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残念魔王と異世界勇者  作者: 真田虫
プロローグ
5/76

3:独り暮らしは命懸け

おはようございます。

 今日もいい天気ですね。

 地下だから天気わからないけどね。

 昨日は色々ありましたね。

 実家を追い出されたり、森をさまよったり、地下室を作ったり。

 あとは何もありませんでしたね。

 

 家を建てたことで衣食住のうち住は確保できた。

 衣はとりあえずどうでもいいけど、食をどうにかしないといけない。

 幸いにして家の食料庫には何日か困らない程度の保存食が用意されていた。

 そしてこの家には台所も付いている。水回りに関してはあとで水の精霊を呼んで使えるようにしてもらうとしよう。

 色んな精霊と契約しといて本当に良かった。

 ちなみに水の精霊の名前はスイセーさん。水の精霊だから。

 見た目は半分魚って感じ。下半身が魚で上半身は若い女性、日本の漫画によくある人魚っていうのがそのまま当てはまりそう。

 

 ともあれ、飲み水と食材はある。

 しかし同時に問題もある。

 料理。そう料理。

 自慢じゃないけどこれでも魔族のプリンス。料理なんて生まれてこの方したことがありません。

 正直、食材と格闘するなら人間相手に格闘するほうがましなくらい。

 料理の本は何冊かあるけどもほとんど異世界の食材だからもうさっぱりわかりません。

 何より、自分で料理して食べるだなんて魔王の息子としてのプライドが許さない。

 かといってずっと保存食を食べて過ごしても食材はいずれ無くなってしまう。

 困ったな。自宅警備員になってから2日目、早くも命の危機を感じている。

 持ち出してきた物のなかに何かいい物無いかなあ。

 

 

 なぁっ! あれ伏線だったんだ!

 あの時一人だけ名前が無いからおかしいと思ったんだよ。「そうしたかったからだよ。僕自身が」だって格好良すぎでしょもう!

 ずっと命令されて戦ってきた少年が自分の意思で、それこそ運命すら覆して少女を守ると決めた瞬間だね。くぅアツい!

 ……はっ!

 危ない。気が付いたら読書に夢中だった。

 荷物整理してると脱線すること、よくあるよね。

 げに恐ろしきは日本のラノベよ……。

 でももう最終局面だし、このまま最後まで読んでもあまり変わらないかな。

 あぁでも読み終わったらまだ短編集もあるし、今日は適当に燻製でも食べて片付けは明日からでも……。


 いやいやいや駄目だ。今日だ、今日を頑張った者にのみ明日が来るんだ。地下に住んでるサイコロ大好きな人がそう言ってたじゃないか。

 盛り上がったところで本を片付けるのはつらい。非常につらいけど、今はそれよりも優先すべきことがある。

 いやまったく危ないところだった。

 使えそうなものを探すために持ち出してきた荷物の整理をしていたらこんな罠が仕掛けられているなんて。

 物理的なダメージよりも精神に干渉してくる罠の方が危険だよね。

 いつかダンジョンを作る機会があったら途中にまんが部屋でも作ってみようかな。

 最初はちょっとした休憩のはすが、気が付いたときには夢中になって読み耽ってしまう。

 先に進もうとするメンバーと読書を続けたいメンバー。

 一向に動こうとしない読書組に業を煮やした進行組は、諦めて自分達だけで先に進む。

 そこに待ち受けるのは今まで以上に危険な罠の数々! しかし斥候は読書で残ってしまっている!

 次々に倒れていく仲間たち。悲鳴を聞き届けて慌てて進む読書組。だが彼らの目にするものは、見るも無惨な姿と成り果てたかつての仲間たちの姿であった……。

 恐ろしい罠に嵌まってしまったことに遅まきながら気付いた読書組はまんが部屋へ戻ると、自分達と同じ犠牲者を出さないため本に火を……。

 

 だめえ! 燃やしちゃだめえ!!

