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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第20話 判断が届くまでの距離

 報告は、すぐに出した。


 形式を簡略化し、

 必要な情報だけをまとめたものだ。


 公式地図にない通路。

 魔物の誘導兆候。

 被害が出る可能性。


 俺としては、

 これ以上削れない内容だった。


「……で、返答は?」


 現地責任者の問いに、

 俺は首を横に振る。


「まだだ」


 既読すら、付いていない。


 時間は、平等ではない。


 王都では、一時間の遅れは誤差だ。

 だが、ここでは違う。


 一時間遅れれば、

 結果が変わる。


「中央は、忙しいですから」


 責任者は、そう言って苦笑した。


「急ぎの案件は、山ほどある」


「分かっている」


 分かっているからこそ、

 胸の奥がざわつく。


 誰かを責めたいわけじゃない。

 中央が怠慢だとも思っていない。


 だが――


「優先度が、違う」


 俺は、低く呟いた。


 その日の夜。


 集落の外れで、

 見回りの兵と合流した。


「異常は?」


「今のところは」


 月明かりの下、

 森は静かだ。


 だが、

 静かすぎる。


「……来るな」


 俺は、無意識に拳を握っていた。


 根拠はある。

 だが、

 それを証明する時間がない。


 翌朝。


 中央からの返答が届いた。


 簡潔な文面だ。


《報告、受領》

現時点では、追加対応は不要と判断する。


 それだけ。


 現地責任者が、

 安堵したように息を吐く。


「ひとまず、良かったですね」


 俺は、紙を見つめたまま、動かなかった。


「……いいや」


 声が、少しだけ硬くなる。


「これは、“判断が遅れた”という返答だ」


 責任者が、戸惑った顔をする。


「でも、中央がそう判断したなら――」


「中央は、

 “今”を見ていない」


 思わず、言葉が強くなった。


 自覚して、口を閉じる。


 珍しいことだ。

 俺が、感情を表に出すなんて。


 その日の昼。


 森の奥で、

 小さな被害が出た。


 人命はない。

 だが、

 家畜が数頭。


 現地責任者が、唇を噛む。


「……防げた、はずですよね」


 俺は、答えなかった。


 答えられなかった。


 防げた。

 間違いなく。


 判断が、

 もう半日早ければ。


 俺は、地図を強く押さえた。


 紙が、わずかに軋む。


 怒りではない。

 誰かを責めたいわけでもない。


 だが――

 この距離は、

 許容できない。


「……仕組みを変える」


 自分に言い聞かせるように、呟く。


 中央の判断を待つだけでは、

 この場所は守れない。


 俺がやるべきは、

 “正解を出すこと”じゃない。


 正解が、

 間に合う形を作ることだ。


 その夜、

 俺は報告書とは別の紙を取り出した。


 正式書類ではない。


 だが、

 必要なものだけを、

 簡潔に書き始める。


「判断役は、一人である必要はない」


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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