第15話 結果だけが残った
その依頼は、偶然にも同時期に発生した。
王都近郊の物流路。
複数の街道が交差する要所で、
魔物の活動が活発化しているという報告。
放置すれば、
王都への物資供給に影響が出る。
王国は、二つの判断を下した。
一方を、商会連合+判断役アルトに
もう一方を、勇者パーティに
条件は、ほぼ同じ。
規模も、危険度も、想定日数も。
比較には、十分すぎる舞台だった。
先に結果が出たのは、俺の担当区域だった。
「被害報告は?」
「なし」
「遅延は?」
「想定内です。
むしろ、早い」
報告は、それだけで済んだ。
魔物との戦闘は最小限。
進路変更と時間調整で、
問題の芽を潰しただけだ。
俺は、特に何もしていない。
判断しただけだ。
一方、勇者パーティ側は――
「……負傷者、二名」
「物資、破損あり」
「想定日数、超過」
致命的ではない。
だが、“成功”とも言えない。
ギルドの評価担当が、
両方の報告書を並べて見比べる。
「同条件……ですね」
誰かが、ぽつりと呟いた。
否定する者はいなかった。
簡易報告会の場。
大きな声も、怒号もない。
ただ、事実が読み上げられる。
「商会連合案件。
判断役アルト。
結果、損失ゼロ」
淡々と。
「勇者パーティ案件。
結果、損耗あり。
追加対応、必要」
それだけだ。
比較は、
誰の目にも明らかだった。
レオンは、何も言わなかった。
言えなかった。
隣に立つミレイアも、ゴルドも、
視線を落としている。
かつてなら、
武勇で黙らせられたかもしれない。
だが今回は違う。
戦う場ではなかった。
判断と結果だけが、
価値を決める場だった。
会の終わり際、
評価担当が一言だけ添えた。
「今後、この規模の案件については――」
全員が、耳を傾ける。
「判断役アルトの関与を、
優先条件とします」
それは、宣告だった。
誰かを貶める言葉ではない。
だが、これ以上ないほど明確な線引き。
勇者パーティは、
その“優先条件”に含まれていなかった。
会場を出るとき、
レオンが、低い声で言った。
「……俺たちは、間違ってた」
俺は、足を止めなかった。
「間違いは、誰でもする」
振り返らずに、そう答える。
「だが」
一拍だけ、間を置く。
「結果が出た以上、
立場は変わらない」
それだけ言って、
俺は歩き去った。
その日を境に、
勇者パーティは
“王国の顔”ではなくなった。
代わりに――
戦わず、
声を荒げず、
前に出ることもない支援術師の名が、
王国の記録に、
静かに残り続けることになる。
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