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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第27話 失敗が起きなかった日

 兆候は、三日前から揃っていた。


 どれも、

 単体では“様子見”で終わるものだ。


夜間の獣の移動が、広範囲で増加


人の動線が、無意識に一方向へ偏る


公式街道外での、足跡の集中


 王都に報告すれば、

 返答はこうなるだろう。


経過観察

追加対応は不要


 それ自体は、間違いではない。


 だが――

 今回は、重なりすぎていた。


 俺は、判断を出さなかった。


 代わりに、

 各地から集まった情報を並べただけだ。


 外縁部の三つの集落。

 それぞれが、

 似た違和感を報告している。


「……これ、

 繋がってませんか?」


 最初に声を上げたのは、

 別の集落の見回り役だった。


「魔物の動きが、

 一点に集まってる気がします」


 誰かが、地図を指差す。


「ここだ」


 小さな谷。


 公式記録では、

 “通行量が少ない地域”。


 だが現実には、

 近道として使われ続けている場所。


 俺は、口を開かなかった。


 答えを言えば、

 それで終わってしまう。


「……もし、

 ここに出たら?」


 若い伝令役が、慎重に言う。


「周辺三集落に、

 一気に影響が出ます」


 中年兵が、続ける。


「被害が出てからじゃ、

 間に合わない」


 沈黙。


 全員が、同じ結論に近づいている。


「……動線を、変えよう」


 誰かが言った。


 命令ではない。

 提案だ。


「公式街道を使わず、

 今日だけ別ルートにする」


「夜間の移動は、

 一時的に止める」


「見回りを、

 谷の外周に回す」


 次々に、

 判断が“現場側から”出てくる。


 俺は、最後に一言だけ添えた。


「被害を出さない判断は、

 大抵“やりすぎ”に見える」


 全員が、頷いた。


 それでいい。


 結果――

 何も起きなかった。


 魔物は、

 谷に現れなかった。


 翌日、

 別方向で足跡が散り、

 活動が収束したことが確認された。


 もし、

 何もせずに待っていたら。


 被害は、

 確実に出ていただろう。


 だが、

 その仮定を証明する方法はない。


 記録に残るのは、

 いつも通りの一行。


異常なし

対応不要


 それだけだ。


 焚き火の前。


 誰かが、ぽつりと呟く。


「……俺たち、

 すごいことをやったんじゃ……」


 だが、

 すぐに首を振った。


「いや……

 何も起きてない」


 その通りだ。


 俺は、火を見つめながら考える。


 失敗が起きなかった日。


 それは、

 誰の功績でもない。


 だが、

 誰かが考え、

 誰かが動いた結果だ。


 そしてそれは、

 もう俺一人の仕事ではなかった。


 この日を境に、

 外縁部での被害は、

 目に見えて減っていく。


 だが、

 王都はそれを知らない。


 知らなくていい。


 判断は、

 中央に集めるものじゃない。


 現場に、

 根付かせるものだ。


 それが、

 俺がこの地で学んだ、

 一つの答えだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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