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チートが使えない異界の魔術師  作者: hshs
第1章 魔法の学園へ
3/6

異世界

 息が苦しい。走りながら必死に空気を吸い込む。そして吐く。なんでこんなことになっているかなんて今はどうだっていい。今は走らないといけない。あの熊もどきから逃げ切らないと間違いなく殺される。

 

 そう思いつつ走りながら後ろを振り返ってみると熊もどきが巨体を揺らし走ってるおかげで森が破壊され、周りが見渡しやすくなっていた。


「ハァハァ、今はそんなことどうだっていいか。このままじゃ絶対に殺されるし」


 体力はもうすでに限界を迎えていた。まず、運動がそんなに得意じゃない俺がこんなに長い間走り続けていられるわけがない。


「ハァハァ、もう無理」


 結局淡々と16年生き続けただけのくだらない人生だった。俺は何をやってもパッとしなかった。なのにこの世の神様はさらに追い打ちをかけるかのように今の状態を作り出した。


 俺が何をしたっていうんだよ。なんでこんなことに……。せめて来世では華やか人生を送らせてほしいよ、マシで。


 もう諦め死を覚悟したその時、ドンっという音がした。気になって後ろを振り返ると、今さっきまで追いかけてきていた熊もどきが仰向けになって倒れていた。


「なんじゃ、また男か。ついてないのぅ儂も」


 声のしたほうを目を凝らして見てみると仰向けになっている熊もどきの後ろから、コスプレヤーなどが着そうなローブを身につけ、長い白髪を背中に垂らしたおじいさんがこちらに歩いてくるのが見えた。

 

 見た目からして年齢は大体70から80の間くらいだと推測できる。まさかこのおじいさんが熊もどきを倒したのか?


「見たところ、お前さんも異世界からきたみたいだのぅ。うん?だが異世界の人間のわりには魔力が少ないの」


 正面まできたおじいさんはそう呟くように言う。俺はおじいさんが口に出した魔力という言葉に引っかかった。魔力ってあれか?ゲーム、漫画、アニメとかでよく出てくる魔法を使うための力のことか?でもここはリアルだ。そんなことあるはずがない、と思う。


「お前さんも地球の日本というところからやって来たのじゃろ? 三日前にもお前さんと同じ髪の色をした少年とここで会ったからのぅ。そいつがそう言っておったわ。黒髪など見ないからもしやと思ったのじゃが、違うかの?」


 髪の色? 地球? 日本? まるでここが地球とは別の世界であるかのように言うおじいさんに俺は言葉を失った。すると、おじいさんは小さくため息をし言葉を続ける。


「やはりそうか。まぁ混乱するのも無理ないのぅ」


「おじいさん、ここはどこなんですか?」


 俺は疑問をそのままぶつけた。このおじいさんの言っていることが本当なら、もしかしたら変えられるかもしれない。自分の人生を。


「ここはアスラン大陸だの。おそらくお前さんに言ってもわからないだろがの。しかしお前さん、本当に弱っちいのぅ。三日前の少年はもっと強い魔力を持っていて才能に溢れておったわい」


 もちろんおじいさんが言った大陸の名前など知るはずがない。これでここが異世界ということは確定した。原因はあのメールか?まぁそんなこと考えてもわかるはずないか。


 それにしても異世界かぁ、現実味がまるでないな。まぁ向こうの世界に未練があるわけじゃないから全然ウェリカムなんだけど。何も持たない自分を変えられるチャンスかもしれないしな……。


 ていうことは熊もどきもこのおじいさんが魔法を使って倒したのだろう。それよりも気になったなのが、おじいさんが発した「弱っちい」という言葉だ。


 普通、異世界転移したら何かしらの恩恵でチーレムできるんじゃないの? 俺弱いの?人生逆転出来ないの? 美少女いないの? しかも、三日前にこの世界にきたという日本人は才能に溢れているだと?


 俺はどこに行っても不遇な自分に少しショックを受けてしまった。

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