そう…」

(確か学園に入ってすぐに習う話だったはず。)


__

数人の人間が地上で暮らしていた。生きる為に協力して食料を確保したり、知恵を出し合って新しい技術を生み出したり、時には別れを惜しんだり……。人口が増えてきてもその時の世界は平和だった。

しかし一人の男ヒヤシスが世界を支配しようと考えたことで平和は崩れだした。ヒヤシスは仲間を徐々に増やしていき、やがて人間たちは2つに別れた。対立関係が(あらわ)になるとますますヒヤシスは過激になった。

そんなとき、ヒヤシスの幼馴染である女リリウムが立ち上がった。リリウムはヒヤシスにこれ以上争っても無意味だと説得したが聞き入れてもらえず、結局怒りで周りが見えなくなったヒヤシスは彼女を殺し支配を強硬に進めた。

それに対し、リリウムを慕っていた人々は亡くなった彼女の死を嘆き悲しみ、しばらく立ち直れなかった。生前の彼女は明るく元気な人でいつも人々を励ましてくれる存在であったからだ。

人々の祈りは奇跡を呼び寄せて、リリウムは神となって人々の前に現れた。悲しみに暮れていた人々は喜び女神リリウムを崇めた。女神リリウムは人々がまた平和に暮らしてほしいと願い、数人の信者に固有魔法を与えた。そのおかげでヒヤシスの支配は一度は収まったが、己の邪魔をする女神リリウムへの憎悪があまりにも莫大で、その結果ヒヤシスは固有魔法を手に入れてしまった。そんなヒヤシスに恐れた者たちは以前よりも抵抗が激しくなり、人々の間の戦いは泥沼化した。

激化した戦いに心を痛めた女神リリウムは、地上を2つの島に分けて間に広い海を作り、互いが干渉させないようにしたのだ。これにより、地上はまた平和になった。女神リリウムに感謝したヒヤシスに抵抗した者たちはリリウム教を開き、この話を忘れさせないように人々に語り続けたのであった。

__


「……それって実話だと思う?」

(なんとも救われない話だ。リリウム様は平和のために魔法を与えたのに、結局今は………)

「さあ………でも興味深い……」

「へ〜〜(読んでみたいな…)」

「……読む?」

「良いの?!」

「………」

シオンは私の前まで来ると黙って本を差し出した。

(無愛想なんだか……親切なんだか……シオンって本当分かんないな〜〜

まぁ、そこが良いんだけどね!)

「ありがとう!!!」

授業で習ったとはいえ、原本は読んだことはなかったので本当に嬉しいく、緩んだ顔で礼を言った。


「ッ………本ぐらいなら貸す」

一瞬シオンが固まったようだが、すぐに顔を背けて照れ隠しをした。


(可愛い〜!)

神話って難しいですね……

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