王様
思いつきでばーっと書いたので粗しかないですね。
愛する我が国民へ
死んだのちの手紙さえ仰々しいものである必要はないだろう。私の言葉で綴らせてもらう。
まず伝えたかったことがある。私がこの世から旅立つことで心のままに言える言葉である。本当は一人一人の顔を見て言いたかった。
みな、すまなかった。
自分の政が決して良いものではなかったと思っている。みなからしたら私が死んでとても嬉しいだろう。
そこで、祝い酒を振る舞おう。臣下には言いつけてある。料理も振舞われるだろう、みな、酒を楽しみ次代の王を迎えてやってくれ。
しあわせになってくれ。
国民に愚王と罵られていた王様が亡くなってちょうど3日目の朝、黒い色を纏った城から喪に服す兵士が降りてきた。
城下の大広場にたどり着くと、町の人々を集めて亡くなった王様からの手紙を読んだ。
兵士は王様付きの中で最も若い兵士だった。王様の仕事をお側で見ていた兵士は、声を詰まらせながら読み切った。
町の人々は愚王の言葉を泣きながら読む兵士を訝しんだが、愚王にしては気が効くじゃないか、と喜んだ。
国中の酒屋に飯屋、遠い町の店にまで注文を出していたらしい王様。次第に方々から広場に酒や料理が届いた。また、町から出て行った。
朝から夜までゆっくりと届く酒や料理には王城からととけられたものもあった。
それらを運ぶ兵士に料理人の顔は喜ぶ人々とは真逆のものだった。
今日の良き日になんて顔をしているんだ。
1人が尋ねた。
何が良き日なものか…我らが王様が亡くなったのだ…喜べるものか。
兵士は俯き、吐き捨てるように言い放った。
酒を飲み、美味いものを食べ、いい気になっていた人々は顔をしかめた。
あんな愚かな王は死んで当たり前だ。なぜそんなに感傷的になるのか。
我らが王を、そんな風に愚かだと言うのは城下の者達だけだ。城の者に、離れた町や村の者達は嘆き悲しんでいる。なぜ…こんな…。
兵士は涙をこらえきれず、とうとうしゃがみこんだ。手紙を皆の前で読んだ若い兵士だった。
どういうことか。
人々がざわめいている中、また一つ酒が広場に運ばれてきた。
王様に…王様に頼まれて…お酒を…持ってまいりました…。
幼い兄弟が、体の小さなロバに荷馬車をひかせて酒を持ってきた。
若い男達が酒を降ろし、女達は兄弟を労った。
王様は…王様に会えますか。
兄が一人の女に言った。
おうさまに、ありがとうって言いにきたの。おにいちゃんといっしょに。
弟が兄にしがみつきながら目を輝かせて言った。
幼い兄弟に屈託無く聞かれた女はたじろいだ。城下の暮らしは生きるのに不自由はしなかったが、すごく幸せだとは言えなかった。人間は貪欲になるものだ。もっと娯楽が欲しい。もっと。でも国に税をはらわなきゃならない。なぜ。
城下のもの達はみなそう思い、暮らしていた。
それがどうだろう、兄弟たちは、とても笑顔だ。どこから来たのかと聞けば、名前も知らない辺境の村からだった。なぜ、そんなに幸せそうなのか。
どうして、王様に、ありがとうなの、?
女は震える声を抑えて兄弟に尋ねた。
聞かれた兄弟は、きょとんとした後、顔を綻ばせた。
村にお医者様が来てくれた。ずっと寝込んでたお母さんが動けるようになった。
平らな道ができたから馬車も使えるようになった。
王様が注文を下さるから飢えて死ぬ人が減った。
だから、おうさまにありがとうって言いたいんだ。
兄弟は女に、人々に自慢そうに王様の話をした。
ねぇ、王様はどこにいるの?
人々は驚きで目を丸くして、体が動かせないでいた。
王様はね、亡くなられたんだよ。
女は、兄弟に告げた。
なんで
おうさま…死んじゃったの…?
なんでみんな黒い服じゃないの?
なんで
兄弟に聞かれて、答えられない人々。
見かねた兵士達が兄弟を抱き上げ、城へ連れて行った。遠方から来たもの達はみな城に泊めるようにというのも王様からの言葉だった。おそらく、何を言ってるのかと詰め寄られるのを恐れたのだろう。
兵士が去った広場。人々は動き出した。興醒めだと飲み直すもの、呆然とそこに立ち竦むもの、様々な者がいた。
そんな中、一人の若者が残っていた兵士にたずねた。
王様は、どんなことをしていたんだい。
その日、愚かと言われた王様は死に、賢王が歴史の上に誕生した。




