表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

第6話

○喫茶店


<主要登場人物>

・渡辺=新聞記者

・助八=運転手

・伝蔵=運転手助八高校時代の悪友

・女性客

* * * * * * * *


渡辺からの電話を受け取る助八、喫茶店内で涼しそうにアイスコーヒーを飲んでいる。


助八「あい。」

渡辺「あい、じゃねーよ! あいじゃ! お前今どこにいるんだよ?」

助八「えっ? 今? ちゃてん。きっちゃてんで、冷たくておいしいアイコ

   飲んでるのー。」

渡辺「飲んでるの、じゃねーよ! このクソ暑い中! 早く迎えに来いよ! お前、

   運転手だろ?」

助八「あれー、ナベちゃん、おっかしいなー。自分で行くっていって、車降りたの、

   ナベちゃんぢゃないのー?」

渡辺「うっせーなー! ゴタゴタ抜かすのはいいから、早く迎えにこいよなー!」

助八「迎えにこいって、どこー?」

渡辺「県警だよ! 県警本部にきまってんだろ! さっきそう言ったじゃないか!」

助八「ああー、県警本部。はいはい、わかったー。

   でもだってさー、一応確認しなくちゃさー。情報を確認するのは、

   新聞記者の鉄則でしょー?」

渡辺「あああああーっ! いいから早く来い!」

助八「......ナベちゃん、何怒ってんだ? ばっかじゃなーい。」


立ち上がろうとする助八。

伝蔵が入ってくる。


伝蔵「おうっ。」

助八「......。」

伝蔵「おう、助八! ひさびさだなあ。」

助八「......ああー、伝蔵! 伝蔵じゃないか! 何やってんだ?」

伝蔵「何やってんだって、お前こそ何やってんだ?」

助八「......ん? 俺? 俺今、新聞のカメラマンやってんだ。」

伝蔵「......新聞のカメラマン? お前がー? ホントかよ?」

助八「本当。田舎日報のカメラマン。」

伝蔵「へー、オバカコンビの伝蔵と助八と名を馳せた相棒のお前が今や新聞の

   カメラマンか。すっげー。で、どんな感じなんだ? 

   新聞のカメラマンの仕事は?」

  

手前の席に座る伝蔵。


助八「ん? え? あはは。ま、まあまあだな。」

伝蔵「どんなところで仕事してんだよ? 県議会とか証券取引所とか大企業とか?」

助八「ん? え? あはは。ま、いろいろだね。」

伝蔵「カメラマンって言えば、カメラだろー! お前は、どんな種類のカメラ、

   使ってるんだ? やっぱ、色んな種類のカメラ、使うだろー?」

助八「ん? え? あはは。ま、いっぱいだね。」


沈黙


伝蔵「(気を取り直し)すげえなー、助八。お前が田舎日報の新聞カメラマン

   かよー。何かとってもうれしい気分だなー! お前は、俺たちの希望、俺たち

   田舎工業高校低能児クラブのホープってやつだなー。」

助八「お前、まだ煙草、吸ってるの? 身体に良くないよ。」

伝蔵「煙草? 俺は、昔から煙草なんか吸ってないぜ。」

助八「だって、ホープって、煙草だろ?」


沈黙


伝蔵「......よう、助八! 使ってるカメラって、最新のデジカメだろ? 

   さすがにスマホで写真取材はしねーよな。

   本当はアナログの銀板写真の方が写り具合がいいんだけどなー。」

助八「銀板......? お前、板で写真とれるわけねーじゃねーか。」


沈黙


伝蔵「......それはそうと、お前どんなレンズ使ってるんだ? やっぱ望遠とか、

   種類もいっぱいあるじゃねーか? 何かすごいヤツをよ。」

助八「ああー、レンズねー。このメガネのレンズ、もうだめなんだよ。

   やっぱ買い替えた方がいいかなーと思って。

   最近さー、近眼の度が進んじゃってさー、

   マンガ読んでても、キャラクターの区別がつかなくて、もー大変だよー。」


沈黙


伝蔵「っておめえ、本当に新聞カメラマンの仕事なんかしてねーんじゃねーか?

   本当は運転手だったり、雑用だったりの、使いっぱかなんかぢゃねーのか?」

助八「お前、運転手をバカにするなよ! 運転手だって立派な仕事だぞ!

   俺が運転しなけりゃ、誰も現場に行けないんだぞ!」


沈黙


伝蔵「......おめえ、何怒ってるんだよー。」

助八「......。ん? え? あはは。そ、それはそうと伝蔵、お前今何やってんだ?」

伝蔵「ん? え? あ、俺? 俺はさあ、まあしけてるよ。いろんな事やって

   しのいでる。」

助八「お前まだ万引きやスリとかやってんのかー?」

伝蔵「......お前、たしか新聞カメラマンだったな......。」

助八「だーじょーぶ! 大丈夫! 言わないよ! 約束するよ!

   助八と伝蔵って言われたコンビじゃないか!」

伝蔵「だったら言うよ。秘密にしとけ。

   まあ、俺の今の生業は、まあスリだな。通勤時間帯の混んでる乗り物の中で、

   スリをするのが、まあ、本職だ。今朝なんかもよ、チビでトロそうなOLが

   いたんでさ、盗もうと思ったら、チカンですー! 

   なんて騒ぐんだよ。俺はスリであって、チカンじゃねーだろー。

   プライド傷つけられたなー。」

助八「......それってさあ、そう言う問題では......。」


伝蔵、手に持つボールペンを助八に見せる。


伝蔵「それはそうとさあ、最近の隠しカメラって性能いいなあ。

   この隠しカメラさ、アキバゾンの非合法の店でゲットしたんだけど、

   これ、凄いんだー。通信機能もついててさ、この隠しカメラがどこにあるか、

   自分のスマホに連動しててさ、GPSでわかるんだよー。

   なのにカメラとして使える優れものなんだよー。」

助八「えー、何それ? ボールペンに見せかけた隠しカメラ? しかもGPS機能

   つき......。そもそも隠しカメラ自体、違法なんじゃね?」

伝蔵「さー。持ってるだけなりゃいいんじゃね。まあ俺、使っちゃったけどー。

   今朝なんか、チビでトロいOLをスリする前に、ついでだから、

   スカートの中盗撮したんだよ。ほら、俺のスマホに転送されてるし。」

助八「お前、それって犯罪だよ。」

伝蔵「お前カメラマンだから、わかるだろー。良く撮れてると思うけどなー。」


伝像はそう言ってスマホの画像を助八に見せる。


助八「おほ、おほ、おほっ! これはすげーっ............」


助八、伝蔵から受け取った隠しカメラを手にして感心している。



同じ喫茶店の奥の席。

女性客がスマホで電話している。


女性「ですからね、誠に申し訳ないんですけど、オーディションの件は辞退

   させていただければ幸いです。ええ。だってお金かかるんでしょ? 

   入所金とかレッスン料とか、よくあるじゃないですか。

   私には払えませんし。え? お金はかからない? 無料?

   でも、でも。

   やっぱり辞退します。親も反対してるし。わざわざこの近くまで来ていただい

   て、非常に恐縮なんですけど。」


その時、喫茶店のドアが開き、黒装束の人物が入ってくる。

黒装束の人物、悩む事なく手早いスピードで女性客の背後に立ち、いきなり女性客を失神させ、抱えて誘拐する。


助八&伝蔵「ええええーっ!」


驚きのあまり助八、手に持つ隠しカメラのスイッチを押してしまう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