第31話 判断役を集めるという発想
結論は、静かに決まった。
会議室を出たあと、
誰かが声高に宣言したわけではない。
だが、
流れは変わらない。
判断を、集める。
それが、
最も合理的で、
最も安心できる答えとして、
受け取られていった。
「正式な決定ではありません」
翌日、
最初に対応していた官僚が言った。
「ですが、
検討は進めます」
穏やかな口調だ。
否定ではない。
拒絶でもない。
だが――
止まらない宣言でもある。
「判断役を、
中央に集約する案です」
机の上に、
新しい資料が置かれる。
人員配置。
役割分担。
情報の流れ。
すべてが、
丁寧に整理されている。
善意の塊だ。
「各地の判断役を、
一定期間、中央に配置します」
「情報は一元化し、
最適解を返す」
「現場は、
その判断に従う」
誰も、
悪意を持っていない。
だから、
反論しづらい。
「……一つ、聞いていいですか」
俺は、資料から目を上げた。
「現場に、
判断役がいなくなる期間は?」
官僚は、
少し考えてから答える。
「最低でも、
二週間ほど」
短くない。
だが、
彼らにとっては
“許容範囲”だ。
「その間、
現場はどうする?」
「簡易判断は、
可能です」
「“簡易”ですね」
言葉を、
そのまま返す。
官僚は、
頷いた。
俺は、
それ以上言わなかった。
説得は、
もう十分だ。
これ以上続ければ、
感情論になる。
それは、
俺の役割じゃない。
数日後。
外縁部から、
一通の連絡が届いた。
「……判断役、
呼び出されました」
若い伝令役の声が、
少し沈んでいる。
理由は、明白だ。
“集める”ためだ。
「大丈夫です」
彼は、無理に笑った。
「すぐ戻りますし」
俺は、
何も言わなかった。
戻るかどうかは、
問題じゃない。
その間に、
何が起きるかだ。
地図を広げる。
外縁部の、
いくつもの点。
そこから、
判断が抜け落ちる。
線が、
細くなる。
いや――
途切れる。
判断役を集める。
それは、
間違った発想ではない。
だが、
時と場所を無視すると、
危険な発想になる。
俺は、
小さく息を吐いた。
ここから先は、
理屈では止まらない。
止まるとすれば――
現実だけだ。
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