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花たちは今日も元気に咲き誇る  作者: 椿想香
秋 遠方にいる貴女を想う
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68白蓮の葛藤5

今回は、アヤ視点、白蓮視点です。


白蓮、紅蓮の過去話です…

「回復は禁止で、戦闘不能と判断したら勝負はそこまで、で良いな?アリウム」

「ああ」

「勝負開始は、このコインが落ちてから

……いくぞ?」

そう言って、理事長はコインを投げた。


コツンッ


勝負は静かに始まった。


まず柊がシオンの足下から水を噴射したが、シオンは軽々と避けた。次に私が一気に距離を詰めて相手の懐に向かって棒を振り下ろしたが、彼女の短刀で止められた。私はすかさず両腕に力を入れて押し出すと彼女はそれを受け流し私は前のめりになる。

「あっ…」

それを逃すはずがないシオンは私の背後から攻撃しようとした。

(よし、かかった!)

するとすぐに氷の槍がシオンに向かって降り出した。

「チッ…」

シオンはいったん下がろうとするのも私の想定通りなので、私は前のめりに倒れたと同時にシオンの足をかけた。私からの攻撃はシオンを後ろに崩すことに成功したので、柊は苦無を持ってシオンに攻撃。


キンッ…


彼女は受け止め切れずに短刀が宙を舞った。

(チャンス!)

そう思い私は立ち上がろうとしたら、シオンは私の背中に乗り、そこからふわっと飛んだ。

人が乗ったことによりまた地べたにくっついた私は顔だけ上げた。


シオンが飛んだことにより、黒髪はなびいて、スカートも少し持ち上がった。

すると彼女はスカートの折り目から何本かのナイフを取りだし、こちらに向かって投げた。


彼女が飛んだのは短い間だったが、私は目が離せなかった。

なぜなら彼女の前髪から覗く、レンズ越しの黒い瞳が……


「彩芽!」

(はっ…)

私は体を回転させて降ってきたナイフをよけた。


「……厄介ね」

すっかり風がなくなったシオンは短刀を拾いながら、静かにつぶやいた。


◇◇◇


「お前の相手は俺だ、白蓮!」

「っ………やっぱりか」

紅蓮は自分の槍を僕に向けて振り下ろしながら叫んだ。

「……こうやって勝負するのは久しぶりだな」

「そうだね…」

僕らが住んでいた島は離れ小島だったので技術や魔法はあまり発達していなかったが、その代わり森や川などの自然に囲まれて育った。だから昔はその辺に落ちていた棒で紅蓮とはよく闘ったものだ。


(でも、最近は紅蓮がアリウム様に突っかかってシオン様に止められていたから、僕と戦うのは本当に久しぶりだ…)

なんて思いながら、僕は紅蓮の槍を避け続けた。

「っ…なんでかかってこない?」

「それは……」


君を傷つけたくないから

(と言ったら、君は怒るだろうな…)


僕には黒ユリテトラの皆様や紅蓮のような強さはない。

僕は誰かの命令に従うことしかできない人なんだ。

でも、こんな僕でもどうしても守りたい人がいる。

何もかも捨ててその人を守りたい。

だからアリウム様の望むように、この試合に勝たなければならない。


(矛盾した願いだと自分でも分かっている。

だけどこれから先も紅蓮を守るには、今紅蓮を倒さないと……)


「おい白蓮!何を悩んでいるんだ?」

「別に悩んでなんか…」


紅蓮はこんなときでも真っすぐで素直な奴だ。

僕とは違い、自分が信じた道を突き進むタイプの人間。

きっと紅蓮は僕を救おうとしているのだろう。

(君は何も考えず、僕を切り捨てれば良いのに……いや、これこそが紅蓮か)


紅蓮は容赦なく攻撃してくるが、それでも僕はかすりながらも避け続けた。

「何で…何で白蓮は攻撃しない?」

「……っしまった!」

ついに避け切れずに紅蓮の槍を自分の剣で受け止めてしまった。

「悪いが、こっちは魔法を使うぞ!」

その瞬間、槍から振動が伝わり、自分の全身にも振動が伝わった。


紅蓮の魔法は、いろいろな振動を物や人などに伝える。

槍に振動を伝えることで破壊力が増したり、相手の体に負荷を与えることができる。

だから、紅蓮の攻撃を受けすぎると体力が大幅に消耗、そして最終的に武器にひびが入り破壊される。

「まだまだ続けるぞ!!」

そう言うと紅蓮は何回も何回も魔法を使いながら僕の武器に攻撃をしてきた。

「ッ…(まずいこのままじゃ剣が破壊される…)」


(もしここで紅蓮が勝ったとしたら、アリウム様はあの約束を守るはずがない……)

