63光散りゆく跡で…5
桜視点、紅蓮視点となります。
今回はただの花火回ですw
ヒュー………ドンッ!!
一輪の花が空に打ち上がった。
「きれいだね!」
「…きれい、だな」
私は紅蓮と暗い空を見上げていた。
あの表彰式の後みんなと合流してすぐに、花火を見るために移動をした。
竜胆さんはすみれの手をとり、
「人が来る前に急ごう?」
とか何とか言って、すみれが返事をする前に行ってしまった。
アヤは、
「柊~私たちも急ごう?」
「ちょっと!…そんなに引っ張らないでよ!」
柊の腕を掴んで走っていった。
「じゃあね?桜 (ファイト!)」
(アヤ……あなた絶対勘違いしているでしょ?)
私はその言葉に苦笑したが、否定もしなかった。
「白蓮はどうする……っていない!?」
「あいつ、いつの間にか消えたんだ?」
残された私と紅蓮は顔を見合わせ、また苦笑した。
「せっかくだし、一緒に見るか?」
「そうだね~」
私たちは、ちょっと前に来たあの庭のベンチに座った。
そこには人がいなくて意外に思ったが、多くの生徒が学校の屋上や広場で見たいという話をしていたので納得した。
「…優勝、おめでとう」
「ありがとう、でも私はみんなより有利だからね…」
「有利?」
「そう。学生の間は魔法に慣れていないから剣術とかに集中している人の方が強い傾向があるんだ。逆に、白ユリ団員は魔法を鍛えていけばいくほど戦いでは有利になるんだって。私の魔法は……戦闘には向いていないからその分剣術に集中できて、みんなより有利ってこと!」
「なるほど。けれど……桜の魔法は知らないから何とも言えないが、アヤは結構うまく魔法を活用していたし、茜は今回剣術に集中していた。有利不利はそんなに無かったと俺は感じたよ。…そんな試合に桜は勝ったんだから、胸を張っていいんじゃないか?」
「そうかな…」
本当に良いのだろうか?
「ああ、大丈夫だよ!」
ヒュー……ドンッ!ドンッ!
小さな二輪の花がまた打ち上がった。
「それにしても、桜の剣術凄いな!岩を斬るなんて…」
「あはは…あれは偶然だよ~」
次々と散っていく花火を見ながら、今日の戦いの感想を言い合った。
「……それで、いつ家族に言うんだ?」
会話が一段落すると、紅蓮はこちらを見て尋ねた。
「……そうだね~近いうちに、かな?」
私は花火から目を離さずに答えた。
「そうか…」
紅蓮はそれだけ言って静かになってしまった。
(え?なにこの微妙な雰囲気……もしかして私のせい?)
ヒュー……ドンッドドン!
ちょっと申し訳なく感じていたら、突然紅蓮が私の頭を撫ではじめた。
「え?ちょっと……突然どうしたの?」
私は思わず紅蓮の顔を見た。
「やっとこっち見た…」
(今、その笑顔をこっちに向けるな!…い、意識しちゃうじゃん!?)
顔が赤くなるのを感じたので顔をそらそうとしたが、紅蓮の目が真剣で私は冷静になった。
「……それが理由で撫でてるの?ならそろそろやめてくれる?」
(まだ、気付かないうちに…
込み上げてこないうちに…)
私は二つの気持ちがせりあがってくるのを、必死に抑えた。
紅蓮への気持ち……そして……。
「あの言葉にあった意味は、こういうことなんだろ?……お疲れ様」
私は紅蓮の言う『あの言葉』を、何も疑問も持たずに決勝戦後の言葉だと理解した。それはつまり、紅蓮の行動が自分の望んでいたことなのだろう。
「な、何のこと!?」
ごまかそうと声を出したが、上擦ってしまった。
「図星か」
「……何で分かるの?私が」
私はその先が恥ずかしくて言えず、顔を下に向けた。
「俺にも、少なからずそういう気持ちがあるからな……誰かに、両親に褒められたいってね」
「っ……」
その瞬間、私は二つ目の気持ちが抑え切れず、喜びか悲しみか、目の前が滲んできた。
そうだ、私は両親にもっと褒められたかった。
あの優しい手で頭を撫でて、あの優しい声で褒めて、あの優しい笑顔で私を迎えて欲しかった。
今だって、『試合頑張ったね』とか『優勝、おめでとう!』とか両親から言葉が欲しかった。
最初は復讐心で何も考えずにいられたが、少しずつ人から優しさを貰えると両親の優しさが思い出して辛くなった。
「紅蓮も、感じるんだ?」
「…ああ、たまにな」
紅蓮は私の涙声には触れずに話を続けてくれた。
「俺だって辛くなったとき、優しかった両親を思い出す。桜は今まで一人で頑張ってきたんだろ?両親に褒められたいって思うのは普通のことだ」
紅蓮の言葉は、私の胸にストンと落ちた。
(そっか……これは普通、なのか)
「ありがとう、紅蓮」
私は顔を上げて笑った。_涙はいつの間にか消えていた。
「……」
「紅蓮?」
突然紅蓮の手が止まったので首を傾けた。すると、
「な……髪の毛ぐしゃぐしゃになる!」
紅蓮はいきなり強く私の頭をなでた。
「悪い悪い~」
その声の調子で全く気持ちがこもっていないことがすぐ分かった。
(せっかく、かっこいいなーと思ったのに……これだから紅蓮は!)
