第12話 もう一度、名前を呼ぶ
情報は、思ったよりも少なかった。
「……商会所属、か」
レオンは、ギルドの資料を睨みながら呟いた。
アルトの名は、確かに記録に残っている。
だが、詳細な居場所は伏せられていた。
「正式な専属契約が結ばれてるわ」
ミレイアが言う。
「しかも、王国案件にも関わってる。
ギルド経由じゃ、動向は追えない」
ゴルドが、腕を組む。
「……つまり、
俺たちの立場じゃ、もう直接会えないってことか」
沈黙が落ちた。
つい数週間前まで、
同じパーティにいた相手だ。
それが今や、
“許可がなければ接触できない存在”になっている。
「……ふざけるな」
レオンが、低く吐き捨てた。
「追い出したのは俺たちだ。
だったら、呼び戻すのも俺たちだろ」
その言葉に、ミレイアは首を振った。
「違うわ、レオン」
静かな声だった。
「“追い出した側”には、
戻す権利はない」
レオンは、何も言い返せなかった。
手当たり次第に、話を聞いた。
地方商会。
護衛ギルド。
街道関係者。
だが、返ってくる言葉は、どれも似ていた。
「アルト?
ああ、判断役の人だろ」
「今は忙しいぞ。
国家案件が優先だ」
「勇者パーティ?
……ああ、前にいたって聞いたな」
その言葉に、必ず続く沈黙。
そして、微妙な間。
説明はいらない。
評価は、すでに共有されている。
「……俺たちが、間違ってたってことか?」
ゴルドが、ぽつりと呟く。
レオンは答えなかった。
否定すれば、
今の状況すべてが説明できなくなる。
数日後。
レオンは、最後の手段に出た。
商会本部への、正式な面会要請。
返答は、短かった。
《当該支援術師は、
現在、王国案件に従事中。
個人的接触は控えられたい》
事務的で、
感情の入り込む余地がない。
「……拒否、か」
ミレイアが目を伏せる。
「正確には、“優先順位が違う”ってことね」
その言葉が、
レオンの胸に重くのしかかった。
かつて。
アルトは、
自分たちの予定に合わせて動いていた。
今は、
王国の予定が、アルトを動かしている。
立場が、完全に逆だ。
一方その頃。
俺は、王都郊外の詰所で
地図と報告書を突き合わせていた。
「次は、ここだな」
「判断役は?」
「アルトで」
いつものやり取り。
そこに、商会の責任者が声をかけてきた。
「……勇者パーティから、
面会の打診が来ている」
俺は、ペンを止めた。
「断った」
責任者は、はっきり言う。
「今は、
君を引き合わせる理由がない」
俺は、何も言わなかった。
否定も、肯定も。
ただ一つ、確かなことがある。
あの時、
彼らは“選んだ”のだ。
俺を切り捨てるという選択を。
そして今、
選ばれる側にいるのは――俺だ。
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