出会い
「その才能溢れた地球人はどこに行ったんですかねー。おじいさん?」
皮肉をたっぷり込めて聞いた。
いや、だってさこのおじいさん俺のことバカにしてるんだよ。それもかなり。コミ障な俺だってバカにされたら頭にだってくる。だから皮肉を込めるくらい許されるよね。と、自分で勝手に納得する。
おじいさんは自分の長い白髪を撫でながら、やれやれとばかりに溜息をつく。
「せっかくの異世界だから旅をするといってどこかに行ったわい。まぁ、あやつは強い魔力を持っておったから止めはしなかったがの」
うんあれだな。いちいち反応がうざいわ、このおじいさん。もう心の中でお前の事はクソジィと呼ばせてもらう。怖くて絶対に口には出せないが。
「お前さんは弱いから旅なんてできんぞ?さっきみたいに魔物に殺されてバイバイじゃ」
あの熊もどきはファンタジー世界にありがちな魔物だったわけね。後、あんまり弱い弱い言わないでくれませんかね? 地味に傷つくんだけど。ほんと心が痛い。痛いわー。せっかく魔法が主流の異世界に来たとうのに弱いとか。前の世界と扱い変わって無いんだけど。チーレムしたかった。美少女と恋がしたかった。
そんなことを考えていると、カサカサと地面に長く生えた雑草が音を立てた。音のするほうを見ると、人がこちらに向かってくるのがわかった。
「見つけましたよ、理事長」
その人を見て思わず息を飲んだ。同時に心で雄叫びをあげた。背丈は大体160くらいで、髪は長く美しく、色は綺麗なブロンド。顔はまるで造形物かと思えるかのように整い、肌は白く透き通っている。
きました、ついに俺時代がきました。
「うほっ、相変わらず美しいのぅレイナちゃんは。儂と結婚してください」
クソジィのふざけた言葉にレイナと呼ばれた少女は冷めた目つきで射る。
「いやです。そんなことよりも早く学園に戻ってきてください。明日大事な会議があるんですよ、ジラー理事長」
「わかっておるわい」
不貞腐れた顔で答えるクソジィ。
学園ってあれか? よくある魔法学校のことですよね。通いたいね。状況から察するにおそらくこの美少女も学園に通っているとみえる。なら、俺も通いたいわ。異世界マジでレベル高すぎ。コミ障な俺は話し掛けることすらできないが。
レイナはクソジィの言葉に納得すると、こちらに顔を向け指を差す。
「で、そこの人は誰なんですか?」
「ここで拾ったわい」
こいつ。俺はそこらへんにいる小動物じゃなんだぞ。立派な人間様なんだけど。その扱いは酷すぎるんじゃないの? しかも美少女の前で。
「そうですか」
俺に興味がないのかすぐにクソジィの方に顔を向けた。うん、これが現実だよね。きっとよくあるハーレム小説とかだったらここで惚れられるはずなんだけど、やっぱり異世界に来ても何も変わらないわ。
まぁとりあえず、心の中で彼女のことをレイナと呼ばせてもらうことにしましょう。なんか胸がどきどきしてきた。もしかしてこれが恋!?
「レイナ探したよ」
突然後ろから声が聞こえてきた。声からして若い男だとわかった。
「何しに来たのよ」
顔をしかめたレイナの声音は怒りをあらわにしていた。その人物をよく見てみると、背丈は170以上、すらっとした体型で男にしては長く綺麗な青髪を後ろで縛っている。
「僕も一緒に着いて行くって言ったじゃないか」
「誰がいいって言ったのよ。私はあんたが嫌いなの」
レイナさんご立腹ですね。俺もご立腹だけどね。だってこいつすんげぇイケメンだもん。俺はそういうの本当に求めて無いんだけど。ほんとにいらない。イケメンいらない。
そんなことを思っているとイケメンはレイナに手を両手で包み込む。
「さぁ、理事長も見つかったことだし学園に帰ろうか」
「触らないで」
レイナはイケメンの手を払い、鋭い眼光を向ける。さすがに今のはキモかった。いくらイケメンでも今のはキモい。それに、さっきからクソジィはにやつかせてこの状況を楽しんでるし。しかも、なんかこっち見てるし。
「お前さん、あのクソイケメンに最大級の魔法をぶつけてやれ。儂は今すんごくイライラしておる。しかし、儂が手を出すわけにはいかんからの。頼んだぞぃ」
「はい?」
いやいや、魔法の使い方わからないから。いやだから。怖いから。だってあのイケメン強そうなんだもん。
「魔法はイメージじゃ。お前さんにできるかはわかんらんがの」
「くっ」
人に頼んでいるくせにすんげえ無責任だな、おい。お前がなんとかしろよ、ほんとに。しかもナチュラルにバカにされてるし。まぁいい。今回は言葉に乗せられてやるよ。怖いけど。イメージか……要するに妄想だろ。俺の得意分野だ。
イメージ、イメージ。ふと、頭に稲妻がよぎる。イメージをそのまま手の平に収縮。この一撃で人生逆転。
「くらえっ、クソイケメン!」
怖いので呟くような小さな声で言う。そして、手の平に集めた力をイケメン目掛けて投げつける。サッカーボールくらいのサイズの電撃が唸りあげイケメンに向かっていく。うおっ、マジか。できたじゃん、くたばれイケメン。
「ん!?」
イケメンは突然のことに少し驚く。しかし、素早く手の平から球体の炎を出し、俺が出したサンダーボルトに向けて放つ。
互いの魔法がぶつかり弾け散る。ふとイケメンの近くにいたレイナが気になり辺りを見渡すと、いつの間にか距離を取ってただじっと状況を見つめていた。
イケメンは軽く手で服を払い、こちらに足を向ける。
「なんだ貴様は」
「ひ!?」
あまりの鋭い眼光に思わず変な声が出てしまった。やばいよ、これ。どう考えても怒っていらっしゃるよイケメン君。まぁ、そりゃ全く知らない奴にいきなり攻撃されたら誰でも怒るよね。さぁ、どうするかなこの状況。