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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第24話 王国の外で起きた成功

 被害は、出なかった。


 それだけのことだ。


 報告書に書かれるのは、

 いつも通りの文言。


異常なし

対応不要


 王都にとっては、

 読む必要もない一行。


 だが、

 この集落にとっては違う。


「……本当に、

 何も起きなかったな」


 中年兵が、信じられないという顔で言う。


「魔物の足跡は、

 確かにあったのに」


 若い伝令役が、地図を見ながら頷く。


「分岐点を使わなかったのが、

 効いたんだと思います」


 誰かが胸を張ることはない。


 命令した者も、

 称賛される者もいない。


 ただ、

 起きなかったという事実だけが残った。


 俺は、少し離れた場所で

 その様子を見ていた。


 指示は出していない。


 判断もしていない。


 だが、

 確かに結果は出た。


「……十分だな」


 思わず、

 独り言が漏れる。


 この成功は、

 王国の記録には残らない。


 なぜなら、


公式判断ではない


正規ルート外


被害ゼロ


 つまり、

 “事件が起きていない”からだ。


 記録とは、

 起きたことを書くものだ。


 夕方、

 現地責任者が近づいてくる。


「報告書ですが……

 どう書けばいいでしょう?」


 少し、困った顔だ。


「書かなくていい」


 俺は、即答した。


「え?」


「起きていないことを、

 無理に書く必要はない」


 責任者は、

 しばらく黙り込み――

 そして、ゆっくり頷いた。


「……そうですね」


 その夜。


 焚き火を囲みながら、

 若い伝令役がぽつりと言った。


「王都は、

 俺たちのこと、

 何も知らないですよね」


 誰も否定しなかった。


 だが、

 それでいい。


 俺は、火を見つめながら考える。


 評価されない成功。

 称賛されない仕事。


 だが――

 それでも、人は救われている。


 ここで学んだ考え方は、

 誰かの名前と結びつかなくてもいい。


 むしろ、

 結びつかない方がいい。


 翌朝。


 集落を発つ準備をしていると、

 中年兵が声をかけてきた。


「……アルトさん」


「どうした?」


「俺たち、

 もう少し考えてみます」


 それだけだった。


 だが、

 それで十分だった。


 王国の中心では、

 今日も大きな案件が動いている。


 だが、

 王国の外では――


 誰にも知られない場所で、

 誰にも評価されない成功が、

 確かに積み重なっていた。


 それは、

 判断が“文化”になり始めた証だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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