45弱き者と強き者4
視点は、第三者・桜・茜です。
___彩芽がブチギレている頃、桜の方では…
「桜です。よろしくお願いします。」
「れ、鈴です。お手柔らかに…お願いします。」
「竜胆です。よろしくね?茜さん。」
「なんで知っているのよ……まあ良いわ。こちらこそよろしく。」
桜vs鈴と竜胆vs茜の勝負が始まろうとしていた。
◇◇◇
あやと木蓮君が戦い始めた頃、私は誰と戦うかと周りを見渡すと一人と目があった。
「僕と勝負しますか?桜さん。(今目合ったから、断らないよな?)」
「うへ……(目逸らして今すぐ曲がれ右をしたい…)」
相手はよりにもよって竜胆さんだった。
私は竜胆さんの笑顔(圧力)に逆らえるはずもなく、勝負を受けることにした。
お互い武器を構えたとき、横から声をかけられた。
「ねえ。」
「あ、はい!」
声のした方を見ると、女子生徒と男子生徒がいた。確か茜さんと鈴君だったはず…。
「そっちで勝負するのは勝手だけど、できたら私たちも交ぜて欲しいわ。」
「僕からも…お願いします。」
「私は良いですよ!竜胆さんはどうです?」
「僕も良いと思うよ。でも、…四人で戦うのは大変だな~」
「あ、では二組に分かれてはどうですか?」
つまり私が言いたいことは、今四人いるのでグーパーで分かれてそれぞれで勝敗を決める。そして勝った人同士で戦うということだ。
「~ということです。どうでしょう?」
「それで良いわ。」
「ぼ、僕もそれで良いです。」
「僕も異論はないよ。」
「では、…グーパーで分かれましょう~!」
組分けは一発で決まった。
「私はパーだ」「僕はグーだよ」「私はグーだわ」「ぼ、僕はパーです。」
ということで私の相手は鈴君となった。
挨拶は軽く済ませてから、私たちは互いに構えた。
しばらくしても相手から攻撃をしてこなかったので、私から仕掛けることにした。
刀を鈴君に振り下ろすと、鈴君は細剣で受け止めるのではなく、受け流した。
そしてそのままの流れで私の後ろをとり攻撃をしてきたので、私はその場でしゃがみ込んで剣を避けた。
細剣が頭上を通りすぎたのを確認すると、私は鈴君の足を払って体勢を崩して、下から攻撃を仕掛けた。
しかし相手の剣で弾かれてしまい、私はいったん距離をとった。
「(普段はほわほわしているのに)…反射神経が良いのですね。」
「僕なんて…まだまだとろい方ですよ。(あーちゃんの方が攻撃速度とか速いし、僕より何倍も凄い。)」
___戦闘は激しい剣のぶつかり合いだが、会話は比較的ほわほわとしているのであった。
◇◇◇
「金魚の糞、意外とやるね~」
「っ…鈴は金魚の糞じゃない!!」
「おっと、これは失礼。」
「…その気がないのに謝られても無意味よ。」
「ひどい言われようだな。」
「(やはり、こいつは噂とは違う外面だけが良い奴か…)」
私は自分の視線を目の前にいる奴から鈴の戦いに戻した。
_____
___
私たちは小さい頃からいつも一緒にいた。
最初の顔合わせでは、私は両親の背中から出てこれなかった。この頃の私は甘えっ子で、知らない人の前に立つのが怖かった。両親は苦笑していたが、出来ないものは出来なかった。
時間だけが過ぎて泣きそうになっていたとき、あの子が私の横に現れたのだった。
手をさしのべて、
「ぼ、ばくは、れい。……きみは?」
と話しかけてきた。
視界がぼやけていた私だったけど、そのときのおどおどしていた鈴の顔は、やけにはっきりと写った。
(このれい?っていうこもこわいのに、あかねにはなしかけてきた。あかねよりなきそうになっているのに、はなしかけてきた。)
自分も怖いはずなのに鈴は私に手をさしのべた。普通の女の子ならここで好きになるか憧れるのだろうけど、残念ながら私は違った。
「ふっ……」
あまりにもガタガタと奮えていたから、笑ってしまったのだ。そして、
「あかねはね、あかねっていうの。
れいくんは、おとこのこなのにあかねよりこわがりだね。…………だからね、あかねといっしょにあそんであげる!」
両親の背中から出て鈴の手を引っ張った。
目の前で頑張っている子を見て、人前が怖いとかの甘ったれた気持ちはどこか遠くに行ってしまった。
「あ、あ、、あるくのはやいよ…」
「…あ・か・ね。」
どうやら鈴は私の名前を覚えていなかったようだった。
「う………あ、あかねちゃん、はやいよ。」
「うん、わかった。…れいくん、なにしてあそぶ?」
私は初めて両親以外の人に名前を呼ばれて嬉しくて、つい緩んだ顔で振り返った。
そのとき、私はある一つのことを心に決めた。
この子を守れるぐらいに強い人になろうと思った。今までみたいに両親に甘えず、弱音を吐かない、そんな強い人に…。
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「さて、俺たちも始めますか?」
「えぇ、そうね。」
私は細剣を構え、自分の影を見た。
(目の前の奴は影を踏んで操る。今の影は…どうやら運は私に味方をしてくれるようだわ。)
私は竜胆さんに接近戦を持ち込んだ。
ただいまの時間は正午に近いため、影が短い。そして私は太陽と向き合う位置にいて、相手の足を深く踏み込ませなければ自分の影を踏まれることはない。
私は相手の急所を次々と狙った。最初、相手は私の攻撃速度になんとかついてきて短剣でかわしていた。しかし、時間がたつにつれて徐々に私の速度が相手を上回り始めた。
竜胆は一度下がろうとしたが、相手に体勢を整える時間を与えるほど私は甘くはない。私はこれは好機だ、と思い、さらに相手を追い詰めるべく距離を縮めた。_しかし、それは間違いだった。
「やっと、隙を見せたか。」
「っ…」
距離を縮めようと足を踏み込むと、竜胆の下がろうとしていた足が前に大きく出た。私と相手との距離が予想以上に縮まってしまったのだ。これはつまり、……竜胆が魔法を使えるということだ。
私は持ち前の速さですぐに待避した。後ろに逃げると、相手はついてきたので、右にずれて距離をとった。
「逃げ足も速いんだな。」
「………」
「えー無視か?…まあ良い。狙い通りだしな。」
「狙い?…しまった!」
右に待避してしまったため、竜胆は太陽に向き合うように立っていて、私は太陽に背を向けるように立っている。つまり私は相手に命を晒しながら戦うことになる。
_戦うことは自分の命を懸けるということ。
あれほど先生から散々聞かされたのに、私は何も理解していなかった。そんな覚悟を持ち合わせてはいなかった。
私は結局…
「茜。前から思っていたが、………………お前のその強気な態度は『はりぼて』だろ?」
昔から何一つ、変わっていなかった。
次話も一週間以内に投稿したいと思います。




