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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第28話 名前の残らない仕事

 王都の記録は、いつも通りだった。


 外縁部に関する報告は、

 数行だけ。


直近期間における被害報告なし

特記事項なし


 それ以上でも、それ以下でもない。


 評価される理由も、

 追及される理由も、存在しない。


 俺は、その書類を机に置いた。


「……何も書くことがない、か」


 それは、

 最も理想的な状態だった。


 外縁部では、

 相変わらず地味な日々が続いている。


 商人は道を選び、

 見回りは違和感を共有し、

 集落同士が、必要な情報だけをやり取りする。


 誰かの命令を待つことはない。


 だが、

 勝手に動いているわけでもない。


 考えた上で、

 それぞれが判断している。


「アルトさん」


 若い伝令役が、声をかけてきた。


「最近、

 判断を仰がれること、

 減りましたね」


「そうだな」


 それでいい。


 それが、

 目指した形だ。


「……正直、

 少し寂しいです」


 彼は、照れたように言う。


 俺は、少し考えてから答えた。


「仕事がうまくいっている証拠だ」


 彼は、納得したように頷いた。


 中年兵が、焚き火の前で言った。


「王都から、

 誰も来なくなりましたな」


「問題が起きていないからだ」


「……ありがたい話です」


 笑い声が、静かに広がる。


 俺は、地図を広げる。


 線は、相変わらず少ない。


 だが、

 空白だった場所に、

 もう“恐れ”はない。


 そこにあるのは、

 考え続ける人間の気配だ。


 数日後。


 王都への帰路につく前、

 現地責任者が頭を下げた。


「……感謝の言葉を、

 どう言えばいいのか分かりません」


「言わなくていい」


 即答だった。


「ここで起きたことは、

 誰の功績でもない」


 彼は、少し困ったように笑う。


「ですが……

 忘れません」


 それで十分だ。


 王都へ戻る馬車の中。


 俺は、窓の外を眺めていた。


 この仕事は、

 記録に残らない。


 名前も、

 評価も、

 称賛もない。


 だが――

 人は、生きている。


 それだけで、

 価値はある。


 詰所に戻ると、

 机の上に一通の書簡が置かれていた。


 差出人は、

 王都の役人。


 内容は、簡潔だ。


外縁部における近時の安定化について

詳細な要因分析を求む


 俺は、しばらくそれを見つめ――

 ゆっくりと、紙を裏返した。


 分析は、できる。


 だが、

 その答えは一行では書けない。


 そして、

 書いた瞬間に、

 形を失うものでもある。


 俺は、新しい紙を取り出した。


 書き出しは、こうだ。


「判断は、

 個人の能力ではなく、

 共有されるべき“考え方”である」


 それが、

 次に伝えるべき内容だと、

 確信していた。


 名前の残らない仕事。


 評価されない成功。


 だが、

 その積み重ねが、

 世界を少しずつ変えていく。


 これは、

 英雄譚ではない。


 失敗を起こさなかった人間たちの物語だ。


 そして――

 その物語は、

 まだ続いていく。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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