02
俺の通う某県立北高校は、これと言って特徴のない学校だ。
特段、頭がいいわけでもなく、かといって部活が強いわけでもない。ごく普通の、文字通り普通高校。
そんな平凡な学校に通いつめ、はや一年と2ヶ月。その間、大きな事件が起こることも、突然デスゲームに巻き込まれることも、宇宙人未来人超能力者が現れるともなく、のほほんと過ごす毎日。
いやはや、平和が一番である。マザーテレサもさぞ喜んでいることだろう。
せっかく早く家を出ているのに、智樹に絡まれると毎回遅刻ギリギリになってしまう。
教室に入ると、もうほとんどの生徒が来ていた。
どうやら皆、例の転校生の話題――そんなに気になるかねぇ――で持ちきりのようだ。
「あっ、おはよっ!ひーくん、トモ」
こちらに気づいた一人がやってくる
「よ、桜」
この巻き毛の少女は笹山桜。俺の、まあ、幼なじみだ。
「ねえ、聞いた?転校生の話」
「ああ。こいつからな」
親指で智樹を指す。
「まあ、俺はあまり興味ないんだけどな」
「あはっ、今日もドライだね、ひーくんは」
桜がボブカットをゆらしながら笑う。
と、ここで予令が鳴った。
「おっと」
急いで席につき、一限目の準備をしていると、前の扉から壮年の男性が入ってくる。
「うぃーす」
彼がこのクラスの担任である。細身の体格に短く切り揃えた黒髪が印象的だ。
「よーし、ホームルーム始めっぞー」
しかしこの軽い口調はどうにかならないのだろうか。それなりに歳は食っているはずだが、白髪一本ない黒髪とも相まって、十歳は若く見える。
「もう知ってるやつもいるだろうが、このクラスに転校生が来ている。喜べ男子、女子だぞー」
所々で歓声が上がっている。どうやら智樹の予想が当たったようだ――といっても確率は二分の一なのだが。
「うっし、入ってこーい」
前の扉が静かに開かれる。
そこから入ってきた人物に、誰もが息を飲んだ。