第10話 勇者パーティ、格下扱いされる
ギルドの空気が、いつもと違っていた。
視線が、微妙に避けられる。
受付の対応が、どこかよそよそしい。
「……次の依頼を出してくれ」
レオンが言うと、受付嬢は一瞬だけ手を止めた。
「確認します」
そう言って、奥の書類棚を調べ始める。
妙に、時間がかかった。
「お待たせしました」
戻ってきた彼女の声は、事務的だった。
「現在、勇者パーティの依頼可能ランクは
一段階、制限がかかっています」
一瞬、意味が分からなかった。
「……は?」
レオンが聞き返す。
「どういうことだ。
俺たちは勇者パーティだぞ」
「承知しています」
受付嬢は淡々と答える。
「ですが、直近二件の依頼において、
想定外の損耗と、未達成案件が記録されています」
ゴルドが、思わず声を上げた。
「未達成って……あれは想定外だっただろ!」
「記録上は、そうなっていません」
受付嬢は、机上の書類を示した。
「“事前回避可能だったリスクを回避できなかった”
と、判断されています」
レオンの喉が、わずかに鳴る。
その文言に、覚えがあった。
――以前、誰かが何度も口にしていた言葉だ。
「よって」
受付嬢は続ける。
「次回以降、
高難度案件には補助人員の同行が条件となります」
「補助……?」
「索敵・進路判断役です」
その瞬間、
三人の間に、短い沈黙が落ちた。
レオンは、強く言い返そうとして――
言葉を失った。
それが、今の評価なのだと理解してしまったからだ。
「……ふざけるな」
ギルドを出たあと、レオンが吐き捨てる。
「俺たちを、信用していないってことか」
「信用してない、っていうより……」
ミレイアが言葉を選ぶ。
「“管理が必要”って思われてるんじゃない?」
ゴルドは、何も言わなかった。
否定できなかったからだ。
「……代わりの補助役を付けろ、ってことか」
レオンが唸る。
「支援術師なんて、いくらでも――」
言いかけて、止まった。
“いくらでもいる”はずなのに、
なぜ、条件として明記されるほど重要なのか。
「なぁ」
ゴルドが、ぽつりと呟く。
「最近、
“失敗しなかった依頼”って、いつだ?」
誰も答えなかった。
思い出せなかった。
同じ頃。
別のギルド窓口で、
アルトの名が、何の説明もなく通っていた。
「判断役は?」
「アルトで」
「ああ、なら問題ない」
それだけで、話は進む。
比較されることすらなく、
ただ“前提条件”として扱われている。
勇者パーティは、
まだ大きな失敗をしたわけじゃない。
名を失ったわけでもない。
追放されたわけでもない。
だが――
「特別扱い」ではなくなった。
それが、彼らにとって
最初の、そして決定的な変化だった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




