04
あのX-DAYから一週間がたった、ある日の昼休み。
相変わらずボール女、もとい、栞はクラスに馴染むことはなかった。
それどころか、
「あー、サッカーしてえけどボールがねえなー」
「おい、ボールならここにあるぞw」
「馬鹿、俺がつぶれんだろw」
といった具合に、からかいの対象になっている。
もっとも、当の本人は気にもとめずに読書に浸っているのだが。
読んでいるのは意外にも推理小説のようだ。
というか目は見えているのか?
「おーい、柊ー。飯食ったならナンパしにいこうぜ、ナンパ」
智樹が教室に入ってくる。開口一番それかよ。
「お前は幸せそうで何よりだな」
その幸せをこいつにも分けてやったらどうだ?
ノーベル平和賞とれるかもしれんぞ。
「俺の幸せは俺のものだ!たとえ柊にも分ける気はない!」
俺は別にほしくないがな。
その日の夜。
先月買った本をすべて読み終えてしまったので、新しいのを買いに本屋にやって来た。
しかし、そこには
「あ、柊くんだー」
先週俺とぶつかった美少女がいた。
また会ったね、と微笑む彼女。
て、だから、なんで俺の名前を知ってるんだよ。
「まぁまぁ、そんなことは気にしないの」
ポニーテールをゆらしてそう答えた。
手に持っているのは推理小説のようだ。
「柊くんも買い物?」
「ああ、うん」
「へー、結構本読むんだ?」
「まあ、ね」
……なんだろう、彼女とはどこかであっていた気がする。いや、確かにこの前が初対面のはずで、それは自信を持って言えるのだが。
それとは別に、どこかで会っているような、そんな気がしている。
別の世界線の記憶だろうか。
「じゃ、私そろそろいくね」
「あ、うん」
「じゃーねー」
まだ会うのは二回目――のはずなのに、ずいぶんとフレンドリーな娘である。
というか、また名前を聞き忘れた。
しかし、なぜかすぐにまた出会えるような、そんな気がしていた。