第7話 必要とされる場所
商隊の仕事を終えた翌日、俺は再びギルドに呼ばれた。
受付の女性が、どこか改まった様子で書類を差し出す。
「昨日の件ですが……
正式に報告が上がっています」
「問題でも?」
「いえ。逆です」
彼女は少しだけ微笑んだ。
「ここ最近、この街道での護衛依頼は
必ず何かしらの被害が出ていました。
それが、あなたが同行した便だけ“完全無事故”だったそうです」
予想はしていた。
だが、こうして言葉にされると、胸の奥が静かに熱くなる。
「商会側から、継続契約の申し出があります。
しかも、支援術師としてはかなり良い条件です」
提示された内容を見て、俺は一瞬だけ目を見開いた。
報酬は、勇者パーティ時代の倍近い。
拘束時間も短い。
何より――
「……仕事内容が、明確だな」
「はい」
受付嬢は頷く。
「索敵、進路判断、危険予測。
“戦わないための支援”を期待している、と」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥に溜まっていた澱が、少しずつ溶けていくのを感じた。
理解されている。
俺が、何をしてきたのか。
商会の応接室で、昨日の責任者と向かい合った。
「改めて言わせてほしい」
男は深く頭を下げる。
「君のおかげで、
我々は“損失ゼロ”という結果を得られた」
「……仕事をしただけだ」
「それができる人間が、驚くほど少ない」
男ははっきり言った。
「正直に言おう。
君は、前線で戦う勇者よりも、
我々にとって重要な存在だ」
その言葉は、否定しようのない事実として胸に落ちた。
比較されても、嫌な気はしなかった。
初めて、正当な場所で評価された気がしたからだ。
「どうだろう?」
男が続ける。
「専属の支援術師として、
我々の商隊を見てほしい」
俺は、少しだけ考えた。
勇者パーティを追放された夜のことが、頭をよぎる。
――お前はいらない。
あの言葉は、確かに俺を切り捨てた。
だが同時に、
俺を“必要としない場所”から解放したのかもしれない。
「……分かった」
俺は、はっきりと答えた。
「引き受けよう」
男は満足そうに頷いた。
「歓迎するよ、アルト。
君は、ここに必要な人間だ」
その夜、宿の部屋で一人、天井を見上げる。
不思議と、胸は静かだった。
怒りも、悔しさも、もう前ほど強くない。
代わりにあるのは――
確かな実感。
俺は、役立たずじゃない。
ただ、場所を間違えていただけだ。
そして同じ頃。
勇者パーティは、
次の依頼で「想定外の損耗」を出し、
王国からの評価を一段落とされていた。
まだ小さな差。
だが、確実に広がり始めている。
俺と、彼らとの距離は。
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