46心の弱き者と心の強き者5
視点は茜です。
予想以上に茜と鈴の話が長くなりました。
主要キャラの予定では無かったのに…
_はりぼて
私はあの日、強くあろうとした。
でも、現実はそう甘くはなかった。
剣は人の何倍以上も努力しないと強くなれなかったし、勉強も苦手で効率の悪い方法をしないと出来なかった。どうしても上手くいかなかったときは、夜一人で泣いてしまったこともあるし、心の中ではいつも弱音を吐いていた。でも、鈴を守れる人になりたくて、強い人になりたくて、我慢して、頑張って、強気な言葉で自分を囲った。
そして、いつの間にか孤独になっていた。
周りには人はいたが、孤独だった。辛くて、辛くて、どうしようもないときに、そのことに気付いた。でも、いまさら引き返せはしない。私が目指した強い人はそういうものなのだ。そう割りきってきたのに………
ある日、鈴が私の名前を呼ばなくなった。
今まで『茜』って呼んでくれた鈴は、小学校に入ってしばらくしてから『あーちゃん』と呼ぶようになった。私は鈴を問い詰めたが、答えてくれなかった。それから、鈴がそう呼ぶに反して、周りは茜ちゃん、茜さんと呼ぶことが増えた。私は、そんな日々に何故かいらついていた。
そしてしばらくして、ある現場に立ち会った。
数人の同じ年の男子が鈴を囲んで………………いじめていた。
殴ったり、蹴ったり、罵声を浴びせたり……
所詮小学生の力だから怪我はそこまでひどくはならない。だって私は鈴の怪我に気付いていたが、本人の転んだという嘘を何も疑わずに信じていたぐらいだ。あの子たちの様子から大分前からいじめていたのだろうに。
私は助けに行こうと近づいていくと、あの子たちの話し声が聞こえてきた。
「おまえ、むかつくんだよ!」
「このまえまではあかねちゃんのなまえをよんでいたし~いまでもあかねちゃんになまえをよばれていて~」
「しかも、あかねちゃんにいっつもひっついているしさ~」
「あかねちゃんはみんなとなかよくしたいのに、おまえがそばにいるからできないんだよ!」
「そーだそーだ!あかねちゃんもきっときみをきらいだとおもってる!」
「おまえみたいなくらいやつが、あかねちゃんのそばにいたら、いけないんだぞ!」
「そーだそーだ!あかねちゃんがかわいそうだぞ!」
「…………」
「っ…おまえ、だまってないでなんかいえよ!」
「ほんっと、れいってくらいやつだな!」
「…で、いいたいことは…それだけ?」
「「「「「!?」」」」」
私を含めたここにいる子たちは、耳を疑った。
あんな冷たい鈴の声、言葉、目。どれも初めて知った。
「っおまえ~」
「ち、ちょうしにのりやがって~」
一人の男の子が手を振り上げたのを見て私は止めようとしたが、鈴はその子の目をじっと見て
「またなぐる?…それできがすむならどうぞ。」
また冷たい声を吐いた。
「くそっ」
「お、おまえなんなんだよ!」
「び、ビビんないなんて…きもちわるい!」
「こ、こんなんでおわるなんて、おもうなよ!」
そして、あの子たちはスタスタと行ってしまった。
私はその場から動くことが出来なかった。
名前のこと、いじめのこと、周りの反応、そして鈴の態度。どれも私にとって衝撃的だった。
「いてて………あーちゃんとおやになんていおう…。」
「鈴!!!!」
「あ、あーちゃん!?」
「けが、だいじょうぶ?いたくない?……あか、わたしのせいだよね?ごめん。」
「!?…………あーちゃん、はなしきいてた?」
「………」
「だいじょうぶ!…あーちゃん、だいじょうぶだから。これはぼくのせいだから。だから」「あかね」
「?」
「わたしは、あかねってなまえだよ。」
「………そうだね、あーちゃん。」
「………」
_もう呼んでほしい人に呼ばれなくなった名前に、何か意味があるだろうか。
そう思うと、視界が歪みはじめた。
今まで溜めてきたものが、涙として、言葉として、外に流れた。
「うっ……うう……」
「あ、あーちゃん!?」
「ごめん、なさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
わたしはつよい人になりたいの。鈴をまもれるような、人にたよられるような人に。
でも、…でもあかねは………よわきなことをいつもかんがえているの。よる、ひとりでないたこともある。みんなにつよいこといっているけど、ぜんぶあかねがおもっていることじゃない。
うっ………それでもね、鈴はまもろうと、おもったの。それだけはがんばろうとおもったの。それなのに……それなのに………あかねはできなかった。あかねのせいで、鈴はこんなにけがをして、、つらいおもいをしている。
ははは……やっぱり、あかねはだめな子だね。あかねのおもいばっかりを鈴におしつけてる。
だからね、あかねは、……うっ…あ、あかねはね……鈴から…はなれ「あかね」」
「ぼくはね、あかねのそばにいたいからいるんだよ。」
「…え?」
「あいつらは、ぼくがそばにいないほうがいいっていうけど、ほぐもそうおもうんだ。あーちゃんはゆうしゅう?だからぼくみたいなくらいやつはそばにいてはいけないんだ。
…でも、あーちゃんのがんばっているのをみて、ぼくはもっとそばでおうえんしたいっておもったんだ。みんながどんなことをいっても、そんなあーちゃんをそばでみたいっておもったんだ。
…だって、がんばっているあかねは、、、かわ……かっこいいんだ!
