17海と緑と水
長くなってしまいました。
私の両親は船乗りであった
ある日、嵐にみまわれて亡くなった
ちょうどその時、私は赤ちゃんで一緒に乗っていたらしい
どういう経緯があったかは分からないが、両親は亡くなり、私だけ沖に流されて生き残ったらしい
そして…その時に私を拾ったのが小さい盗賊団の棟梁の匪黒さんだった
最初は優しかった
盗賊団の皆は私に対して優しくしたり、面白いことをしたりして、毎日楽しく過ごし、笑いの絶えない生活を送っていた
これが本当の家族だと思った
それが嬉しかった
それが私の大切なものだと思った
けれど…………それは偽りだった
私が物心つきしばらくしてから、盗賊の技術を学んだ
判断力や常識がない私は、何の疑問も持たずにそれらを学び、何の罪悪感も無しにそれらを行った
財布を盗んだり、金持ちの家に侵入したり、荷物をのせた船に侵入したり…あらゆる罪を何のためらいもなく、行った
上手に出来れば、盗賊団のみんなが褒めてくれた
アドバイスをしてくれたり、相談にものってくれた
私が9歳になったとき、固有魔法が使えるようになった
私の固有魔法は……………大量の水を操ること
盗賊団のみんなはそのことを知るとすごく喜んでいた
その目が濁っているのに…そのときの私は幼すぎて気づけなかった…
盗賊団には固有魔法が使える人が何人かいたので、いろいろ教えてもらえた
そして魔法を用いて仕事(盗み)をするようになった
用いたと言ってもターゲットの護衛をしている人を水でつつんで、動きを遅くするだけで人を殺すことはなかった
そして……私が疑問に思い始めたのは固有魔法が使えてしばらくしてからだった
だんだんと自分の魔法で相手を倒すことが増え、相手が苦しむ所を何回も見た
自分が強くなっていることに嬉しいはずなのに……なぜか仕事(盗み)のあとにやるせない気持ちになった…
この気持ちの正体が分からなく、毎日悩んだ
なかなか答えが出なくて、夜遅くにみんなに聞こうとみんなの部屋に訪れたが、誰もいなかった
仕方なく匪黒さんに聞こうと扉をノックしようとしたら、中から話し声が聞こえた
「あそこの主人が・・・・」
「分かった 次」
「最近、・・・さんのところにお金が・・・」
「よし 次はそこだな」
ミーティングをしているのだろうと思った
(扉越しで聞き取りにくいが次のターゲットが決まったのだろう)
邪魔してはいけないので部屋に戻ろうとしたとき
「あの件の後始末は出来たか?」
「はい いつも通り静かに(・・・)しておきました」
「じゃあ、そろそろ柊にも・・・」
(静かに?いったい何のことだろう?)
私はなぜかこのとき、前から思っていた疑問が浮かんだ
『なぜこの盗賊団は指名手配されていないのだろう?』
今まで盗賊団の顔を相手に見られているはずなのに国はうごいていなかった
考えてはいけないとどこかで思っていたが、私はそのまま考えに沈みながら部屋に戻った
だからだろう…その後の匪黒さんの言葉を聞き流してしまったことは…
そしてあの日がやってきた
その日はいつもと違う仕事があった
ある村が湖の水が無くなって困っていたらしいので盗賊団が助けることになった
なんでも盗賊団のなかにその村出身がいたらしい
私はそのことを聞いて手を貸すことにした
助ける方法は意外と簡単で、盗賊団の誰かがどのくらい水が必要かを調べ、私が海からその水を盗賊団の指示のもと運ぶだけだった
「お前のおかげで速く済んだ ありがとな、柊」
と言って匪黒さんは私の頭をなでながら焦げ茶色の目を細めた
匪黒さんは普段笑わないタイプなので珍しい表情に驚いたがそれ以上に嬉しかった…父親みたいで
…それからすぐに、町でとあるニュースが話題となった
「あの有名な惨灰団が壊滅したらしい」
「え!国が苦労してた山賊の一つが?」
「ああ なんでも匿名の通報があって国が山をパトロールしていたら、あいつらの拠点らしい村が海水に浸かっていたそうだ」
「それはすごいな あいつら最近羽振りがよかったから同業者に恨まれたのかな?」
「お~ やっぱり盗賊は怖いな」
(どういうことだ?
山賊?拠点の村?海水?最近?
