第4話 兄と妹
エルケードとミレーネは血の繋がりのある兄妹ではない。
この世界には大きく分けて3つの種族が存在する。
1つは人間、特殊な力は持たず見た目にも特徴的な箇所もない普通の種族だ。2つ目はシルフ族、シルフ族は魔法の扱いに長けた種族で使いこなす魔法によって髪と瞳の色が違うのが特徴だ。炎なら赤、水なら青、風なら緑、地なら黄となる。ちなみに色によって更に種族分けされている。3つ目は獣人族、その名の通り獣の力を宿しており身体能力が高い。しかし一般的に魔法の扱いは苦手とされている。そしてエルケードとミレーネはまず種族が違う。エルケードは人間だが、ミレーネは赤髪に紅色の瞳を持つ炎魔法の扱いに長けたレッドシルフだ。
「おはよう、ただいまミレーネ」
出来るだけ笑顔でミレーネに返事をした。しかし上手く出来ている自信はない。
ミレーネは寝ていた身体をゆっくり起きあげ眠そうな目を擦りながらその紅色の瞳でこちらを見つめる。
「お兄ちゃん、朝ごはんは〜?」
そう言って肩まで伸びた赤髪を指で溶かしながらおっとりとした様子でミレーネは言った。
腰に掛けていた騎士剣を取り外し机の上に置きながら店主から貰ったチゲルの入った革袋を取り出す。
「お兄ちゃんそれは〜?」
ミレーネは首を傾げなら尋ねてきた。
「あぁ、チゲルの葉だよ。商店の店主から貰ったんだ。どうぞって。だから朝ごはんにでも使おうかと…」
「使えないよ、お兄ちゃん。」
「え?」
革袋から葉を取り出そうとしていたその手を止める。どういうことだ?まさかチゲルの葉は本当は危ないものなのか?と考え込んでいると、
「だってそのまま使うとすごく不味いから1日干して乾燥させてから使うんだよ?」
ミレーネは思ったよりも知識に乏しかった兄を見て小さく笑った。ミレーネは実際は18歳だがその言動や、幼い顔に150程の身長の為、14歳に間違われた時期があった。笑った顔は可憐さよりも可愛らしさが勝る。
「ミレーネはもの知りなんだな。」
自分の知らなかった知識を持っていたミレーネを見てエルケードは小さく笑った。
「えへへ」
そう言ってミレーネは頬の紅くなった顔を手で覆いながらベッド上で身体を揺らした。しばらくすると歌を口ずさむ程まで機嫌よくなっていた。
その歌を口ずさむ妹を見てエルケードはまた過去の記憶を1つ思い返した。大聖堂の真ん中で鮮やかな紅色のドレスに身を包んだ赤髪の少女、その少女は透き通った声で歌を歌った。それは一度聴けば忘れられなくなるほどだ。エルケードは傍からそれを見ていた。そして隣には…
「お兄ちゃん?」
ミレーネに呼ばれ、エルケードはハッと意識を戻した。
「あ、あぁどうしたんだい?ミレーネ?」
するとミレーネは不安そうな顔をしたながら、
「お兄ちゃん今悲しそうな目をしてた。」
「…。」
ミレーネはこの村に来て以来、エルケードが悲しそうな表情をする度に心配そうな顔をしていた。自分のせいで苦しめてしまっているのではないのだろうかと、
「昔のことを思い出してただけだよ。ミレーネは心配しないでくれ。」
エルケードは小さく笑ったがそれが作り笑いであることは誰の目から見ても分かることだった。
「お兄ちゃんそれってスピ…」
「その話はやめよう、ミレーネ」
ぴしゃりとエルケードは強い口調でいい放ち、ミレーネは黙らざるおえなかった。
「朝ごはんの準備をするから少し待っていてくれ」
そういい残すとそそくさとエルケードは台所のある部屋に消えていった。
1人残ったミレーネは唇を噛み締めながら、
「もう…昔みたいに…楽しく話せなくなっちゃたんだ…やっぱり…」
と目に涙を滲ませながら悔しそうにそう言った。




