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雑用係の下克上~百年に一人の逸材……をぶん殴る為に冒険者になりましたけど、何か?~  作者: 吉良千尋


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16話 新しい挑戦

 七日後、アンドレイさんは言った通り双剣を造り待っていてくれた。

 僕はそれを受け取り代金を払うと、すぐに帰って箱にしまっておいた。


 勿論使うんだけど、なんとなく初めて使うのに上層のモンスターは嫌だったから。

 中層に行って、その時に使いたい。


 なんて思いながらギルドに顔を出すと、受付にはアムさんの姿。


「あ、クロノ! この間は本当にありがとう。これ、その、お礼というか……ほら、あんた防具傷だらけだったから」


「え、そんな……悪いですよアムさん」


 先日なんとか助ける事が出来たアムさんは、わざわざ破剣ギルドまで来て改めてお礼を言ってくれた。

 それだけじゃなく、僕に合う装備を用意してくれたみたい。


 アムさんは律儀な人なんだなぁ。


 ただ、気持ちは嬉しいけれど、そこまでしてもらうのはちょっと悪い気がする。


 銀を基調とし赤い装飾が施された、いかにも高級そうな肩当てと胸当て。


 あまりにも受け取らない僕を見て、アムさんはクスッとと笑う。


「クロノは命の恩人なの。だから遠慮なんていらないわ。それに、あなたの為にヘパイストスのカンさんが造ってくれたのよ?」


 アンドレイさんが言っていた信頼出来る鍛冶屋さんか。ますます貰いにくくなってしまった。

 というか、本当に高級品じゃないか。


 でもここまで言ってくれて断るのも失礼だし、ありがたく受け取ろうかな。


 めっちゃお金浮いたラッキー!!!!!!!


