巻き込まれました
よろしくどうもです。
自分の作文能力にも打ち込む速度にも不安がありますが挑戦してみました。
少しでも楽しんでいただけたらと思います。
朝、雨の上がったばかりでジトっとした空気の市街地を全力で走る人影があった。
少し茶色がかったショートカット、首に赤い帯、ワンポイントシャツに紺のスカート、白いソックスに運動
靴、県立八湖高校の制服姿だ。
ただし指定のローファーを右手に持ち、運動靴を履き、スカートをはためかせ、カバンも何も持たずに、左腕にブレスレットをきらめかせ汗をかくほど走る姿は高校側の思い描いた制服姿ではなかった。
そんな人影こと合田アキは、特に理由もなく寝坊して授業開始後に教室に入る気まずさを回避するためにバス停までの道を爆走していた。
「このままじゃ、間に合わないっ」
髪を整えたり、ブレスレットを選んだりしていなけばまだ時間に余裕があったのだが、朝の準備、顔を洗い歯を磨き、着替えをするなどの中にそれらはすでに組み込まれていて、身だしなみを整えないという選択肢はアキの中にはなかった。
社会に出れば身だしなみを理由に仕事を与えられなかったりするのだから良い心がけだと両親もとがめていない。
普段使っている道を走っていたアキはそういえば、と前方にある路地を見た。
その路地は車は通れないくらいの幅で日当たりが悪く、道端に苔がむして気持ちが悪いため使っていない道だった。
人が通っているところなど見たことはないが確か近道になったはずだと、アキは気持ちが悪いのは気にしないことにして速度を緩めないまま路地へ飛び込んでいく、走っていくアキの背中は路地に居座る闇の中に溶けていった。
時間を気にして走っていたアキはふと辺りの変化に気づいた。
雨が上がったばかりとは言っても明るかった空が黒く濁り路地の出口が真っ暗になっていた。
急がないとと思っていながらも走る速度が落ちていき次第に徒歩へと変わっていた。
アキの鼓動は走っていたからではない理由で早くなった。
少し進んだが路地の先は相変わらず真っ暗だし景色も変わらない、初めのうちは慣れない道だからと思い込もうとしていたがこれはいよいよおかしい、胸の中で膨らんできた不安に心を潰されて泣きたくなってきていた。
このまま進んでも仕方ないと思い引き返そうとアキは足を止めた。
すると前方の暗闇から白い小動物がこちらに走ってくるのが見えた。
猫にしては小さい、ネズミだとしたら細長い、見たことはないがイタチってこんな形だったかなと考えていると、そのイタチのような生き物の後ろの暗闇から何かが現れた。
瞬感、アキは硬直した。
自分の見たものに頭も体も混乱してしまっていた。
周囲の物と比べてるとおおよそ二メートルくらいの高さに、金髪の三つ編みを肩から前に垂らした女性の頭が現れ次に大きくはないがしっかりと自己主張している胸、細くしなやかな手、薄く筋肉のついたく
びれたお腹が見えてくる。
それだけならばまだ大きな人だなぁという感想で終わっていたのだろうが、現れた女性の下半身は人のそれではなかった。
地面に触れるあたりがびっしりと毛に覆われたむしのような足が左右に四本ずつ計八本、その付け根の後
ろに黒く光る丸みをおびたものが地面に擦らないように上下左右に揺れながらついていた。
全身の現れた女性は蜘蛛の化け物というのにふさわしい姿をしていた。
動けないでいるうちにイタチのような生き物はアキの後ろに隠れた。
そして蜘蛛の化け物は、アキの前で止まりアキと隠れている生き物を見ながら口を開いた。
「ええっと、お嬢さん、その生き物はとても危険なの、どうか私に渡してくれませんか」
どこか上品さを感じさせる化け物の問いかけに恐ろしさを感じず硬直の解けたアキだったが依然頭の中は混乱していた。
話しかけられたからには返事をしなくてはならないと思ってはいたが化け物言葉を信じていいのかとか、自分の後ろに隠れている生き物が危険なものなら渡した方がいいのではないかとか、ひどい目に遭ってしまうんじゃなどと考えるが結論が出ない、それでも返事をしなくてはと小さなうめき声を上げ
「これはどういう状況なんでしょうか」
と選択を先延ばしにする質問をした。
「ぼくの話を」
アキの質問にイタチのような生き物が言葉を発した。
すると化け物が殺気をあふれさせ生き物(アキの足元)めがけ足を突き出し地面にクレーターを作って言葉をさえぎる。
生き物は素早く飛び上がり足を避けた。
アキはイタチのような生き物がしゃべったことと化け物の殺気のこもった攻撃に驚愕して目を開きまた硬直した。
