第4話 世界規模の地震、そして
それは唐突の出来事だった。
いや、唐突というのは言葉に語弊がある。
だって、この“現象”が起こる前から、私たちは「世界的な地震」という地球からのSOSに嫌でも気づいていたのだから。
世界的な地震が起こるのは何かの前触れだと、私は師匠に不安を打ち明けたとき、師匠は「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません」と断定はしなかった。
そういうものか、と私は納得し、そこで思考停止に陥ってしまった。
だが、「世界的な地震」は明らかに――「すべての人類の観測範囲」だったのだ。
ここで言葉を言い直そう。
それは起こるべくして起こった当然の出来事だった。
今まで体験したことのない世界規模の地震、それが地球を襲ったのだ。
ただの大きな地震ではない、それは一日間にも渡って続いた。
そのとき、私は自宅の部屋にいて、パソコンで小説を書いていた。
気味の悪い地震が起こると、すぐに私は閉じたパソコンを胸に抱き、その場にうずくまった。
その直後、本棚の本が何十冊も私の背中に落ちてきたので、驚きのあまり、私は舌を噛んでしまった。
口の中が血の酸味でいっぱいになり、私は血の混じった唾を吐くと同時に、それを機に悲鳴を上げた。
それからは、ただただうずくまっていた。
しかし、いつまでも経っても地震は収まる気配がないので、さすがの私もいぶかしみ、冷静さを取り戻した。
けれど、なかなかに強い揺れで立つことも歩くことも、何かにつかまらないと難しい状態。
何せ、地震の真っ最中なのだから。
今度は両親の安否が気になり出し、不安になった私は物につかまって立って歩くことを決意した。
恐る恐る一歩、また一歩と壁を頼りに歩き出す私を急かすように、そのとき両親の悲鳴が聞こえた。
「父上……母上!」
濃い血の唾を勢いよく吐き出した私は、そう叫んだ。
悲鳴が聞こえたのは、なんと外からだった。
一体どうしたのだろう、と焦る気持ちを抑え、私は着実に一歩ずつ前に進み、自室から出た。
私の住むマンションは狭いため、案外すぐに外に出られた。
外に出てすぐ、私は腰を抜かしている両親の姿を見つけ、どこも傷らしい傷はなかったので、とりあえず玄関扉につかまりながら安堵――した、そのとき。
私は外が暗いことに違和感を覚え、ふと外の風景を見て、愕然。
戦慄。
そのとき、私が見たもの……それは倒壊した建物でも火事で燃え盛る建物でもなく、かといって怪我人や死者でもなく――宇宙にも届くかと思われるほどの超ド級の摩訶不思議な“バカ高い黒い壁”だった。
それは遠くからでも見えるほどの、超巨大な壁。
それが大地から生え続け、伸び続けていた。
そうか、これが原因で地震は今も続いているのか、と私はそのとき思い当たった。
そう、その“壁”は地球にそびえたっていながら、まだまだ生え続け、無限に伸び続けていたのだ。
それから翌日の昼過ぎになって、ようやく地震が収まった。
詳細に言うと、地震発生後から数時間で揺れが震度三くらいにまで落ち着き、それからは朝まで同じくらいの揺れが続いていた。
翌日の朝になれば、震度一、二くらいの揺れになり、それで昼過ぎには完全に揺れが収まった。
宇宙にも届く“摩訶不思議な超ド級の高い黒の壁”を残して――ようやく地震は収まったのだった。




