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03 ~しかたがないね~

ひっさびさの投稿です。

遅くてすいません。


 一時間目。

 冥界の主神ハデスがぱらぱらと現代文の教科書をめくる。

 俺のクラスの担当の先生は、今年ここに赴任してきたらしい。

 授業では取り扱わないであろう古典や小説を読み、満足したらしくぱたんと教科書を閉じる。


 二時間目。

 俺の神通力はすやすやと寝ている。

 どうやら英語には興味ないようだ。

 しまった、英和辞典を忘れてた。


 三時間目。

 冥界の主神ハデスはおとなしくしてい――ない。

 体育教師に気に入られた。

 俺が――――。

 近くにいたクラスメイトが声を潜めて、体育教師を婚期をのがした30代女性と評価していた。

 たしかに、と思ってしまったのは内緒だ。

 

 四時間目。

 皆眠たそうだった。

 さすがに体育の後に化学は俺もきつい。


 昼休み。

 朝、二人分のお弁当作るのは中々につらかった。

 もっと早く起きて準備しないとな。

 ―――――何で俺、冥界の主神ハデスと二人だけで食ってんだろ。


 五、六時間目。

 全校生徒が1000人近くいると集会をするのにも苦労する。

 さらに人型や動物型の神通力を併せると大変なことになる。

 ほらほら冥界の主神ハデス、お前はあっちだ。

 そんなぶーたれるなよ。

 先生、すいませんお願いします。

 

 七時間目。

 冥界の主神ハデスはつまらなさそうにしている。

 話しかけてくるな。授業中だぞ。



今日からここ、私立菅原すがわら高校の部活動の体験入部が始まる。

 この高校はマンモス校だ。

 部活も多岐にわたる。

 実は1つ気になっている部活動がある。

 ヴァーチャルハンティング部。

 仮想現実ヴァーチャルリアリティーを用い獣や魔物などを狩るeスポーツで、最近盛り上がってきている新しい競技だ。

 

 その部室の前に来ているが――――――――。

 鳥だ。

 鶏がいる。

 鶏の頭をした生徒が立っている。


「コケコッコー! よく来てくれたな新入生諸君! 寄っていってくれたまえ!」


 どうやら先輩のようだ。

 笑い方がニワトリそのものだ。

 ニワトリ先輩と呼ぶ事にしよう。


「俺の部にようこそ! 俺は烏頭うず けい、ここの部長をしている! さぁさぁ! どんどん入れ! コケコッコー!」

 

 ヴァーチャルハンティング部の部室に足を踏み入れる。

 かなり広い部室だ。VRの機器が計12台もある。

 たしか学校のパンフレットには、全国大会にも出場したことがあると書いてあった気もした。


「そこの三つ編み眼鏡ちゃん! 体験入部かな? さぁ入って入って!」


「は、はい……」


 かなり強引に部室に連れ込む。

 この人は、自分が良ければ自分以外どうでもいい、自分勝手な性格という認識でいこう。

 こういう人は苦手だ。

 まあ、自分がいえた義理もないが

 同じ部屋にいると、とても煩わしく思うだろう。

 ただここの部を一度体験してみたいので、説明を聞くことにしよう。

 あれ?そういえば冥界の主神ハデスどこいった?

