六月は花嫁の季節10[Le premier episode]
その頃学校では…。
蟹江と小鳥遊、俺の三人でリサーチと称する手芸店巡りを敢行している頃、学校の部室では蘇鉄、梶を中心に小物とドレスのデザイン計画を立て始めていた。
「このお姫様型ホワイトドレスはパニエが要るわね」
「アンがパニエとロングビスチェを撮ってきたよ。結構するね、かのちゃん」
「明口は馬鹿だからね、服飾が専門の癖に服の値段が全く分かっていないのよ」
「MIYUKIかトーホーの片穴パールで瞬殺カフリンクスか何かでその辺の予算を捻出しよう。それに揃えりゃアクセ類が安く上げられるからここから予算が沸いてくる」
蘇鉄は周りが思う以上にアイディアマンだ。彼の思いつきが営業部に利益を齎している。そんな騒がしい中、藤原白菊がコントレックスのボトルをすっと持ち上げた。藤原は“白菊”なんて純和風な名前の癖に、実はエレクトロマニアだ。そして藤原のmac――通称“藤原の白いノート”にはパターンだとかレシピだとか、どこから集めてきたのか知らないが、宝の山のように詰まっている。明口の予算表とわぁわぁ言う営業部員の言葉を聖徳太子のようにを藤原は黙ーって聴き取り、営業部が作るべき商品の雛型を黙ーって探し出すのだ。
コントレックスを消費しながら藤原は少しだけキーを叩く。数秒後、プリンタから型紙やらレシピやらが排出されてくる。それを拾っては梶が計算機とLet'sNoteを叩いて予算を組む。それとは別に梧桐が学校の無線LANのPCを良いように使ってセール情報を掻き集める。無論、梶のノートに蘇鉄と板垣が取り付いてメールを整理しながら協議を続けていく、それを聞き取りながらだ。
「ホリー、浅草橋とかでセールやってないの」
「どうにも……ちょっと遅いんだよねぇ」
ちっ、と梶が端なく舌打ち。
「あーあ、世間のボーナスがでるのを待ってセールか。明口にもこういうセンスを身につけさせたいわ」
そりゃ無理ってもんさ、梶の姐御。大体、教員なんて商売に安穏と10年近く浸かってきた女に資本主義とか経済観念が今更芽生えるわけが無かろうが。そういう明口に賢明な蟹江が惚れ込んだのか、やっぱり解らない(ループ)。
「仮縫い用のシーチングが来ない」
「板垣、蟹江にメールだ」
俺の携帯に飛ばすと写真の妨げになる。俺の携帯は吐き出し専用、蟹江の携帯は受け取り専用。
がつがつ彼らは作ります。