第6話 何かが、噛み合わない
アルトがいなくなってから、最初の依頼だった。
「行くぞ。
今度は余計な口出しもない」
レオンはそう言って、ダンジョンへ踏み込んだ。
難度は低め。
以前なら、問題なく終わるはずの仕事だ。
だが――
「……妙に、敵が多くない?」
ミレイアが周囲を警戒しながら言う。
「気のせいだろ」
レオンは気にも留めない。
「多少増えたところで、俺たちなら問題ない」
戦闘は始まった。
剣は振るわれ、魔法が炸裂する。
個々の実力は、確かに高い。
それでも、違和感が消えなかった。
「っ、後ろ!」
ゴルドが叫んだときには、すでに遅かった。
死角からの奇襲。
以前なら、事前に察知できていたはずの動き。
「チッ……!」
ミレイアの魔法が間に合い、最悪の事態は免れた。
だが、被害は出た。
小さな傷。
消耗。
連携の乱れ。
それらが、確実に積み重なっていく。
「……こんなはずじゃ」
ミレイアが呟く。
「前は、もっと楽に進めてたのに」
レオンは一瞬だけ、言葉に詰まった。
だがすぐに、首を振る。
「アルトがいたから、楽だったわけじゃない。
俺たちが強かっただけだ」
そう言い切ったものの、
心のどこかで、同じ疑問が芽生えていた。
――本当に、そうか?
罠の発見が遅れる。
敵の増援に気づくのが一拍遅い。
進路判断に、迷いが生じる。
どれも致命的ではない。
だが、確実に「前とは違う」。
「一度、引くか?」
ゴルドが言った。
「消耗が想定より多い」
「……いや」
レオンは、少し強めに否定する。
「この程度で撤退してたら、
勇者パーティの名が廃る」
その言葉に、ミレイアは何も言えなかった。
結局、依頼は達成した。
だが、帰路につく三人の足取りは重い。
「……評価、落ちるかしら」
ミレイアの一言に、レオンは黙った。
アルトがいた頃、
「評価」という言葉を気にしたことはなかった。
失敗しなかったからだ。
その夜、レオンは一人で考え込んだ。
酒を飲みながら、
頭の片隅に浮かぶ、あの支援術師の背中を振り払おうとする。
「……関係ない」
そう呟いたが、
言葉には、どこか確信が欠けていた。
彼らはまだ知らない。
これが「偶然」ではなく、
失われた歯車の最初の兆候だということを。
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