第12話 逆十字の契約
「右手を私の前に」
言われるままにエルケードは右手を差し出した。
「ではここに貴方の右手に悪魔の力を授けます。」
そう言うとベルフはエルケードの右手に持っていたナイフで逆十字状に切り裂いた。
「ぐっ…!」
右手に鋭い痛みを感じる。そして傷口にナイフから滴り落ちた黒い血液が、入り込んだ。
「!?」
その瞬間、エルケードを凄まじい激痛が襲った。
「がぁぁぁぁぁぁ!?」
それと同時に奇妙な感覚があった。傷を付けた右手と自分の心臓の辺りから何か説明し難いどす黒い何かが這い出しているようだった。そして心臓辺りから這い出している何かは右手に少しづつ近ずいていた。激痛の中エルケードは不味いと直感で感じた。理由は特にはないがすべてが右手に集まってしまえば自分では無くなってしまう気がしたのだ。痛みに絶えながら右手を見る。
「!?」
エルケードは右手を見て驚愕した。何故なら右手全体が黒い影の様なものに包まれているからだ。そしてちょうど傷口のある所からは影が吹き出していた。ベルフに助けを求めようと見ると、ナイフを持った手とは逆の手に持っていた無色の宝石の付いた十字架を掲げ、何かを呟いていた。そうしているうちに右手の辺りに先程のどす黒い何かかそこまで迫っていた。そして右手に辿り付く瞬間、
「ここに逆十字の契約を」
といったベルフが傷口に十字架を埋め込んだ。傷口に遺物を埋めたのだからもちろん激痛が襲う。がしかしそれは一瞬で他の痛みも消えた。どす黒い何かの気配も既にない。恐る恐る右手を見ると、覆っていた影は消え失せ傷口に埋め込まれた十字架だけが残っていた。十字架の宝石は無色からどす黒く変色していた。しみじみと自分の右手を眺めるエルケードにベルフは
「これで貴方は復讐のための力を手にいれたことになります。契約お疲れ様でした。」
と笑顔で言った。エルケードはただその右手を感慨深そうに眺めているだけだった。