どの単語も私の聞き覚えのあるものだ
これは偶然か?……………嫌な予感がする)
私は家(拠点)に帰り、このことを盗賊団のみんなに言った
みんな一瞬顔を見合わせたがすぐに
「何いっているんだ?」
「気のせいだろう?」
「そうだよ 私たちが殺人を犯すわけないでしょう?」
と言った
「そ、そうだよね 私たちは盗賊だもんね…」
それでもモヤモヤが晴れることはなかった
そして次の仕事(盗み)のとき、いつものようにターゲットを盗み終えたら、匪黒さんが言った
「今日から柊にはもうひとつの仕事を与える」
「? はい」
(もうひとつの仕事?)
「そいつを殺せ」
……
「こ、殺す?む、無理です」
なぜか人を殺すのに抵抗があった
「何故だ?」
「そ、それは…その……人として…」
「俺たちは匪賊だぞ」
盗賊…盗みをはたらく者
匪賊…略奪殺人強盗を行う者
匪黒さんは『匪賊』と言った
つまりそういうことだろう
「それに柊がそれを言えるのか?」
「…」
確かに盗賊の私が言えたことじゃない
「そうそう柊も俺たちの仲間」
「今さらいい人ぶるのは笑えるよw」
「っ…みんな」
「…もしかして柊ちゃんまだ分かっていないんじゃない?」
「わかる?…匪黒さんなんのことですか?」
「柊…お前はすでに立派な『匪賊』だぞ」
…………つまり…人殺し
「どういうことですか?」
「だ~か~ら~柊ちゃんは惨灰団を壊滅させたんだよ?」
「あれは凄かった まさかあれだけの海水を一度に運べるとは…」
惨灰団…じゃああの大量の海水を運んだ場所は惨灰団の拠点だったのか…
「わ…わたし…は…しらな「知らなかった、で済むとでも?」
私はいくら罪人でも人を殺してしまった
知らないでは済まされない
殺そうと思っていなくても人殺しは人殺し…大罪だ
「さあ自分の正体は分かったな?ではそいつを殺せ できたらいつもみたいに褒めてあげよう」
いつもみたいに……
『いつも通り静かにしておきました』
『なぜ指名手配されないのだろう』
ああ…こういうことだったのか
この盗賊…匪賊団は毎回相手を殺していたから指名手配されなかったのだ
そして今、私を本格的に仲間にしようとしているのだろう
私は長年思っていた疑問をこぼした
「…なぜ私を拾い、ここまで育てたのですか?」
「柊が水の固有魔法で守られて沖に流されていたからだ」
「?」
「親が固有魔法が使えるなら子供も使える可能性は高いからな」
「そして…その力を盗賊で利用できる、と?」
「ああそうだ」
そうか…『利用できる』やつとして今まで見られていたのか………一人の少女ではなく…
「さあ時間もあまり無い」
「「「「殺れ!」」」」
人とは…こういうものなのか……
利用できるものは利用する 情など一切必要ない…確かにその考えは正しいのかもしれない
でも…私は……
「嫌です」
「「「「!」」」」
私は大量の水で盗賊団を捕らえて、すぐにその場から逃げ出した
「待て・・・・」
何か言っていたが気にせず走った
走って走って…崖まで走った
高さは結構あり、下は激しい波がたっていた
私は…あの温もりが嘘だったと信じたくないのだ
たとえあの日々が偽りでも…ほとんどの人が自分勝手でも…ほとんどの人が私の考えがおかしいと笑っても………
それでもこの世界の何処かに情があると信じたい
でも私にはそれを信じる資格など無い
匪賊の私がそれを信じていい訳が無い
私は突然現実を突き付けられて混乱していた
そして何も信じられなくなり…生きる気を無くした
「さようなら無知だった私」
海へ飛び込もうとしたら誰かに腕を引っ張られた
それが理事長との出会いだった
理事長はこの国のトップとして、キナ臭いこの周辺をみに来ていたらしい
「…………………」
「…………………」
私たちの間にしばらく沈黙が続いた
「……これからどうするつもりだ?」
「……」
「ふー………魔法が使えるなら、魔法学校で自分の固有魔法について学んでみないか?」
自分の固有魔法…私は今まで仕事(盗み)で使うような攻撃の魔法しか知らなかった
(もしかしたら防御としても使えるのかもしれない)
そう思ったら自然と言葉がでた
「…はい!」
今度は利用されないように、全員を疑い、誰一人信用しない
たとえ私を助けた恩人でも どんな善人でも
…絶対に!!
次こそバトルを書きます。(予定)




