第9話 裏切り
「ララァ、私から離れないで下さいね……」
2人で夜の大通りを歩く。
マリアが怖がりながら私の腕に抱き着いた。
流石マリアだ。演技力も半端ない。
私も頑張らなくちゃ。
「何か出て来そうだね。……ほら、寒くもないのにコートを来てる顔色が悪そうな中年が近付いてくるわ」
「へ、変態ですか!?」
流石マリアだ。リアクションも失礼極まりない。
私達が騒いでいると、変態は駆け足で近付いて来た。
「聞こえていたぞ!誰が変態だ!こんな時間に出歩く不真面目な淑女には罰が必要なようだな!」
変態が徐ろにコートを広げると、お腹の位置に大きな目玉があった……
《side:蒼眼の告別者》
早速当たりを引いたようですね。
あの目玉から霊力の干渉を受けましたが、私の眼に暗示や幻術の類は効きません。
「……吾輩の魔眼が効かない?まあ良い、1人だけでも良かろう」
1人だけ?
「ララァさん!?」
「…………ばぶぅ」
突然、ララァさんが私の背中にしがみついてきた。
くっ!重すぎて身動きが取れない!
「……敵対行動する筈が、何故幼児退行しているのだ?」
「ララァさんを元に戻しなさい!」
「吾輩の名はアーリーマン。姿を見られたからには生きて帰す訳にはいかぬ。魔眼の効果が思っていたのとは違うが、どうやら足を引っ張っているようだし、構わず魂を頂くとしようか」
アーリーマン?
アーリマンは目玉に羽が生えた恐ろしい悪魔だけど、もしかして変異種というか変態種?
どちらにしても油断して良い相手では無いだろう。
アーリーマンが接近して来て、その長い爪を振るう。
私が咄嗟に回避しようと背を向けると、ララァが盾になってくれた。
「……おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
爪が突き刺さったララァが泣き出す。
耳元で泣かれるのは邪魔だが、私は構わずアーリーマンに退魔石を投げつけた。
至近距離で霊力を込めた退魔石が弾け、アーリーマンの腕がズタズタになった。
「……仲間を盾にする戦い方。貴女には情の欠片も無いのか!?」
「悪魔には分からないでしょう。ララァは操られながらも私を守ってくれているのです」
「えぇ……」
その後もララァは数々の攻撃から私を守ってくれた。
「…………」
「はあ!はあ!……仲間を死にかけるまで盾にするとは。非道な人間め!」
「ララァの崇高な意志を貶めさせはしない!」
私は自分の目に霊力を集中させる。
この技はセンスがなくて出来れば使いたくありませんでしたが……
「霊体破壊光線」
「何だと!?ぐあああああああ!!!」
目から広範囲に放たれた霊力がアーリーマンを消し去った。
「……ふう。何とかなりましたね」
「……………うっ!……な、何これ!?」
「ララァさん!大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃないかも。し、死ぬ……」
「ララァさあああん!!!」
「干渉に浸っている所悪いが応急処置させて貰うぞ」
突如現れたララァの使役悪魔が、何かが入った瓶を取り出しララァの口に突っ込んだ。
「一体何を!?」
「これで問題無い筈だ」
ごくっ!ごくっ!
凄い勢いで瓶が空になった。
「……カボチャ頭の癖に気が効くじゃない!はぁ〜♪生き返るわ〜!」
……回復薬かな?