「そういえば、紅蓮」
私は話をかえて、気になっていたことを尋ねた。
「白蓮とは話せるようになったの?」
「う……」
紅蓮は露骨に目をそらした。
「紅蓮~?このままじゃあ、何も変わらないよ!」
「それは、分かってはいるんだが……きっかけが…」
「ふふふ、こういうときは思いついたその時に行動するのが良いよ!ほら、白蓮を探しに行きなさい!」
「だが…「紅蓮?」……はいはい分かりました」
「頑張ってね、紅蓮」
私は笑顔で紅蓮を送り出した。
「……ところで、アヤ?こんなところで何してるの?」
紅蓮の姿が見えなくなってから、私は近くの木に向かって話しかけた。
「…な~~んだ、気づいてたのか。後でからかうつもりだったのに~」
「今気づいたばっかりだよ。それよりアヤはいつからここに?柊は?」
「細かいことは置いといて~~柊は竜胆さんに連れていかれたすみれが心配で追いかけているよ。
……それより桜、紅蓮を行かせて良かったの?せっかく良い雰囲気だったのにー」
「本当にいつからいたんだか……まあ、私はあの二人の仲のほうが重要だから」
「ふーーん(あ、否定しないんだ)
じゃあ、続きは私と見るか!ここって良いスポットだね~デートにぴったり!!」
「アヤ?私で遊ぼうとしているけど、残念ながら好感が持てるというだけで恋とかそういうものに発展させる気はさらさらないからね‼」
「そうですかそうですか(いやさっきの態度からすると、ね?)」
___彩芽はしばらくはそっとしておこうと決めた。
◇◇◇
桜に背中を押された俺は、一番人が多い広場を通り抜けて人気のない所を探した。なんとなく白蓮は一人でいる気がしたからだ。
すると、意外にもすぐに白蓮を見つけた。
白蓮は校舎の裏で、一人座って空を見上げていた。
「なんだ紅蓮か……桜さんを置いといていいのかい?」
「その桜にお前を探しに行けって言われたんだが?」
「つまり……振られたと?」
「なんでそういう方向になるんだよ!?」
「ふふふ、冗談だよ。………それでどうしたの?」
白蓮の目はさっきまでの笑っていたものから真剣なものに変わった。
「……この前の話の続きだ」
「そのことはもう…「分かってる」 え?」
「あの時は……無理に聞こうとしてごめん。今までこっちが勝手に白蓮のことを嫌ってたのに、突然あんな態度で話しかけてきても困るだけだよな?本当にむしの良い話だけど、俺は白蓮のことを信じると決めたんだ。
……だから、話したくないのなら話さなくて良いよ。
俺からは聞かない。……白蓮が望んで話すまで待つから!」
「紅蓮……」
「だから、俺が言って良いのか分からないけど……また昔みたいに…一緒に頑張らないか?」
「……紅蓮はそれで良いのか?僕は近いうちに、君を失望させるようなことをすると思う。本当に、君はそれで……」
「(いったい白蓮は何を抱えているのか…)
…俺はもう心に誓ったんだ。どんなことがあろうと白蓮を信じるってな!!」
「…好きにしたら良いよ」
俺はなんとか白蓮の許しを得たので、胸を撫で下ろした。
ヒュー……ドンッドンッドドンッ!!
