07
同日、午後のホームルームも終了し、さあ帰ろうか――ちなみに俺は帰宅部だ――というとき。
「おーい、柊ー」
クラスの担任に呼び止められた。
「はい?」
こいつが俺に話しかけるのも珍しい。この教師は弄って面白いやつにしか話しかけないからな。
「今日原休んだろ?重要なプリントがあるから、届けてくれ」
おい、そういうのは普通あんたがいくんじゃないのか。
「俺はめんどくさいし、お前の家が近い」
なんという自己中。マリーアントワネットももう少し自重したろうよ。
「えーと、住所はな……」
おい、生徒の個人情報をそんな簡単に公開していいのか。曲がりなりにも女子だぞ。
ザルのレベルじゃない。もはや中空だ。
「わかりましたよ……」
はぁ……。
「よしっ、頼んだぞー」
用が終わったとばかりにさっさと去っていく。
――この人は本当に教員免許を持っているのだろうか。真剣に考えてしまう。
と、言うわけで、帰り道。担任に渡された住所の場所を探してあるいている。
どうやら本当に俺の家の近くだったようである。
十字路を自分の家とは違う方向に曲がる。
その後、二分ほど歩くと、目的の場所についた。
四階建てのマンションである。栞の部屋は302号室らしい。
エレベーターを使うのもなんなので、階段で三階まで上がる――ちなみにエントランスにキーロックはなかった――。
「ふぅ」
部屋の前まで来て一息。あとはプリントを渡してさっさと帰るだけである。
チャイムのボタンを押すと、ピンポーンと馴染み深い音が響き、あとに続いて声が聞こえた。
「はーい」
?、デブスの声ではない。家族か誰かだろうか。
しかしどこかで聞いたことのある声である――
そんなことを考えていると、ゆっくりとドアが開かれた。