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【完結】訳あって『王家の影』、やっています  作者: Debby


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17  七色の蝶(最終話)

 第二王子の卒業から三ヶ月が経った本日、王太子夫妻が王都の教会で結婚式を挙げる。

 こういったイベントの時は必ず何かしら()()を付けようとするヤツがいるので、王太子夫妻と教会の警護はもちろん、決して問題を起こしてなるものかと『王()の影』総出で見回りをするのだ。


 シエルもこの日、レストと共にデートと称した見回りを行っていた。


「あの(クソ)司教!ムカつきますわ!!」

「シエルは大司教を呼ぶときだけ口調が荒くなるね」


 今日は人目に付く公園での見回り(デート)だ。


「ちょっと妬けるかな?」

「っっっっ!」


 令息モードのレストがシエルの髪を一房取り口付け、顔を真っ赤に染めるシエルを見て、満足そうに笑う。

 こんな時のレストからは、グレイの粗野な感じがこれっぽっちも感じないから不思議だ。未だに別人ではないかと疑いたくなる。


『王家の影』には二種類ある。

 ひとつが国王直属の『王()の影』。そしてもう一つが民に紛れて生活している『王()の影』だ。

 大きく違うのは『王族の影』は仲間と『王都の影』のことを把握しているが、『王都の影』は正体を知られると日常生活に支障が出るためお互いに正体を隠しているということ。

 そしてシエルは先日までは後者()()()


『根』を操り人を転ばせたり、気配を探る程度しか出来なかった非戦闘員のシエルだったが、『王都の影』という令嬢には危険極まりない顔を持つことを心配した『王族の影』である婚約者(レスト)が、自ら護身術を教え込んだのだ。

 心配のあまりそれは次第にエスカレートし、シエルを立派な戦闘員に成長させてしまった。

 体術だけではない。以前教わった人間の意識を狩る方法をはじめ、根を網目を組むように操り複数の人間を捕縛する方法。特定の関節を細い根で絞めることによって動きを封じる方法、気配を探れるのであれば根を使い特定の人物の追跡を行うことも出来るのではないかとその訓練など──『スキル』の使い方もシエルが自身の身を守れるようにと指導、更に正体がバレては大変だと視線を向けず(ノールックで)遠隔操作──秘密裏に行えるようになったのだ。

 その為シエルはめでたく『王族の影』になって(ランクアップして)しまったのである。


 しかし『王族の影』は国王直属。これでやっと(クソ)司教とおさらばかとシエルは喜んだ。

 なのに(クソ)司教は国王に「未来の伯爵夫妻には王都で『王都の影』の手におえない大きな案件の際に活躍してもらってはどうか」と進言()()()()()のだ。


「誰かさんの言葉遣いがうつってしまったのですわ!」


 お陰で今後も(クソ)司教と顔を合わせることになってしまった!

 それに腹の立つことはそれだけではない。

『王族の影』になって知ったのだが、我が国の『影』には記憶に干渉する類いの『スキル』を持つ者がいて、スカウトを断ったり秘密を話してしまった場合は、本人と関係者の記憶を消される()()()()()らしいのだ!

 湖には浮かない・・・!




「ウグッ」


 公園の草むらから何かの呻き声が聞こえた。

 あまりにも小さな声だったため、誰も気付かない。


 ズッー・ズッーー・・・とひきずるような音がした後、草影から片足が姿を現す。公園で王太子の婚姻を祝っていた人たちから悲鳴が上がった。


「きゃー!」

「誰か騎士様を呼んで!」

「怪しい男が草むらで()()()いるぞ!」

「騎士様!こっちこっち!」


「通報、感謝します!」

「今日は王太子夫妻の結婚式だ。少しでも怪しいヤツは捕えるよう指示が出ているため連行します」

「危険物を持っている可能性があるぞ!このまま騎士団の詰所まで運んでいくか」


 シエルはレストからキンキンに冷えたアイスティーを受け取り口を付ける。


「かなり力加減が上手くなったね」

「それも、誰かさんのせいですわね」


 習いはじめの頃のように、腹が立つことを考えていても必要以上に締め上げることはなくなった。これは対象の身体に(証拠)を残さないためにも大切なことだ。


 ちなみに詰所に運ばれた男の服の内側からは爆発物が見つかったらしかった。

 何故あのような場所で眠っていたのか聞かれた男はもちろんその理由を答えることが出来なかった。






 そこから更に一年経ったある佳き日。

 とある王都の可愛らしい教会で、一組のカップルの結婚式が行われていた。


 厳かな雰囲気の中、教会の扉が開いた。

 そこに立つシエルとフルーガ子爵に列席者の視線が集まる。

 新婦とその父親だけが歩くことの許された赤い絨毯。その先に立ちシエルを待つレストとシエルの視線が絡み合った。

 お互いに微笑み合い、一歩、また一歩とシエルは父親にエスコートされレストの元に向かって歩んでいく。

 途中、生まれたばかりの子供を抱いたエッセとラフィー夫妻の姿が目に入った。

 そう言えばシエルが『王()の影』になってはじめて知らされたのだが、エッセの『スキル』は『縄張り(テリトリー)』。エッセの縄張りである紅茶店にはもともと『影』もしくはエッセが認めたもの以外は入れないらしかった。


 父の手の中からレストへ、シエルの手が移る──。


「シエルをよろしく頼むよ」

「はい」


 シエルは父であるフルーガ子爵と夫となるレストのやり取りにジンときて、思わず涙ぐみそうになる。それを誤魔化すために正面を向いたシエルの涙は、すぐに引っ込んでしまった。


「おやおや。新婦がそんな顔をするものではありませんよ。

 いえ、そう言えばその顔があなたのデフォルト(素の顔)でしたね」


 大司教様自ら──!と両家をはじめとする招待客が感動している中、当の本人は小声でそんなことを言っている。みんなが感動しているのに申し訳ないが普通の司祭様が良かったと、シエルは思う。


(あ、まさか知って──!?)


 シエルが隣を見ると、目が合ったレストも「自分も知らなかった」と言わんばかりに首を横に振っていた。


「おやおや、こう見えても私の『スキル』で祝福された夫婦は幸せになると言われているのですよ。私からあなた方へ最高のプレゼント(サプライズ)のつもりだったのですがね」


 何食わぬ顔で目の前の狸おやじが小声で言ってのける。

 私は招待客に背を向けているのをいいことに、小声で?叫んだ。

 

「──クソ司教!!」


 シエルの隣でレストが静かに肩を揺らしている。

 七色の蝶が空を舞い、その日は忘れられない思い出となった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました(*´▽`人)

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