08
扉の向こうから出てきたのは、巨体の女ではなく――細身の美少女だった。
「えっ?」
「あっ」
瞬間目が合うと、二人揃って小さく声をあげた。
間違いない。あの娘だ。
ガチャッ
「ちょ、待て」
なぜか扉を閉められそうになり、あわてて手を出す。
「痛っっ!」
閉まる扉に巻き込まれ、そのまま手を挟まれてしまった。しかし、彼女は閉めるのをやめようとせず、更に力を加えてくる。
「いだい、いだい!ま、待て、話せば分かる!」
畜生、今日は5月15日じゃないぞ。扉の向こうの陸軍将校は何を考えているのだろうか。
一分間ほど痛みに耐えただろうか。彼女はようやく俺の手が挟まっているのに気づいたようだ。
「あ、ごめん……」
再びゆっくりとドアが開かれ、俺の手が解放される。
挟まれてしまった部分は見事に赤くなり、所々内出血もしている。
「大丈夫?」
こちらを心配してくる。俺の手を挟んだのは当人なのだが。
「ああ、大丈夫――だと思う」
正直、痛すぎてもう手の感覚があまりない。
「手当てするから、とりあえず入って」
「え?あ、ああ」
招かれてしまった。しかし、デブスは居ないのだろうか。確か風邪ということだったが。
そして何よりも、どうしてこの娘がこの家にいるのかが気になる。確かにこの近くにすんでいると藺生話だったが……。
「お邪魔……します」
「どうぞー」
入ってまっすぐのところにリビングがあり、そこにキッチンもついている。左にも廊下がのびていたが、そちらにはバス、トイレともうひとつ部屋があるようだ。
リビングのソファーに座るよう言い、彼女は薬箱を取りに行った。
片付いていて、清潔感のある落ち着いた部屋である。
戻ってきた彼女は、湿布を取りだし、俺の手に貼り付けた。
「……っ!」
感覚を取り戻してきた手に再び鈍痛が走る。
その後、丁寧にテーピングをしてくれた。スポーツをやっていたのだろうか、それとも看護の勉強をしているのだろうか。とても手際がよかった。
「はい、おしまい。でも後でちゃんと病院いってね?」
「ああ、わかった」
頷き、本題にはいる。
「ここは……原栞の部屋だよな?」
「う、うん」
なぜか目を逸らされた。
「君はあいつの……家族?」
「う、うん、そう。えーと姉妹なの、うん」
なぜかキョドっている。まあ、あんなのと姉妹だなんて知られたらな……。
それにしてもあいつとこの娘が同じ遺伝子を受け継いでいるとは信じられない。
「じゃ、コレ。プリント、渡しといてくれないかな」
担任から渡されたブツを取りだし、渡す。
「うん、わかった、渡しとく」
彼女が受け取ったのを確認し、立ち上がる。
「じゃ、長居もなんだし、俺はこれで」
「あ、うん、その、ごめんね」
もう一度大丈夫と返し、部屋を発った。
このときは、彼女の不審な挙動など気にも止めていなかった。
最近忙しかったので、少し間が空いてしまいました。
まあ、読んでる人いないと思いますがw