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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第23話 伝えるべきは、答えではない

 変化は、すぐには表れなかった。


 集められる情報は、相変わらず雑多だ。


風が変わった


獣が森を避けている


夜の静けさが不自然だ


 どれも、

 決定打にはならない。


 だが、

 それでいい。


「……で、どう判断します?」


 中年兵が、俺に視線を向ける。


 以前なら、

 ここで俺が答えを出していた。


 だが今日は違う。


「お前は、どう思う?」


 そう返した。


 中年兵は、少し困った顔をする。


「正直に言っていいですか?」


「ああ」


「……よく分かりません」


 沈黙が落ちる。


 だが、

 誰も責めなかった。


 俺も、首を横に振る。


「それでいい」


 全員が、意外そうな顔をした。


「判断役がやるべきことは、

 正解を出すことじゃない」


 俺は、机に集められた報告書を指す。


「選択肢を、

 間違えにくくすることだ」


 紙を一枚、取り上げる。


「これを見て、

 何が言える?」


 若い伝令役が、慎重に答える。


「……人が通る場所が、

 少しずつ偏っています」


「なぜ?」


「安全だと思われているから、です」


「それが、

 どんな危険を生む?」


 少し考えてから、彼は言った。


「……魔物も、

 同じ場所を覚える」


 俺は、頷いた。


「それで十分だ」


 俺は、結論を言わない。


 代わりに、

 理由だけを補足する。


「魔物は、

 地形よりも“成功体験”を覚える」


「人も、同じだ」


 その一言で、

 空気が変わった。


 夕方。


 見回りから戻った補佐員が、

 息を切らして報告する。


「街道の外れで、

 足跡が増えてます」


「数は?」


「まだ、少ないです」


 以前なら、

 「様子見」で終わっていただろう。


 だが今日は違う。


「分岐点を、

 今夜は使わない」


 中年兵が、そう判断した。


 誰の指示でもない。


 彼自身の判断だ。


 結果、

 その夜は何も起きなかった。


 被害ゼロ。


 だが、

 誰も喜ばなかった。


 それが、

 正しい空気だった。


 焚き火の前で、

 若い伝令役が言う。


「……正直、

 前より怖いです」


「なぜ?」


「自分で決めてるから」


 俺は、静かに答える。


「それが、

 判断の重さだ」


 この日、

 俺は確信した。


 答えを渡す支援は、

 一番楽で、

 一番弱い。


 考え方を渡す支援だけが、

 俺がいなくなったあとも残る。


 それが、

 判断役としての

 本当の仕事だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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