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追放された支援術師、実は王国の損失を消していた件 〜勇者パーティを抜けたら、判断役として国家案件を任されました〜  作者: 鷹宮ロイド


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第17話 判断が届かない場所

 その依頼は、正式な書式では届かなかった。


 商会経由でも、

 ギルド経由でもない。


 ただ一枚の簡素な報告書が、

 王都の詰所に回ってきただけだ。


「……外縁部か」


 地図を広げ、俺は小さく息を吐いた。


 王国の端。

 正規街道から外れた地域。


 人はいる。

 物流もある。


 だが――

 判断が、最も遅れる場所だ。


「被害は?」


 役人が答える。


「すでに発生しています。

 小規模ですが、避けられた可能性が高い」


 その言葉で、十分だった。


 避けられた。

 だが、避けられなかった。


 それは、誰かの失敗ではない。


 判断が、間に合わなかっただけだ。


 現地に向かう道中、

 俺は報告書を読み返していた。


 内容は簡潔だ。


魔物の活動増加


兆候あり


対応遅延


 どれも、

 見慣れた言葉だった。


 問題は、その順番だ。


「……逆だな」


 本来なら、


 兆候 → 判断 → 回避

 そうなるはずだった。


 だが実際は、


 被害 → 報告 → 対応


 いつもの流れ。


 それが、

 この場所では致命的になる。


 外縁部の集落は、静かだった。


 騒ぎはすでに収まり、

 被害も限定的。


 だが、

 それが一番よくない状態だ。


「これで終わった、と思ってしまう」


 現地の責任者は、疲れた顔で言った。


「正直に言います。

 これ以上の対応は、難しい」


「責めるつもりはない」


 俺は、即座に言った。


「ここまでは、最善だ」


 それは、本心だった。


 判断材料が届かなければ、

 誰も正解は出せない。


 俺は、集落の周囲を歩いた。


 地形。

 風向き。

 足跡。


 そして、

 まだ報告に載っていない違和感。


「……これ」


 小さな痕跡。


 気づくには、

 戦うよりも、

 “見ている時間”が必要なもの。


「次は、ここに来る」


 そう告げると、

 現地の者たちは驚いた顔をした。


「もう、被害は出たんですよ?」


「だからだ」


 俺は、はっきり言う。


「被害が出た場所は、

 もう使われない」


 静かな断言だった。


 この時、

 俺は改めて理解した。


 王都で、

 判断役として評価されていても。


 判断が届かなければ、

 意味はない。


 ここから先は、

 個人の仕事じゃない。


 ――仕組みが、必要だ。


 その考えが、

 はっきりと形を持ち始めた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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