第11話 魔に潜むもの
「では始めましょう。」
そう言うとベルフはどこからか取り出した黒い液体にナイフを付けた瓶と、13個の無色の小さな宝石の埋め込まれた掌ほどの十字架を机の上にそっと置いた。
「それは?」
エルケードは黒い液体に指を指し尋ねた。
「これは魔物の血です。」
「!?」
エルケードは思わず立ち上がってしまった。魔物はある日突然現れた存在でこの世界に対し害しか及ぼさないとして発見次第、討伐隊が編成されすぐにでも駆除される。それゆえに数は大幅に激減したが未だ魔物はどこからとも無く新たに現れている。そんな魔物だからこそ遺骸や痕跡はひとつ残らず処分される。まずそんなものを持つこと事態が禁止されている。
「何故…そんなものがここにある!」
エルケードはベルフに問い詰める。しかしベルフは変わらず冷静な様子で、
「私が倒した魔物から取ったものです。」
何事もないようにそう言った。
「馬鹿な…!?1人でか!?」
驚きを隠せないエルケードに
「もちろんです。」
相も変わらず表情に変化はない。
瓶を持ち上げゆらゆらと揺らして
「この血はガンバイトの血です。」
と言った。
ガンバイトと呼ばれる魔物は黒い狼の姿をしており、体長は2メートル程だ。。鋭い牙に素早い動きが特徴的で、熟練の騎士であっても単騎であれば苦戦を強いられることもある。森の中や夜ならば尚更だ。素人では喰われて終わりだろう。
「アンタ…いったい何者だ?」
実力が自分に近しいと察っしたエルケードは敵対心を露わにしベルフに問う。
ベルフは口元を緩めながらエルケードに優しく答えた。
「私はただの小さな村の神父、それ以外の何者でもありません。」
エルケードは静かに椅子に座り直し、問いを投げかけるのを止めた。
「いい判断です。」
そしてベルフは瓶から血に汚れ黒く濡れたナイフを取りながら、
「ではあなたに迎え巫女を討つための力を授けます。」
そう冷たい表情でエルケードに言った。