白蓮はまた、空を見上げた。
「花火ってきれいだね、紅蓮」
「……散る所もきれいだ」
光り輝く花は一瞬で散ってしまうが、後腐れなく消えるその跡に俺は好感を持った。
「紅蓮………さっき、あの方から連絡がきたんだ」
「あいつか!!」
俺は自分の血の巡りが速くなったのを感じた。
「……近いうちに、こちらに黒ユリテトラの一人を送ってくるそうだ」
「ということは、その時に桜を……」
ヒュー…ドドンッドドドドンッドンッ!
花火の光が俺たちを照らして、ますます影が濃くなった。
「紅蓮…今ならまだ、君だけを無関係にでき「今更こっちに乗り換えるのは無理だろ?」 それは…」
「だって俺たちは、桜を監視するために送り込まれたスパイで、白ユリにとって俺たちは敵だ。
それに仮に乗り換えるとしても、白蓮、お前と一緒にだ!」
「けど、紅蓮は桜のこと………好きなんでしょ?態度とかで分かってるからごまかしても無駄だよ」
「……………はあ~。双子ってこういう所があるから嫌なんだよな~。
ああ、そうだよ!ほぼ一目惚れだよ!!」
俺はヤケクソに答えてから、白蓮の隣に腰を下ろした。
あいつ、ボスから監視を命じられて俺は白ユリに来た。あいつに従うのは非常に不本意だが、あいつに報復するには命令に従う以外の選択肢は俺には無かった。
教室で初めて桜の笑顔を見たとき、世界が色付いていくのを感じた。最初の頃は無視していたが、桜の涙を見て思わず袖で拭いたとき初めて『この子を守りたい』と思ってしまった。
今思えば、あの時にこの気持ちが芽を出したと思う。
毎日毎日監視をするはずが、自ら桜を見たいと目が勝手に追っていた。
今日の試合では桜が心配で観戦に集中できなかったが、あの桜の戦いぶりを見てまた世界が色濃くなった。
『桜の隣で一緒にいたい』という願いが頭に浮かんだとき、やっとこの蕾を開かせてはいけないと気づいた。
俺は桜を監視するために来たんだ。
桜にとって黒ユリは憎むべき対象。
俺がこんな感情を向けてはならない人なんだ。
なのに、俺はこの馬鹿げた感情を………
「白蓮……俺たちはもう引き返せないところまで来たんだ」
さすがに人は殺していないが、あいつの命令で多くの人を傷つけた。
「だから、俺は今更真っ当に生きようとは思わない。」
あいつに復讐できたらそれで良い。
「近いうちに来るということは、俺たちのここでの役目ももう少しで終わりだ。」
白蓮は心配そうな顔をこちらに向けた。
「心配するな、白蓮。俺はきちんとこの気持ちが表れないようにするからさ!」
「でも、そう簡単に初恋を諦められるの?せめて、桜さんに伝えるだけでも……」
「これ以上桜に迷惑かけられないだろ…」
「……」
いつか桜たちがこの事実を知る時がやって来る。その時に余計なものがあればあの優しい桜のことだから、情けをかける可能性がある。裏切り者の俺からそんな気持ちだけを桜に残したら、残された相手が苦しむだけ。
「俺はこれ以上桜を苦しめたくない。 だけど……
ヒュー……ドンッドンッドンッドドドドドドドドンッ!!
この気持ちを持つことだけは許してくれないか?桜」
「紅蓮?何て言ったの?」
「いいや、なんでもない」
約束しよう。
この気持ちは君に伝えない。
言葉や態度で表さない。
君に迷惑はかけない。
だから…どうか、この花を育てることだけは許して欲しい。
いつか必ず、花火のように、跡形もなく、きれいな思い出として、自ら散らすから。
だからどうか、今だけは……………許して欲しい。
「今のが最後の花火か…きれいだったな」
「そうだね紅蓮……」
「帰ろうか、また明日があるしな?」
(白蓮にどんな思惑があるかは分からないが、俺は近いうちに黒ユリから抜けてやる。その時は白蓮も一緒だからな?)
「ああ……
(紅蓮の顔つきが変わった。まるで、覚悟を決めて死ぬのも怖くないって感じだ。
……僕は絶対に君を守ってみせる。
あの時守れなかった僕と、今の僕は違う。
たとえ命が尽きようと、心が消滅しようとも、僕は君を守ってみせる!
そのために、もっとアリウム様に尽くさなくては……)」
___花が散った跡では、二人の男が覚悟を決めた。
二人は見かけこそにているが、心のうちは全く異なっていた。
まだこの章は終わりませんよ~