「逃げるよ、こっちだ」
というイタチのような生き物の声に
「えぁ、う、うん」
と、とりあえず攻撃してきた化け物から逃げるためついていくことにした。
「あっ、待ちなさい」
化け物は追いかけようとしたがどこからか転がってきたゴミ箱に足を取られすぐに追いかくることはあたわなかった。
一人と一匹は化け物が見えなくなったところで座って話をしていた。
「結界を張っておいたからこれでとりあえずすぐには見つけられないはずだよ」
「あっ、ええっと、ありがとう」
座るのによさそうなものもなかったのでアスファルトの地面に座ることになった。
アキは逃げてきた緊張感かはたまた9年間の義務教育で染み付いたのか体育座りをした。
イタチのような生き物はスカートの中を見ることになったが、足はしっかり閉じているしスカートの中が見えてしまってもいいように短パンを仕込んでいたので気にしていなかった。
短パンと内ももの隙間を狙う存在もいるにはいるがアキは知る由もなかった。
「いいよ、わ、僕が巻き込んでしまったからね、そうだまずは自己紹介をしよう、僕の名前はペリル、希望の国からやってきた正義の使者だよ、僕のことはペリルもしくはジャスティスと呼んでね」
と言ってイタチのような生き物どや顔をキメた。
どうやら喋るときは二本の足で立つようだ。
「そう、よろしくペリル」
アキはよくわからないことが多すぎて何から聞けばいいか迷っていた。
そこでとりあえずペリルの会話に乗ることにした。
「私の番だね、名前は合田アキ、日本の普通の高校一年生、呼び方はなんでもいいよ」
「分かったアキだねよろしく」
と言ってペリルは前足を突き出す、おそらく握手を求めているのだろうと思いアキも手を差し出すと両の前足で指をつかみ体をグねぐねさせながら振った。
ひとしきり振ったあと
「ねぇ、アキ」
とペリルが真剣な目で話を切り出す。
「なに」
ペリルの変化にアキも少し緊張して返事をする。
「僕のことジャスティスって呼んでみない」
「呼ばないよ」
「すこ」
「呼ばないよ」
「はい」
アキはペリルがふざけたのでそれ相応の対応をしたのだが落ち込むペリルはちょっと面白かった。
ペリルは落ち込んでいて話を進めてくれそうにないのでアキは話を促した。
「どうして追われていたの」
「あ、そうだね、僕は命を狙われてるんだ、僕は希望の国からこの国を希望で満たすためにやってきたんだけどそれを快く思わない奴らに邪魔をされているんだ追われていたのはそういうことだよ」
ペリルは命を狙われていることを平然と言ってのけた。
「捕まったら殺されちゃうの」
「そうだね」
「怖いとか辞めたいとか思わないの」
アキは平和な世界に生きていれば不思議と生まれる疑問を投げかけた。
「怖くないとは言い切れないけどでもこの国を希望で満たすという目標のためなら何があろうと止まるつもりはないよ」
ペリルの言葉には強い意志がこもっていた。
「希望で満たすっていうのはいいことだよね、そして、それを邪魔するために命を狙っているさっきの化け物は悪者なんだね」
アキは心を決めるために状況を確認した。
「そう奴らは人々の希望を邪魔しているんだ」
「奴らって言ってるけど他にもいるってこと」
「その話は後にしよう、そろそろ結界が消えそうだ」
話しているうちにしばらく経ってしまったようだった。
アキは静かに頷きペリルを見つめた。
「結界が消えたらまた逃げるの」
「いや、逃げてもここからは出られない、いつかは捕まってしまう」
ペリルは少し躊躇するような素振りを見せ重く口を開いた。
「ここを切り抜ける方法が一つ、あるにはあるんだけどそれにはアキの協力が絶対に必要なんだ、巻き込んでしまって申し訳ないけれどお願いしてもいいかい」
「私に何ができるかわからないけど、頑張ってみるよ、でも魔法少女になってよっていうのはナシだからね」
アキはペリルを助けてあげたいと思い始めていた。
「うん、言わないよ、ちなみにどうしてナシなんだい」
「それは、テレビで見た女の子を魔法少女にして悲しみのズンドコに突き落とすキャラクターに、ペリルの雰囲気が似てるからだよ」
アキは某謎の生物を思い浮かべ、ペリるに微笑みかけた。
ペリルはひでぇ話だと小さく呟いたもちろんアキには聞こえていなかった。
「それで何をすればいいの」
「これを握って力が欲しいと強く願って見て欲しい」
そう言ってペリルは見えづらいように体に巻きつけていた袋を外しアキに渡した。
作業鈍いですけど一週間以内には更新していきたいです。
ありがとうございました。