だからぼくはあかねのそばにいたいな。………だめ、かな?」
私の目の前には頼りない幼なじみではなく、少し…ほんの少しかっこいい男の子がいた。
こんなに真っ正面から向き合って褒めてくれたのは久しぶりで、ちょっと恥ずかしい気持ちになったけど、私も心をゆるせる鈴のそばにいたくて、
「鈴こそ、、こんなよわいあかねでいいの?」
「…あーちゃんはよわくないけど、もちろんだよ。」
「ありがとう………ぜったいつよくなるから、そばでみていてね?」
約束をした。
それから、私はいじめっ子に話をつけ、鈴がいじめられないように、私がなおいっそう強く振る舞った。
この学園でもそうだ。周りに強い奴、頭が良い奴、問題児、優しい奴。どんな奴がいようと私はこの態度を貫いた。
しかし…本当に強い奴には敵うはずがなかったのだった。
「おい、聞いているか?……その様子じゃあ図星か?」
「………」
「なるほどね…さっきから戦い方が臆病だな~とは思ったが、精神が弱い方か…」
「っ……(何も言い返せない)」
「たまにいるよね~弱い自分を悟られたくなくて虚勢を張る奴。正直ね~そういうの見ているとさ、笑えて来るんだよね。虚勢を張るなんて、自分が弱いですって言っているようなものじゃん。」
「っ……」
泣くな!泣くな!!奴の言っていることは本当のことだ。自分は弱い。昔から分かっていることじゃない。だから、こんなところでみっともない姿を晒すな!弱いからって、そんな姿を晒すのは自分が許さない!!
「何か言い返したらどう?弱者さん。」
「くっ………」
竜胆は短剣を構えて向かってきた。
今の私には避けることなど、動くことなど出来なかった。
(もうだめだ…)
涙が溢れそうになった。弱い部分がそのまま出そうなった。
諦めかけたそのとき、
ガキンっ…………ポチャン
短剣が放物線を書くようにリンク外の水に落ちた。
竜胆は唖然とした顔のままで左を見た。
私もつられて見ると、そこには細剣を構えた鈴がいた。
「なぜ、きみが…」
「だまれ。それ以上口を開くな。」
「…君は本当に鈴君か?」
「だからだまれと言っただろ!」
鈴は細剣を竜胆の顎の下に添えた。
さすがの竜胆も鈴に従い、両手を頭まで上げた。
「お前は茜が弱いと言ったな?いったい茜のどこが弱いんだ!
小さい頃から毎日剣の鍛練をし、毎日勉強をし、弱音を吐かないように、自分に厳しく生きている。
そんな姿のどこが笑えるんだ!!
僕はそんな茜をそばで見てきた。弱気なことを思っても苦しくても辛くても、すべてを飲み込んで、成りたい自分になろうとしていた。僕はそばにいるだけで、相談相手にもなれず、支えることができず、苦しみから逃すこともできない!そんな僕を見捨てずにいつもそばにいてくれた。
笑うなら、僕を笑え!!
だが、茜を笑うことだけは、絶対に許さない!!!!」
鈴は剣を鞘に入れた。竜胆はその鈴の様子から息を漏らしたが、その瞬間鈴は竜胆を殴った。鈴の拳は竜胆の腹に当たり、そのままの勢いで竜胆は5m飛ばされた。
そして、竜胆はすぐに転移された。
「鈴?」
「あーちゃん!大丈夫?」
「えぇ………またあーちゃん呼びなのね…」
昔を思い出したら、やっぱり茜って呼んでほしかった。いじめっ子によってその呼びなったが今でもそのままなので、昔の記憶がトラウマになっているのだろうか?もしくは私の名前なんて呼びたくないのだろうか…
寂しさでまた涙が溢れてくると、鈴は困った風に笑った。
「…僕ね、昔から弱いから誰かに逆らおうと思わなかった。でも小学校であーちゃんの名前を呼ぶなと言われて従ったとき、すごく後悔したんだ。」
「後悔?」
「うん。あーちゃんは悲しい顔をするけど、周りは良い顔をしていた。僕はなんともないと思ったのに、周りの男子が茜と呼ぶ度に胸の辺りが痛かった。」
「なぜ痛いの?病気?」
鈴はなにか重い病気を抱えていたのだろうか?
「そ、そう捉えるか……仕方ない、直球で行くしかないか。」
鈴はなぜかため息をついて、一度目を閉じ、再びこちらを見た。いつもの鈴とは違う雰囲気だった。
「僕はね…小さい頃から茜のことが好きです。友ではなく、女性として好きです。だから、そんな悲しい顔をしないで、僕もかなし……は!!つい流れで言ってしまった!あ、茜、今のは忘れて!!」
鈴は赤い顔をしてそう言い、こちらに背を向けて、敵に剣を向けた。
あちらの戦いが再開する直前に、私はやっと思考が追いついた。
鈴の背中に向けて、小声でつぶやいた。
「忘れないよ。……だって、私も…………鈴が好き、みたい」
すると、鈴は剣を足元に落とした。
そして膝をつき、手をつき、プルプルと奮えていた。
「…あー、えっと………こ、降参する?」
「そうします、桜さん。
……今、あんなかわいい返事を聞いて戦いを続行できるか?いや、できない。」
「え?え?鈴、大丈夫?」
「(決勝中にカップル成立……お幸せに…)」
___桜は、決勝は観客に音声が届かなくて良かったと心底思った。
決勝戦、残り4人。
決勝中に何しているのでしょうか。この話を書き終えてからこの疑問に気づきました。
つ、次も一週間以内に頑張ります。