「すみません、それじゃあありがたく使わせてもらいます。アムさん、ありがとうございます」


「それはこっちのセリフよ。その、もう……あんまり無茶しないでね……?」


 もじもじしながら上目遣い。うーん、悔しいけど容姿が整ってる人のこれは破壊力抜群だ。


 しかし、おかしいな。記憶の中のアムさんはもっとギャーギャーやかましい人だったのに、なんでこんなしおらしいんだろう。


「え、あ、はい。頑張ります」


「それじゃあ私は行くわ。本当にありがとう。ま、またね」


 そう言うとタタタッと逃げるように去ってしまった。


「アムさん可愛いな。髪も綺麗で細くてスタイルもいいし、えっちなふとももが……むっはー!」


「……エリック、僕が言ったみたいに言うの辞めてくれる?」


 僕の背に隠れながら、エリックが言っただけで断じて僕ではない。


「それにしても、良い子だな。防具欲しかったんだろ? ちょうど良かったじゃん」


 なんで何もなかったふうに話始められるのか。僕は時々エリックがわからなくなる。キチガイなのかもしれない。


「それはうん、正直凄く助かるよ」


「で、行くんだろ?」


 何処に、なんて言う必要もないよね。


「うん、そのつもりだよ。今日は中層に行けたらなって思ってるんだ」


 この間エリックと一緒に憂さ晴らしに潜った時は9層まで足を運んだ。

 変異種の事件があったからなのかは分からないけれど、僕のオーラは前より増え、間違いなく質が良くなった。


 だから中層にも行ってみようかなと。


「中層か……なら俺も一緒に行くわ。余計なお世話かもしれねーけど、上層と中層は別世界だ。最初くらいは知ってるやつがいた方がいいと思うぜ?」


「そうかな。じゃあ一緒に行こう。ちょっと僕、調べ物があるから夕方以降でもいいかな」


「おう! ギルドにいると思うから、準備できたら声かけてくれ!」




 一緒に中層へ行く約束を取り付け、エリックと別れた僕はいつも通りウィズダムの図書館へと向かう。

 トレーニングと図書館と迷宮、最近睡眠以外はほとんどこの三つな気がする。


 雑用係だった頃からすると考えられない。あれはあれで落ち着くし嫌いじゃないけどね。


「うしし、また来たいのかいクロノ」


「サクヤさん、こんにちは。今日中層に行くんですけど何か目を通していた方がいい本ってありますか」


 変な笑い方をするサクヤさんは、この図書館の司書であり僕に合う本を見繕ってくれる。

 水色の髪と眼鏡をかけていて、いかにも頭が良さそうな雰囲気がある。


「もう中層に行くんだね。クロノ、君は地味なのに中々センスがあるんじゃない?」


 地味なのには余計な気がするよサクヤさん。


「どうでしょう。そうだといいんですけど」


「それじゃあ、まずはこの三冊かな」


 既に用意していたのか、中層モンスター図鑑、危険なトラップ大全、迷宮の悪夢の三冊が渡される。

 どれも役に立ちそうだけど、どうしてこの本を用意出来ていたんだろう。


「特に迷宮の悪夢はしっかり目を通しておくことをすすめるよ。これは私の勘でしかないけど、クロノは無茶をしそうな気がするからね。うしし」


「そ、そそそんな事しませんよ」


 している自覚もする自信もある。迷宮病とは別で、これは僕の歪んだ癖だと思う。


「やれやれ、全く君ってやつは。冒険者で一番大切なのが何か知ってるかい?」


「うーん……判断能力、ですかね」


「それもそうだけど、一番は生き汚さだぜ。どんな事が起こっても、最後に生きてりゃわた……冒険者の勝ちなんだ」


「はい。サクヤさん、ありがとうございます」


 生き汚さか。これは肝に銘じておこう。

 しかし、サクヤさんは一体何を言いかけたんだろうか。




 ◆



 サクヤさんがオススメしてくれた本に目を通し終えると、すっかり閉館の時間になってしまった。

 それからギルドでエリックに声をかけ、中層目指して迷宮に足を運んだ。


 前回の戦いが戦いだったので、十層ですらどこか物足りなさを感じる。


 目の前には十一層、つまり中層へと続く通路が口を開いて待っていた。


「お前本当に強くなったな。ここまで俺歩いてただけだぞ」


「うん、なんか変異種の時より身体がよく動くんだよね」


 死地を乗り越えるとオーラが増す、なんて噂は案外本当なのかもしれない。


「まあでも、こっからは俺もちゃんとやるよ。中層は俺程度が手を抜いてどうこう出来る場所じゃないからな」


「やっぱり全然違うの?」


「別次元だな。強さも数も、だから慎重に行こうぜ」


 いつになく真剣な表情のエリックを見ると、こちらまで緊張してくる。


 そういえばエリックのパーティは機能してるのかな。いや、今はいいか。


「うん、危なくなったらすぐ帰ろうね」


 とか何とか言いつつ、僕は結構楽しみだったりする。

 今はまだ量産品の双剣を使っているけど、防具はアムさんからいただいた高級品だ。

 まだ攻撃がかすってもないから、なんとも言えないけど、ほとんど重さを感じない。


 よし、行こう。中層に。

 と、一歩目を踏み入れた時、エリックが「あっ」と声をあげる。


 出鼻をくじかれた気分だ。


「ど、どうしたの? なにか忘れもの?」


 いやそんなはずは無い。迷宮に来る前に二人で確認したもの。

 装備にポーションとかその他もろもろ。


「いや……いいか。どうせ後でわかる事だし。行こうぜ」


「え、あ、うん」


 そういう感じが一番気になるんだよね。後でわかるなら今わかったっていいじゃないか。

 スタスタ先に行っちゃうしさあ。


 僕はエリックについて行くように中層に足を踏み入れた。





「ここが中層……あんまり変わらないね」


 変化といえば壁の色が土色から赤黒くなってくらいか。


「まぁ迷宮たって、馬鹿でかい地下洞窟みたいなもんだからな。その内このシンプルな洞窟が恋しくなるぜきっと。それより、ちゃんと中層の知識は整えてきたんだよな?」


「うん、大丈夫だよ」


 サクヤさんが本を選んでくれたから。モンスターもトラップも一通り頭に入ってる。


 迷宮の悪夢という本は、著者の自伝だった。元冒険者で中層から下層に落ちるトラップにはまり、その後は地獄のような展開が続いていた。


 ああならないように、僕らも気を付けないと。


 ここはもう、初心者御用達の上層じゃないんだから。


 待っててよラインハルト君。僕は君に、すぐ追いつくからさ。



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