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第8話

○田舎警察署内/翌日


<主要登場人物>

・藤堂=元警察庁からの選抜ユニットメンバー・現在田舎警察の一刑事

・新人=田舎警察の新人刑事

* * * * * * * *


田舎日報を持って入ってくる新人。

テーブルにはカップラーメンが2個。

鼻歌を歌いながらお湯を注ぐ藤堂。


新人「田舎日報さん、扱いでかいですねー。1面トップに、誘拐した瞬間の写真、

   載せてますからね。よく許可しましたねー。」

藤堂「違うよー、わざとだよ。」

新人「へっ?」

藤堂「犯行の瞬間が地元新聞の1面トップに掲載されれば、犯人もうかうかできない

   だろー。そうすれば犯人も何が動くはずだから、それで足をつかめる。」

新人「まあ、そうですよねー。て言うか、あの写真、運転手の助八が撮ったんじゃな

   かったかなー?」

藤堂「何で?」

新人「撮影、社会部記者渡辺、ってなってますよ。

   連絡を受けて遅れて現場に来た彼は、犯行の瞬間の写真、撮ってないはずです

   よねー。」

藤堂「何シロウトみたいな事言ってんだよ。世の中、そんなモンだよ。うちの署だっ

   てそーだろー。」

新人「そりゃ、まあ、そうですがー。」


蠅が飛ぶ音が室内に響く。

顔をしかめて蠅を注視する藤堂。

蠅の位置を悟ったかのように、近くにある書類を丸めてたたく藤堂。


間。


何事もなかったように飛び上がる蠅。


藤堂「くーっ! 逃げた! 取り逃がした! 逃げ足の早いやつだなー。」

新人「だめですよ、藤堂さん、殺生は。前からさんざん言ってるじゃないですか。」

藤堂「だって、蠅は汚いし、不衛生だよ。それにただの虫じゃん。」

新人「蠅だって一生懸命生きてる生き物なんですよ。一寸の虫にも五分の魂、

   って言うじゃないですか。物事の価値を外見や容姿だけで判断しては、

   物事の真理をつかめませんよ。」

藤堂「仏の導き、か? さすが仏の道に仕える者のお言葉は崇高でために

   なるなあ。」

新人「だから僕はお坊さんではありません。」


蠅の音を注視する新人、すると手に持つ箸で蠅を見事にキャッチする。


藤堂「おおおっ!」


新人、何事もなかったように窓を開け、蠅を外に逃がす。


藤堂「さすがは仏の道につかえる高僧。チベット出身だったっけ?」

新人「単に運動神経がいいだけです。」

藤堂「運動神経がいい! じゃあ崇山少林寺の出身か?」

新人「ラーメン、伸びちゃいますよ。」

藤堂「ああ、そうか、そうだったな。」


藤堂、汗をかきながらラーメンを食べる。

おくれて席につく新人。

田舎日報の記事が気になる新人。


藤堂「しかし、なあ。暑は夏いなー、なんてな。」


新人、田舎日報の記事を目で追う。


藤堂「やっぱり暑い夏は熱いラーメンに限るなあ!」


新人、田舎日報の記事に何かに気づく。


藤堂「おい、スープがなくなるぞお。」

新人「藤堂さん、これ気がつきました。」

藤堂「......何がだあ。」

新人「この誘拐現場の瞬間写真の、この容疑者の腕のタトゥー。」

藤堂「......。」

新人「これって、この模様のタトゥーって、昔、藤堂さんが係わった事件の、

   カルトテロリスト集団のシンボルマークじゃなかったでしたっけ?」


藤堂、ひときわ大きな音をたて、スープを飲み干す。


--------------------------------------------------------------------------

○県警受付


<主要登場人物>

・渡辺=新聞記者

・助八=運転手

・婦警の神子

・婦警のウタ

・草薙=警察庁からの元選抜ユニットメンバー

* * * * * * * *