 あ、そうだ。たしかトイレ行くとかいってたな。

 まぁ人型だろうが動物型だろうが排便はしないので、気分の問題だろう。


「あの……私、やっぱり帰ります!」


 と、ニワトリ先輩に三つ編み眼鏡ちゃんといわれた黒髪の女の子が言う。


「はっ! 帰るぅ? 無理だね、帰さねぇよ」


 三つ編み眼鏡ちゃんがドアを開けようとするが。


「あ……開かない!? なんで!?」


「どういうことですか、帰さないって、なにを考えてるんですか」


 あくまで冷静に状況を鑑み対話を試みたのは、真っ赤に燃ゆる業火のような髪をもつ左右に二つお団子結びをした女性。

 凛々しく、俺よりも背が高い。

 女性より背が低いのは、なんとも形容しがたい複雑な気持ちになるものだ。

 肘まである黒い革手袋と黒いブーツが、彼女の制服と組み合わさり調和している。

 あと胸部装甲が厚い。


「そや! 何でこないな事するんや! 説明せぇや! 偉そうにしくさりよってからに!」


 そう言って赤髪の彼女に同調するのは、左右に耳のような癖っ毛で迸る雷のような金髪の少女。

 背中の下部に車のバッテリーらしきものを背負っている。

 スカートが先ほどの三つ編み眼鏡ちゃんや赤髪の彼女と比べると短い気がする。

 どちらかといえば金髪の彼女のスカート丈の方が一般的、普通ぐらいだろう。

 ――――――なぜこんなスカート丈のことを考えているのだろう。

 背は俺よりも低くスレンダーな体つきをしている。


「説明だと? いいだろう、してやるよ」


 彼は語った。


「まず俺の神通力は神鶏チキンヘッド、ここから始まった」


 彼の母親はなんの力も持っていない普通の人間だったそうだ。

 ニワトリ先輩が産まれ、畏怖した。

 彼の頭部はニワトリそのものだから。

 気持ち悪がった。気味が悪かった。

 私の子じゃないと言って我が子を山に捨てようとした。

 それを阻止したのは彼の母親の両親、つまりニワトリ先輩の祖父母だ。

 それから祖父母の家で育てられるが、事故で祖父母を亡くしてしまう。

 彼は周りの人間から尽く虐げられた。

 だって鶏だから、周りの人間と違うから。

 

 彼は考えた。

 なぜ自分は生きているのか、なぜこんな姿なのか、なぜ何の力ももっていない人間に虐げられなければならないのか、考えに考えた。

 そして自分なりの結論を得た。

 誰にも相談せずに、相談できずに独りよがりで身勝手な曲論を得た。

 曲がりに曲がった倫理を得た。

 自分が自分であるためにはそれ以外を淘汰することを厭わない。

 法など煩わしい障害でしかない。

 我が道を遮るものはひたすらに塵一つ残さず抹消するしかない。

 

「だから俺は決めた、神通力を使って下等な人間どもを征服し、我が物にする。そのために俺は強い神通力を持つ者をかき集め、自らの奴隷にして軍を作る。そうしたらまずはこの国を乗っ取ってやるよ。コケコッコー!」


 悲しき過去を持ち、復讐という茨の道をすすむことになったというのか。

 でも、なぜだろう?

 この話どこかで聞いた、いや見た事がある気がしてならない。

 

「それ……『弔いの復讐鬼』のあらすじ……ですよね……」


 三つ編み眼鏡ちゃんが答えを示す。

 そうだ、思い出した。

 半年前ほどに出版され、ありきたりな設定だと評論家からは評されていたが、引き込まれるほどの文体、どんな人間だろうと文章からその場面場面を簡単に思い浮かべることが出来、一度読んだら止められず、最後まで読んでしまう人が続出し、俺も気になって読んでいたら、気づいたら朝になっていた事があった。

 映画化も決まっているらしい。

 たしか著者は高橋 アマミヤというペンネームだったか。


「ああ、そうだよ。面白かったよなぁ、あの本。ついつい読んじまう、なんつーか“魔力”みたいなモンがあるよなぁ。さっきの話は大体嘘だぜ? ま、軍つくるのはホントだがよ」


 俺を含め体験入部にきた人たちに動揺が走る。

 あんな悲しげな表情を、復讐の炎を灯す目、重々しい言葉を紡ぐその唇も嘘だとは思えないほどだ。

 唇?おかしい。

 彼はニワ―――――。

 あれ?何で俺はあいつの頭部をニワトリだと勘違いしていたんだ?

 

 とりあえず悲冷の剣アケロン冥界の主神ハデスにだしてもら――――――――。

 ああ! あいつトイレだぁ! いや、でもきっと異変に気づいてきてくれるはず……だよな?


――――――――――――――――


 一方その頃冥界の主神ハデスは、ある危機に瀕していた。

 そう、トイレといえばお約束ともいっていい。

 紙、そうトイレットペーパーがないのだ。

「うう、なんということなのじゃ……まさか神なのに紙がないとは……うわっ、儂ちょーうまい」

 女子トイレには放課後、部活棟に近い所か部室に近いところぐらいしか使われないのだ。

 ここはもっともそれらの場所から遠いのだ。

 残念無念。ところで、

「は? 神通力はクソしないんじゃなかったのか、じゃと? 食ったらでるもんでるに決まっとろうが! でなかったら便秘を疑うわい!!」

 すみません。失礼なこと聞いてしまって。

 では、さようなら。

「あ! ちょっとまつのじゃ! あ、いや置いてかないで! 見捨てないで! お願いします花子さーん!」

 涙目になっている。

「ヘルプミーなのじゃあ!」

 断末魔が心地いい。

 いたずらは大好きなのだ。

 見てくださってありがとうございます。

 もし気になることがあったら、是非是非感想をよろしくお願いします。

 果たして神には紙が、龍也には神がくるのか?!

 乞うご期待!

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