03
「県外から来た、原栞だー。仲良くしてやれー」
……別に期待していたわけではないが、とんだ地雷だった。
ふくよか、という表現はぬるいくらいだ。正直、ボールが入ってきたと思った。
「は、原((ハァハァ))し、栞((フゥフゥ))です。よろしく((フシュー))」
スゲー苦しそう。
ボサボサの茶髪を後ろでポニーテールにしている。目は細すぎて見えているかも怪しい
予想の斜め上を――二次関数のような急角度で――行く人物の登場に、クラスは騒然とした。
「お前の席は……そこの空いてるとこな」
おい、俺の隣じゃねえか。道理で机が増えてるわけだ。
ボール女は指定された席まで移動し、椅子に座った。
ミシッ
……今の音はスルーすべきだろうか。
「よ、よろしく((ハァハァ))」
「………………」
だけど、このときの俺には思いもよらなかった。この肉団子との出会いが、運命の出会いだとは。
夜、俺は飯を買いに、最寄りのコンビニまで来ていた。
「ふう、今日は厄日かな……」
彼女には悪いが、あれと隣になって喜ぶものはそうそういまい。差別はアインシュタインに怒られそうだが、俺も男である。御博士も分かってくれるだろう。
そんなことを考えていたから――もっとも、暗かったというのもあるだろうが――道の角から人影が現れるのに気づかなかった。
「あっ」
「きゃっ」
見事にぶつかり、お互い地面に尻餅をつく。
「ごめん、大丈夫?」
急いで立ち上がり、手を差しのべる。小柄な女の子である。艶のある茶髪のポニーテール、大きな二重まぶたが印象に残る、正に美少女だった。
「あ、ありがとう」
彼女も立ち上がる。
「あれ、柊くん?」
「え?」
今俺の名前を呼んだか?
「俺たち会ったことって……」
否、ないはずだ。
「え?あ、そっか。ごめん、気にしないで」
いや気になるけど。
「じゃ、さよならっ」
手を降り駆けていく美少女。
俺はただ呆然とその後ろ姿を見送った。
「ふう」
前言撤回
今日もいい日である。