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「探偵が見栄をはる話」

作者: 結晶蜘蛛


幼いころ泣いていたあたしを探偵さんが発見してくれ、それ以来、あたしの中で探偵はヒーローとなった。

 だから、あたしは探偵さんに頼み込み、高校を卒業したと同時に探偵さんの下で働かせてもらったわ。

 数日の張り込みに疲れたり、覚えることが多くて泣きそうになったこともあったけど、頑張って全部を覚えて――ついには独立することになった。

 だから私は探偵さんに恥じない探偵になりたいの。

 お金をもらって依頼者の味方になる、かっこいい探偵に。



「どうですか、これならあなたの借金も返せるんじゃないか?」


 そして今、私の前に札束が積まれている。

 1つ、100万円ほど……紙のテープでまとめられた束が飾えるのが馬鹿らしくほどテーブルの上に積まれていた。

 秘書を名乗る男は柔らかな笑みを浮かべている。

 今回の依頼は裏山に不法な投棄をしている業者の調査だったの。

 あたしは何日も張り込みをしたうえで、実際にやってきた業者を尾行して、全部調べ上げたわ。


「今までの信用を失っても十分におつりがくる金額ですよ。あんたが調べた工場建設の書類を偽造してくれるだけでいいんですよ」

「あたしは依頼人にうそなんてついたりしない!」

「しかし、あなたが借金を追った理由は別の依頼人に訴えられたからですよね」

「……そ、それは……」


 あたしは今、借金を背負っている。

 今回とは別の依頼人に虚偽が入った依頼をされ、さらにそれが元で失敗したにもかかわらず、あたしが訴えられたからだ。

 そのための裁判費用がかさんでいる――個人事務所にはなかなかきつい出費なの。

 

「裏切られてまで探偵を続ける必要がありますか? 今回の依頼の金額なんて、この報酬に比べれば微々たるものでしょう」


 たしかにそうかもしれない。

 実際に訴えられたときは、「なんであたしが……!」と思ったもの。

 この金をとってしまいたくなる。

 けど、あたしは、


「いいえ、受け取れません。帰ってください!」

「……後悔しないでくださいね」

「当り前よ!」


 でも、あたしを助けてくれた探偵さんはこんなお金のために依頼者を売ったりはしないわ。

 だから、あの人に恥じない自分であるためにも私はこんなお金なんていらないわ!



 あの場面を密かにビデオでとっておけば、と思っていたのは後の祭り。

 しかし、調査書を依頼人に渡した数日後に、くだんの業者たちは全員、逮捕されてしまった。

 見栄で断ってしまったあたしだけど、今回の話がどこかから伝わり信頼のできる探偵として仕事が舞い込むようになった。

 おかげで借金を返すこともできたし……これからも頑張っていこうと思う。

 次は、あたしが誰かの探偵さんになるのよ!



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