負けたいのに、負けてはならない。

傷つけたくないのに、傷つけなければならない。

僕はどうすれば……


ッキン……ピシッ


答えが見つからないまま、ついに僕の剣が破壊された。

「さあ白蓮。どうする?」

「僕は…(魔法を使うしか…)」

何か答えようとしたその時。


「白蓮」

背筋が凍るような声で名前が呼ばれた。

「…どういうつもりだ?白蓮」

「あ、アリウム様…も、申し訳ありま「謝罪はいらない。俺は今『どういうつもりだ?』と聞いた。さっさと答えろ」 それはッ……」

正直、なんてお答えしたら良いか分からなくて言葉につまった。


「はぁ…仕方ない。お前がそんなに使えない奴だとは……失望したよ。」

「ッ…すみません」

「おい!お前さっきから黙って聞いてれば、勝手なこと言っているんじゃねーよ!!」

紅蓮の叫びはこの辺りに思ったより大きく響いた。

しばらく両者はにらみあったが、さきに沈黙を破ったのは意外にもアリウム様だった。


「はっはっは……そうかそうか、元凶のお前は知らないんだったな?」

「何のことだ?」


(ヤバい‼)


「アリウム様!!どうかそれだけは……このような無様な姿をお見せしたことはお詫びしますから、どうかそれだけは!!」

僕は急いで紅蓮に対して魔法を使おうとすると、容赦ない声に止められた。

「白蓮、今さら遅い。それにお前がそんな態度をとるから悪いのだ!

黙ってそこで見ていろ!!」

「ッ……アリウム様の仰せのままに……」

俺は仕方なく最上の礼をアリウム様に向けた。

こうしていれば、紅蓮に僕の顔を見れないし、僕も紅蓮の様子が見れない。


「紅蓮、お前は白蓮が何故俺に従っているのかを疑問に思っただろ?」

「そ、それは……」

紅蓮は言葉をつまらした。おそらく僕ではなくアリウム様の口から、聞きたくないのだろう。


「お前らの島に上陸したあの日、俺は村を片っ端から燃やしていたら逃げていく白蓮を見つけた。追いかけて森の中で殺そうとしたら、こいつは魔法を使った。まさか、六歳ぐらいのガキがいきなり数本の槍を地面から出して俺を阻むとは想像できなかったぞ」

「……」


やめてくれ、これ以上は……


「まあ、それぐらいは何ともないからそのまま白蓮の家を突き止めて家に入った。そこには驚きと恐怖で立ち尽くした親と白蓮がいた。

白蓮の魔法は使えるから黒ユリに誘ったんだが反抗するもんで、俺の魔法を使って白蓮に親を殺させた!」

「なん、だと…」


僕はひたすら黙っていた。

手は握り締めすぎたせいで血が流れていたが、そんなものは無視した。


「はっはっは!!あの時の白蓮は傑作だったな?自分が今何をしたのか理解したときのあの絶望に満ちた顔!

お前も懐かしいだろ?白蓮」

「……そうですね」

流れる血が一層増えたのを感じた。


「もういい……アリウム、お前は黙れ!」

「紅蓮、俺の話はまだ終わっていない。今からが良いところだぞ?」

「だから黙「俺はもう一度白蓮を誘ったら、契約を結んだ。その時俺は白蓮に『忠誠を誓うなら一個だけ条件を守ってやる』と言ったんだが、その条件は何だと思う?」


僕はこれ以上聞きたくなくて、自分の耳を両手でふさいだ。


「『紅蓮に対して魔法を使うなどの危害を加えない』という条件だ。笑えるだろ?」

「そんな…」

「その直後、お前が来たから白蓮は一芝居打ってお前を俺から離そうとしたみたいだが、お前が俺に対して復讐するとか何とか言って結局黒ユリに来た。」

「……」

「お前は何度も俺に攻撃をしてきたが、そのたびに俺は何もせずにシオンがそれを止めた。もうその理由は分かるよな?」

「……」

「白蓮の魔法は本当に使える。盗聴器やら武器まで何でも作れるからな。

お前がシオンに止められるたびに、白蓮は尚一層俺に忠誠を誓った。

紅蓮、お前の存在はありがたかったぞ?ははは」


耳をふさいでも話は聞こえた。わざと大きな声を出していたのだろう。


「アリウム!!!!お前は絶対に許さない!!」


ガキンッ


驚いて顔を上げると、紅蓮の槍はシオン様によって止められていた。

周りを見ると、あちらの試合はいったん休止していた。_つまり、今の話を聞いていたのだろう。


「白蓮、何をグズグズしている?お前はこれから先も紅蓮を守りたいのだろう?なら今は何をすべきなんだ?」

「それは……アリウム様の望み通りに動くこと」

僕は段々と思考が落ち着いた気がした。

「そうだ、俺の望みは?」

「この試合に勝つこと」

「そういうことだ。もう一度お前にチャンスをやろう。

今お前が紅蓮に勝てばシオンの薬を大量にくれてやる。

だから、全力で紅蓮を倒せ!」


何を悩む必要があるんだ?

僕はただ従えば良い。

そして、今度こそ家族を守るんだ!!


「紅蓮……悪いけど、君を全力で倒す」


もう迷わない。

もう見失わない。

光に背を向けて進むんだ!


「白蓮…」

僕と向き合った紅蓮が、悲しそうなでも怒りを含んだ声で僕の名を呼んだ。


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