 あっぶない。大切な本を燃やされるところだったよ。

 まんが罠は駄目だね、リスクが大きすぎる。

 

 閑話休題。

 荷物整理を再開しましょう。

 整理のコツは分類分けすること。ということで件の木箱から中身を全部出して、①日本製品らしき物、②異世界の物だけど日本じゃなさそうな物、③それ以外。の3つに分けてみた。

 どこかに日本語が書いてあればとりあえず①。この日本語でもこの世界の言葉でもなければ②としておいた。

 ③のほうはぐっちゃぐちゃ。魔剣とか聖鎧の類から怪しげな魔方陣の描かれた本、なんか小さい魔物?が入った瓶とかもある。

 目につくものを手当たり次第持ってきたとはいえ、これ大丈夫なんだろうか。売れば遊んで暮らせそうな財産になりそうな物がかなり混じっていた。

 流石は魔王城の宝物庫といったところだろうか。

 ま、いいや。独り立ちした息子に対する仕送りとでも思っておこう。今更返しに行けないしね。

 さて、全自動料理機みたいな魔道具混ざってないかなあ。

 

 あったあった。ありましたよ。

 全自動料理機が真っ青になるくらい素晴らしい物が見つかりましたよ。

 テテレテッテレー。マジカルパペットー。

 うーふーふー。これはね、見た目は手のひらサイズの木製人形なんだけどね。実はとっても素敵な魔法具なんだ。

 なんと、術者の魔力を注ぎ込むことで人間くらいの大きさになって、自立して活動できるようになるのです。

 しかもその性能は込めた魔力量に比例するっていう、まさに僕にうってつけな魔道具。

 実家では拠点の防衛戦力として使ってたし、勉強させれば家の雑事とかやってもらえそう。

 というわけで早速やってみましょう。

 やり方は父の部下がやっているのを見たことがあるので、なんとなくわかる。

 人形を握って魔力を注ぎ込む。後はどういった性能にしたいかイメージしながら魔力をこねくり回すだけ。

 注ぐ、注ぐ、注ぐ。完成したら倒れてもいいやくらいの勢いで、ありったけの魔力を注いでいく。

 そしてイメージ。まずは頭がある程度良くないと駄目だよね。家事覚えてもらう必要があるんだし。

 あと戦闘能力も大事だね。いざとなったら防犯用としてもお願いしたいところ。

 当然言葉も話せないといけないな。魔族語と人間語、ついでに僕の知ってる限りの異世界語も覚えさせちゃえ。

 あれ、なんか見た目も変えられそうな感じがする。実家で見たやつは皆ただの人形だったから、そんなことできるなんて思ってもみなかったな。

 折角だしやってみようか。寂しい独り暮らしだし、多少華を添えてみるのも悪くないはず。

 ということでこねこね。こねこね。

 どうしよう。いじり始めたものの、いいイメージが沸いてこない。もうこれはあれだな。実家でよくお世話してくれてた子に似せてしまおう。どうせもう会うこともないんだし。

 べ、別にその子のことが気になってるとかそういう意味じゃないんだからねっ!

 

 容姿が完成した時点で急激な眠気がやってきた。

 あ、まずい。魔力注ぎ込みすぎた。まだ魔法覚えさせたりしたかったのに意識が飛びそう……。

 くそうまだ途中なのにペース配分間違えちゃったか。

 でも最期に名前だけ付けておかないと。術者が名前を付けないと魂が安定せずに暴走してしまうとか教わった気がする。要するに頭がぱーになるみたい。

 名前名前、浮かばない。ていうか最初に考えておくべきだった。

 いいや、見た目も真似させてもらったんだし、名前ももじらせてもらっちゃおう。

 

「我が名はウィルナルド・フォン・グレースウッド。我が名、そして我が力によって汝が魂に刻む。汝、その名はエティリィ。その魂、その肉体は我に絶対なる忠誠を誓うべし」

 

 名前を刻んだことによって残っていた魔力が吸われる。

 僕の魔力によって産み出される命が形を成していくが、その姿を最後まで見ることは叶わなかった。

 もう駄目限界……。

 どんな人形となるのか、ちょっと楽しみにしながら意識を手放した。

ほんの少しずつだけどPVが増えていくことが嬉しい。

ありがとうございます。ありがとうございます。

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