おもいだした。
「やすい」人だった私の忘れることのできない【無自覚な会話】。
とくに職場で、
手が塞がっている時に限って、
気安く、
「これ、お願いしてもいいですか?
Aさんなら早いと思って」
「急で申し訳ないんですけど、
他の人だとちょっと心配で」
「断ってもいいですよ?
あ、でも困るの私なんですけどね」
「助かります~、ほんと。
この件、Aさんに振っといて正解でした」
「前も似たようなの、
うまく回してくれましたよね」
「いや、責任者ってほどじゃないです。
名義は私でいいんで、実務だけお願いできれば」
「今回はイレギュラーなので。
次はちゃんと調整します」
「無理してる感じしないから、
つい頼っちゃうんですよね」
「嫌なら言ってくださいよ。
言わないってことは、大丈夫ってことですよね?」
「気遣いができる人って、
やっぱり信頼できるじゃないですか」
「揉めないのが一番ですし」
「ここで空気悪くするのも、
大人じゃないですもんね」
「感情的にならないところ、
本当に尊敬してます」
「だからこそお願いしたいっていうか」
「今回だけ、今回だけですから」
「これ終わったら、
ゆっくり休んでください」
「……え? まだ終わってない?
あ、そっか。じゃあ、もう少しだけ」
「助かりました!」
*
いつかの、
休憩のとき、
複数人から口々に、
「え、なんで急に距離取ったんですか?」
「そんなつもりじゃなかったんですけど」
「誤解ですよ」
「みんな、Aさんのこと評価してますよ?」
「でも、黙ってたじゃないですか」
「言ってくれれば、考えましたのに」
「急に変わるの、正直ちょっと困ります」
「前は、もっとやりやすかったのに」
フゥー……
ここでムカつくのは、
選んでいるのに「頼ってる」顔
断る自由を与えている“体裁”
沈黙を同意にすり替える詭弁
いや、
「全て詭弁」。
更にいうなら、
「大人」「空気」を盾にする暴力
「前は、もっとやりやすかったのに」
ーーそう。
「やりやすかったのは、私が黙ってただけです」




