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私の大好きな彼氏はみんなに優しい  作者: hayama_25


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第1話

「あ、柊君!おはよう!」


その声を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられる。

今日も、先輩の周りには誰かがいる。


私の隣にいるはずの人が、遠く感じる。


「彩音さん。おはよう」


柊先輩は人気者で、困ったことに…凄くモテる。


それは誇らしいことのはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。


「これ、この前貸してもらったノート!すごく分かりやすかった!」


彼女が差し出したノート。


貴方も…すごく分かりやすいですね。


柊先輩の事が好きで、私のことをライバル視してるってすぐに分かっちゃいましたよ。


私のいる前でわざわざ返さなくたって、教室同じなんだから、別に入ってからでも良くない?


見せつけるように、彼に笑顔を向ける彼女の姿が、胸に刺さる。


その視線、その態度、全部が私への挑発にしか見えない。


私が気にしすぎなだけなのかな。


そう思いたい。

でも、心はそう簡単に納得してくれない。


「それなら良かったよ」


先輩の優しい笑顔。


私にも向けてくれるはずのその笑顔が、今は彼女のものになっている。


胸が、痛い。


「あのさ、勉強教えてくれない?」


うわ、出た。

その手口は、もう何度も見てきた。


勉強を口実にして、先輩に近づこうとするのはもうお決まり。


「もちろん。俺でよければ」


先輩は優しい。

けど、鈍感でもある。


だから彼女の策略に、気づいていない。

それがまた、もどかしい。


「じゃあ放課後、二人きりで教えてくれる?」


その言葉に、思わず眉がひそむ。


二人きり?普通に考えてダメでしょ。

私がいるのに、そんなお願いをするなんて。


心臓がドクンと鳴って、嫌な予感がする。


「んー、それは…二人きりじゃなければ」


先輩の返答に、少しだけ安堵する。

でも、彼女の反応は予想通りだった。


「えー、どうして?もしかして…」


すっごい睨むじゃん。

え、怖…。


彼女の眼力に、思わず身をすくめる。


「流石に二人きりは…ごめんね。俺には彼女がいるし、」


その言葉に、胸が高鳴る。


そもそも、彼女の前でそんな発言をするなんて…

この人、なかなかやばい。


私の存在を、試すように見てくる彼女の目が痛い。


「えー。二人きりの方が勉強も捗っていいのにー」


いいのはあんただけだろ。

心の中で毒づいても、口には出せない。


私の中の小さな怒りが、静かに膨らんでいく。


「ごめんね、休み時間に教えてあげるよ」


先輩の優しさが、時に残酷に感じる。

誰にでも優しいその態度が、私を不安にさせる。


「何もないのに?駄目なの?何、浮気するかって?柊君の事信じてないの?」


そう言う問題じゃない。

先輩の事は信じてる。


でも、あんたの事は信じてない。

だから、ダメに決まってる。


「こら、そんな言い方しないの。心桜が怖がってるでしょ?」


先輩の言葉に、少しだけ救われる。

でも、彼女の視線はまだ私を刺してくる。


「柊先輩の事、信じてますけど…それでも…いや、です」


声が震えそうになる。


でも、はっきり言わなきゃ。

嫌なもんは嫌だ。


それだけは、譲れない。


「うん。心桜が嫌がることは俺もしたくない」


その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

でも、彼女はまだ諦めていない。


「じゃあ今教えてよ。みんないるからいいでしょ」


確かに周りに人はいる。

でも、そういう事じゃない。


下心丸出しの人と一緒にいて欲しくない。

それだけで、心がざわつく。


「それならいいよ」


いや良くないよ…

心の中で叫んでも、誰も気づいてくれない。


「じゃ、行こ!」


ちゃっかり腕まで組んじゃってるし、

その姿に、胸がぎゅっと締め付けられる。


「その前に、心桜を教室まで送ってくるよ」


彼女よりも、私のことを優先してくれる姿勢にまだ救われた。


でも、彼女の次の言葉が、私を突き落とす。


「え、そんな事までしてもらってるの?」


わざと私にだけ聞こえる声。


完全に子供扱い。

カップルじゃなくて兄妹にしか見えない〜って。


その言葉が、耳に焼き付いて離れない。


私にはハッキリ聞こえた。

でも、先輩には届いていないみたい。


事実だから、否定できない。

それが、悔しい。


「私…大丈夫!一人で行けるから」


声が少し震えていたかもしれない。


でも、強がらなきゃ。

泣きそうになるのを必死で堪えて、笑顔を作った。


「え、ちょっ、心桜?」


先輩の声が背中から聞こえる。

でも、振り返れなかった。


あの人の視線に耐えられなかった。


泣きそうになったから。

あそこで泣いたら、どうせまた馬鹿にされる。


だから、私は走った。


先輩の声も、彼女の視線も振り切って。

自分の教室に向かって、ただひたすらに。

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