57仲たがい
紅蓮視点です。
『私には白蓮のあの目が嘘のようには見えない!』
「あいつの目、か…」
こうして改めて考えてみると、俺がク……兄貴の目を見ていないことに気がついた。いや、見てはいたが気付こうとしなかった。
最初は目も合わせたくなかったから、いつも俺から目を逸らしていた。だけど、あるとき目を逸らすのが遅れた。数ヶ月ぶりに見た…兄貴の目には、暗いものが沈んでいた。
(白蓮の目はこんなにも暗い色だったか?)
俺と…兄貴の目は同じ色だから、嫌でもすぐに違いが分かった。だから、兄貴に尋ねようと思ったが………。結局俺がそうすることはなかった。
兄貴と話をしたくなかったこともあるが、一番の理由は他にあった。_俺は兄貴を倒す前に、あいつを……アリウムを倒さねばならないのだ。
しかし今、俺は一度兄貴と向き合う必要がある。何か変わるのか変わらないのかは分からないが、そうしなければならないのだ。桜が……自分の本能が……俺に叫んでいる。
俺は学生寮に向かう白蓮を見つけ、走り寄った。
「あ、兄貴!」
「!…どうしたんだ?紅蓮
(紅蓮から声をかけてくるなんて、あの日以来初めてだ。何かあったのか?)」
「その、引き止めて悪いが、……ちょっと場所を移動できるか?」
「俺は大丈夫だよ(???)」
学園内の校舎の裏まで来ると、俺は白蓮に今まで気になっていた一つの質問をした。
「あ……白蓮はあの日、本当に俺たちの親を殺したのか?」
「……それは」
白蓮は目を見開いた。しかし、それはほんの一瞬だった。
「それは、どういう意味だい?……俺は確かに、この手で、両親を、殺した。…紅蓮も見ていただろ?」
いつもの俺なら激怒して白蓮に切りかかったし、そもそもこんな質問をしなかった。第三者…桜があんなに熱く語ってくれたおかげで、ふと我に返ったのだ。
「確かに俺は、返り血を全身に浴びた兄貴を見た。しかし、殺しているところを見ていない。」
「それはそうだけど、普通あんなに返り血を浴びることはないと思うよ……殺した奴以外はね。」
「……お前の隣にはアリウムがいた。あいつが両親を殺して、その血が近くにいたお前にかかったのではないか?」
「あの方は……関係ない。
おい、今日はどうしたんだ?紅蓮。何かあったのか?」
「俺の話を逸らすな!」
「逸らしてしないよ。ただ、紅蓮がいつもとちが「どうして、」…」
「どうしてあのとき、涙を流していたんだ?」
「っ…涙なんて流していないよ?記憶違いじゃないか?」
「いや、涙が流れていた………血の色のな。」
俺が白蓮を見たとき、全身が血まみれでもちろん顔にも返り血が付いていた。あのときは突然のことで頭に血が昇り、白蓮の頬に涙のような跡赤い線に気付かなかった。あれは、涙に血が混ざり、流れてできたものだ。
「あれは……返り血が流れただけだよ」
「本当に?」
俺はもう、白蓮と向き合うと決めた。何が真実で虚実なのか。桜と白蓮と俺のなかで誰の主張が正しいのか。俺は知りたいのだ。
だから俺は白蓮の目をじっと見た。
「………」
「ほ、本当だよ?」
「………」
しばらく黙って見ていると、白蓮の様子が変わった。焦っているような感じで目を泳がしていた。
「白蓮」
「……っ」
白蓮が顔を逸らしたので、俺は両手で白蓮の顔を掴みもとに戻した。
「そろそろ話してくれないか?白蓮」
「……………言えない。」
「っ白蓮!!」
(まだ粘るのか!!)
少し苛立ちを覚えると、白蓮が俺の手を勢いよく外した。
「これは……言えないんだ!!」
そしてそのまま走り去ってしまった。
「白蓮!!」
俺は突然のことで、動くことができなかった。
何が悪かったのだろう。……いや答えは自問する前から分かっている。俺が白蓮に踏み込み過ぎたんだ。
「あー……兄弟って難しいな~」
今までの俺の行動を思い出して、軽く自己嫌悪に陥った。
◇◇◇
「……すまない、紅蓮。
こんな兄貴で、本当に、すまない…」