渡辺と助八、入口から入ってくる。

急にモジモジする助八。


渡辺「どうしたんだよ、急に。」

助八「大丈夫かなー、伝蔵。拷問にあってないかなー?」

渡辺「いつの時代の話してんだよ。今どきそんな事あるかい。」

助八「水責めとか、煮えたぎるお釜とか、貼付け獄門、城内引き回しとか、

   いろいろあるじゃん。」

渡辺「お前の頭、江戸時代かよ! って、なんで俺の後ろでコソコソするんだよ。」

助八「いや、伝蔵がどうなってるか、面会したいんだけど、あの時の婦警の

   ウタさんがいたら、面倒だなー、と思ってさー。」

渡辺「いるいる。あの時の、婦警のウタさん、入るよ、受付に。」

助八「えーっ! マジー? ...あ、ホントだー。じゃ、あっしはこれで! 

   また次回にするでやんすー。」


出ていく助八。


渡辺「何なんだよ、このクソ暑いのに。蒸し暑いやつだなー。」


汗をふきながら渡辺入ってくる。

受付に座る婦警の神子。その奥に婦警のウタ。


渡辺「すみません。田舎日報の記者の渡辺ですけど、取材に来ました。」

神子「あっ、はいはい。田舎日報さんですねー。見ましたよー、この間の

   一面トップ。誘拐される瞬間の犯人の写真、よく撮れましたね。ご協力、

   ありがとうございます。」


渡辺、婦警のミサの事が気になり、チラチラ頭を動かして捜す。


神子「田舎日報さん、何の取材ですか?」

渡辺「えっ? あっ、はい。80才のおじいさんが95才のおばあさんを助けた

   ニュースの続報です。」


渡辺、婦警のミサの姿が見えず、必死に探す。


神子「えっ? 80才のおじいさんが95才のおばあさんを助けた? 

   あっー、その件の続報ですね。報道資料今、出しますからね。」


渡辺、相変わらず婦警のミサの姿を探す。


神子「はい。田舎日報さん。詳細はここに書いてありますからね。」


渡辺、婦警のミサを見つけられず、あきらめて資料を受け取る。


渡辺「あっ、ありがとうございます。」

神子「それから、田舎日報さん。

    80才のおじいさんが95才のおばあさんを助けた、ではなく

    95才のおじいさんが80才のおばあさんを助けた、ですからね。

    情報は、正確に、ですよぉ。」

渡辺「えっ? 80才のおばあさんが95才のおじいさんがを助けた?」

神子「...いいですから。はい。報道資料、渡しましたからね。資料通りにちゃんと

   書いてくださいねー。」

渡辺「...あ、どうも、ありがとうございます。(資料をパラパラめくり)

   ...あーっ、本当にこの2人、結婚するんですねー! 事件がきっかけで、

   身寄りのないお年寄りが結婚するなんて、何かいい話しですねー。」


婦警の神子、あきれて渡辺の話を聞こうともしない。


渡辺「...いいなぁ。俺も早く、なぁ...。」


渡辺、婦警のミサの事が気になりながら、出ていく。


神子「...何よ。彼女の事ばっかり探してさ。残念でしたー、あの子は今日はお休みで

   すよー! なにさ、因縁つけて、逮捕しちゃうぞ。」


渡辺とすれ違いに一人の男が入ってくる。

草薙である。


草薙「...すみません。」

神子「...はいっ!」

草薙「本庁から派遣された草薙ですが、本日、ここ県警本部に着任しました。」

神子「...は、は、はいっ!」

草薙「どこに行けばいいでしょうか?」

神子「(書類を見て)まずは署長に報告願います! 署長室は、ここを真直ぐ行っ

   て、つきあたりを右です。」

草薙「...どうも、ありがとう。」


草薙、軽く会釈して、その場を去る。


神子「...大変、大変! これは、大変よぉ!」

ウタ「何なになに? どうしたの?」

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