第21話 無情
葉から零れ落ちた冷たい雫が顔に当たり、エルケードは目を覚ました。地面で寝ていたからか体の所々が傷んだが、体を起こしその場を後にした。
日が出ていることもあり昨日見えなかった場所をしっかりと見えるようになっていた。
崖は思った程深くなく10m程の高さだった。ここから見える城壁が25m以上あり、そこから飛び降りたことのあるエルケードからすればどうこういうような高さではない。とはいえ別に飛び降りるわけではなく、中腹にある洞窟に入ることが目的である以上その心配はエルケードには必要なかったように思える。そして崖を覗き込んだ時エルケードは目を疑った。
昨日の夜にはあった崖の穴が綺麗さっぱり無くなっていた。まるで元から無かったかのように跡形も無く消えていた。
見間違いだったか…?
そうエルケードが思った瞬間、背後に人の気配を感じ腰に差していた剣に手をかけた。エルケードは今まで気が付かなかったことを悔やみつつ、魔力による身体強化を自らに施した。強化にかかる時間は1秒にも満たないためエルケードはすぐに迎撃体勢を整えることが出来た。しかしその後、後ろから攻撃されるようなことはなく、エルケードがただ冷や汗をかいただけで両者共に動くことはなかった。
考えすぎだったか…。そう思ったエルケードが振り返ろうとした瞬間、
「やっぱり、あなただったんですね…」
という幼い少女の声と共にエルケードを叩きつけるような凄まじい衝撃が襲った。咄嗟に防御することは出来たがあまりの衝撃によるものなのか、ちょうどエルケードの立つ地面が崩壊し崖の穴があった位置まで落下し横一直線に伸びた空洞に落ちた。それはエルケードに上から蹴りを食らわせた相手も同様である。エルケードは起き上がると同時に距離をとり、相手はゆっくりと起き上がりこちらを見た。
エルケードを見るその瞳には感情はなく、
「パパにはもしまだ居るようだったら…」
幼い少女の姿をした、
「殺していいって言われたの。」
ミニだった。
右腕は更に強くエルケードに求めていた。




