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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第25話 評価されない成功

 王都からの返答は、なかった。


 正確には、

 返す必要がなかったのだ。


 報告が上がっていない。

 被害も出ていない。

 緊急案件でもない。


 つまり――

 処理すべき事象が存在しない。


 中央の判断としては、正しい。


「……音沙汰、ありませんね」


 若い伝令役が、少し不安そうに言う。


「当たり前だ」


 俺は、淡々と答えた。


「何も起きていないんだから」


 それは、

 成功の証でもある。


 だが同時に、

 評価されない理由でもあった。


 集落では、

 いつも通りの生活が続いている。


 商人は往復し、

 家畜は増え、

 子どもは外で遊んでいる。


 変化がない。

 それが、変化だ。


「……昔は、

 こんな時期にも被害が出てました」


 現地責任者が、

 遠くを見るように言った。


「でも、

 今は静かですね」


「それでいい」


 俺は、短く答える。


 数日後。


 王都から別件の書簡が届いた。


《外縁部における直近の被害報告は確認されていない》

よって、追加対応は不要と判断する。


 それだけだ。


 感謝も、評価もない。


 だが、

 否定もされていない。


 若い伝令役が、

 悔しそうに拳を握る。


「……俺たち、

 ちゃんとやったのに」


 その言葉に、

 集まっていた者たちが黙り込む。


 俺は、少し考えてから言った。


「評価は、

 結果を“消す”仕事には向かない」


 視線が集まる。


「評価は、

 起きたことを数えるものだ」


 紙を一枚、机に置く。


「起きなかったことは、

 数えられない」


 中年兵が、静かに尋ねる。


「……じゃあ、

 俺たちの仕事は、

 誰にも分からないままですか?」


「そうだ」


 即答だった。


 だが、

 続ける。


「だからこそ、

 続ける価値がある」


 全員が、俺を見る。


「評価を目的にするなら、

 ここにはいない方がいい」


 少しだけ、

 厳しい言い方になった。


「だが、

 被害を出さないことを

 目的にするなら――」


 一拍、置く。


「ここは、

 最高の現場だ」


 誰かが、

 小さく息を吸った。


 その夜。


 俺は、一人で地図を眺めていた。


 線は、増えていない。


 だが、

 空白が減っている。


 何も書かれていない場所に、

 “考え方”が行き渡り始めている。


 それは、

 報告書には残らない。


 だが、

 確実に世界を変えている。


 評価されない成功。


 称賛されない仕事。


 それでも――

 人が生きている。


 それ以上の理由は、

 俺には必要なかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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