67邂逅のち取引4
視点は白蓮、紅蓮となります。
「紅蓮!!」
なんで僕は家族を守れないのだろう。
あの時も、結局僕は何をしていたんだ!
今だってただ……見ていただけじゃないか!
紅蓮は裏切る覚悟を決めたのに、僕は何にもできていない。
紅蓮、ダメだ!
行かないで!
君は……僕が守らなくてはいけない大切な家族なんだから!!
「白蓮~そんな顔してどうしたんだ?裏切り者は当然何かしらの罰は下るだろ?」
「ですが……」
「ボス……この者は?」
「ああ、桜?今から連れて帰るから、丁重に持っとけ」
「……了解…ボス」
「桜!?」
僕が返答に詰まっていると、シオン様はいつの間にかアリウム様のもとに駆け寄っていた。
そしてシオン様が抱き抱えたのは、紛れも無い桜だった。
「ちょっと…いつの間に黒ユリのボスが……って桜?」
「なんで……隣にいたはずなのに…」
アヤと柊とすみれは困惑していた。
「音声から面白そうだったんで転移したら、目の前に桜がいたから眠らせてもらっただけだ」
なんて無茶苦茶だ、と思うがこれがこの方だ。
「…くそっ……気付かない…なんて……」
すると、紅蓮が辛そうに話した。
(良かった…まだ大丈夫なはず……)
「紅蓮さん!しゃべったらダメです!」
「ほーう、まだ話す力があるなんてな?」
「…ふっ……嘗めんな、よ……まだまだ、だ…」
「そんな死にそうに言われても笑いが込み上げるだけだぜ?
まあ良い。今回は目標以上の成果を得たから帰るとしよう。
シオン、お前の薬何錠か近くに落としておけ」
そう言ってアリウム様はゲートに向かって歩き出し、シオン様は薬を近くに落としてからアリウム様について行くように桜を抱き抱えたまま歩いた。
僕は紅蓮のことが心配で足が動けなかった所に、アリウム様が振り返った。
「白蓮、帰るぞ」
「承知しました…アリウム様」
(シオン様の薬がある……だからすぐに助けが来れば助かるはずだ)
僕は自分を無理やり納得させて、重たい足をあげようとしたそのとき、また新たな声が聞こえた。
「俺の生徒を勝手に連れていくな!アリウム」
「「「「「理事長!?」」」」」
なんと、あの理事長が息を荒げながら立っていた。
「ジニアか……悪いが今日は遊ぶ時間はないぞ?」
「だろうな…その人数で白ユリ団と戦うのはきついだろな」
「よくわかってるじゃないか!では「そこで俺から提案がある」 ほう?」
「俺たちは生徒二人を解放してほしい。お前はすぐに帰りたいが戦力が足りない。
なら、すぐに勝負が決まるここにいる生徒たちだけで戦わせるのはどうだ?」
(生徒二人?まさか、僕のことか?)
「……まあ、団員を呼ばないのなら良いだろう」
「では作戦会議は?」
「…数分だけならくれてやる」
「ボス…これ…?」
「あーどっかその辺においとけ。あんまり雑に扱うなよ?こいつの治癒能力はお前の何倍もあるからな」
「…了解…ボス」
そう言ってシオン様は、眠っている桜を近くに壁を背に座らせて、黒いフード付きマントを桜にかけた。
(久しぶりに見るな…シオン様の軍服姿…)
黒ユリテトラは皆黒に赤いラインの入った軍服である。シオン様はその上にいつもマントをはおり、フードを深くかぶっているため、なかなか赤ぶち眼鏡姿を見る機会がない。それに、フードを取った後も前髪が目にかかるぐらい長いため、シオン様の黒い瞳を最近見た者はいない。
「シオン、ちょっとこっちに来い」
「……」
アリウム様は駆け寄ったシオン様の耳元で何か話をしていた。
(僕は、おそらく紅蓮と戦うことになるのかな…)
一番最悪な展開を想定して、あちらの作戦会議が終わるのを静かに待った。
◇◇◇
「さて、紅蓮くんこれを飲んでくれ。これは桜の魔法だから大丈夫だ」
俺は素直にゼリーみたいな柔らかく透明な膜で覆われたものを飲み込んだ。
「な、なんだ!この治癒能力は!シオン様と段違いじゃないか?」
「そうなの?」
「ああ………これほどの治癒能力ならあいつが欲しがる訳か……」
「それで、紅蓮君と白蓮君は」
「あっ…」
「…そうです。俺たち二人はスパイとしてここに来ました。ですが!!」
「ああ、分かっているよ。こっちに寝返りたいのだろう?」
「え?いや……さすがにそこまでは望んでいないというか…資格がないかと思うのですが…」
(ここの理事長大丈夫か?
俺はついさっきまで黒ユリ側の人間だったんだぞ!
そう簡単に信用できるものではないだろう!
俺はただ、黒ユリから抜け出して、それで白ユリには迷惑をかけないように生きるつもりなのに…)
「ふんふん…なるほど~」
心の中で叫んでいると、理事長はこっちの目をみながらうなずいていた。
(あれ?いつの間に眼鏡はずしたんだ?そんなに目が悪くないのか?)
「お、鋭いところに気が付いたな!」
「え?」
(俺、何かしゃべったか?)
「理事長~そろそろ紅蓮がかわいそうだよ~」
「わ、私もそう思います。」
「プライバシーってなんだっけかしら?」
まさか……
「そう、そのまさかだよ!俺の魔法は人の心が読めるんだよね」
「嘘だろ⁉」
俺は思わず両目を両手で隠した。
「面白い反応だな…」
そんな俺に対して理事長はしみじみと言葉をこぼしたので、俺はあきらめて理事長に従うことにした。
「そろそろ落ち着いたか?」
「だ、大丈夫です。
あの…何故理事長はここにいるのですか?」
「あー、それは彩芽君の鳥が教えてくれたんだよ」
「そうだよ~紅蓮の様子から厄介な案件だと思って連絡したんだよね~」
さっきまでなら憤るところだったが、今は感謝しかない。本当に助かった。
「それじゃあ、本題に入ろう。
あっちは二人で、こっちには四人。二人で一人を相手にするのが妥当か…「ちょっと待ってください!」 どうした?紅蓮君」
決まりそうになった作戦会議を俺は止めた。
「………白蓮は俺一人に任せてもらえませんか?」
「なるほど…」
白蓮と話す機会はもしかしたらこれが最後になるかもしれない。
今、白蓮を引き止めないとあいつはあのクソ野郎に従い続けるだろう。
今、白蓮を説得できなかったらあいつはどっかへ行ってしまうだろう。
俺はそんなことを見逃せない!
白蓮は何故あのクソ野郎に忠誠を誓っているかは知らないが、少なくとも白蓮自身が望んでいないことは予想できる。
もしこの予想が外れようが、知ったことか!!
今しかない、今しかできない。
今、戦わないと白蓮を助けることなんてできない!!!!
「…良いだろう」
「ありがとうございます!……それとシオン様はとても強いので、三人とも全力でいかないと負けますので気をつけてね」
「了解~」
「始めから手加減なんてしないわよ」
「微力ながら、頑張ります!」
「よし、四人とも、お前らは目の前のことだけに集中しろ。後のことはすべて俺に任せれば良いから」
「「「「はい!!」」」」
「おい!まだか?」
「大丈夫だ……そろそろ勝負を始めるか」
「良いぜ、さてどんな結果になるか、楽しみだな?」
(待っていろよ?白蓮)
俺は少し俯いている白蓮に心の中でそう話しかけた。
しばらく、主人公はお休みです…




