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第6話 マリアの恩人


《side:蒼眼の告別者》


私は昔から優れた存在だった。


物心が付く頃には、周りから持て囃されて天狗になり、付き合う人間を選別していた。

その伸びた鼻を折る者が居なかったせいもあるが、成長するにつれ私はますます調子に乗ってしまった。


彼女に会ったのはフランベル退魔師育成学校。

数々の高名な退魔師を選出した、有名なエリート校でもある。

その学校で彼女は5浪していた。

最初は聞き間違いかと思い調べたのだが、7年前の生徒名簿にも彼女の名前があった。

私は5浪もして学校に居座る神経の図太さを確認したくて彼女に接触した。


「貴女が『5浪生』のララァね」

「えっ?『五狼星』?なんてカッコイイあだ名なのかしら!……あと4人誰だろ?」


どうやら図太いを通り越して浪人としての悟りを開いているようね。


「貴女が居ると学校の気品が下がるのよ!今すぐ退学なさい!」

「気品?退学?……あっ、コバルト先生!私って退学した方が良いですか?」

「何を言ってるんだ。お前が居なくなったら飲み会が盛り上がらないだろうが!今年も卒業出来なくて安心したぞ!」

「改めて言われるとムカつくわね」

「………」

「じゃあ、そういう事だから……」


何事も無かったかのように立ち去る彼女を見送った。

どういうこと?

飲み会?

教師に取り入っている?



それからも私は事あるごとに彼女に突っ掛かった。


「このクラスで満点はマリアだけだ。皆、拍手を」


周りからパラパラと拍手が起きる。


「私は満点だったけど貴女はどれくらいなのかしら?」


答案を受け取った私は彼女の席を通り過ぎる際に嫌味を口にする。


「今回は頑張ったから少しは良い筈……」

「ララァ!前回から10点も上がってるぞ!」

「嘘!?先生、本当ですか!?」

「ああ!俺は嬉しいぞ!同じ試験範囲で6回目の筈だがな!」


ララァと先生が抱き合って喜んでいる。

周りも2人の勢いに呑まれて盛大に拍手していた。

私は何を見せられているのだろうか?

一番点数が良かったのはこの私!

褒め称えられるべきも私だ!


だが後日、成績が優秀である事と退魔師としての強さは全く関係ない事を私は知る事になった。



課外授業当日……


私はクラスの友達と班を組み、降魔の森での課題をこなしていた。

彼女は歳が離れている事もあり、1人浮いてしまい引率の先生と組む事になった。


「あの〜。学生に飲ませても良いんですか?」

「お前、この課外授業何回目だ?引率者と同じ目線で生徒達を見守るんだ」

「飲んで良い理由は何処に?……じゃあ、ちょっとだけ」


本当に信じられない。

確かに彼女だけお酒を飲める歳ではあるが、生徒として断る意志も必要だろうに。



そして、課題が終盤に差し掛かった時に事件が起こった。


今迄は低級霊しか現れていなかったのに、急に悪魔が現れたのだ。

悪魔とは霊力が物質化した存在。

プロの退魔師でも相手の強さによっては簡単に殺される事もある。

私は初めて遭遇した危機に動揺を隠せなかった。


「……み、皆。いつも通りのポジションで行くわよ」

「キャアアア!!!」

「あ、悪魔!?」

「早く逃げないと!!」


私が皆に指示を出すのと皆が逃げ出すのは同時だった。


「……えっ?」

「何だあ?戦うんじゃねえのかよ?それともお前だけ見捨てられたのか?」


私の班のメンバーはクラスでも優秀な成績の者ばかりだった。それなりに仲が良くて上手く連携も取れていた筈だ。


「退魔師の卵って言うからちょっとは期待してたのによ。まあ良い。お前の魂でも喰らってとんずらするか」

「……や、やれるものならやってみなさい!」


悪魔はまるで私達が学生である事を知っている素振りだったが、私は恐怖で虚勢を張るので精一杯だった。


「良いねえ♪精々抵抗してくれよ。その方が味が美味くなる」

「な、舐めるなあああ!!!」


私は退魔の札を持って特攻したが、軽くいなされて吹き飛ばされた。


「がはっ!」

「おいおい。一撃なんて期待外れも良いとこだろ。まさか落ちこぼれを引いちまったか?」


今ので肋骨が折れたみたいだ。

激痛と恐怖で足が立つ事を拒んでいる。

ああ、私は此処で終わるんだ……

私が死を覚悟したその時、森の茂みの中から彼女は現れた。


「先生〜♪何処に行ったんですか〜♪まだ10本しか飲んでないですよ〜♪」

「何だあ?新手か?」

「ララァ!逃げて下さい!今目の前に居るのは悪魔です!ぐっ!!」


大声を上げたせいで痛みが増して蹲る。


「このひょっとこみたいな顔をしたのが悪魔〜?顔色が悪いひょっとこ怪人じゃないの〜?」

「……黙れ人間。殺してやる!」

「あひゃっひゃっ♪ひょっとこが般若になっちゃった♪」

「……死ね!」


悪魔に殴られたララァの顔から血飛沫が舞うが、吹き飛ばされる事は無くその場に立ち続けた。


「痛あああ………くないわね?……ふん。その程度なの?今度はこっちの番よ。喰らえ!空き瓶!」


ララァが悪魔の頭に手に持った空き瓶を叩きつけた。

派手に割れる空き瓶。

まだ少し中身が残っていたのか、悪魔の頭から液体が零れ落ちた。


「………………死ねえええ!!」


悪魔はララァの腹を殴ったが、ララァは蹲るフリをしながらタックルしかけ、悪魔を地面に押し倒した。


「な、何故俺の攻撃が効かない!?」

「そんなの決まってるじゃない!私が……オロロロロロロ!!!」

「ギャアアアアア!!!」


不意を付いた嘔吐が悪魔の顔面に叩きつけられた。

……辺りが静けさに包まれる。

やがて、ふらつきながら立ち上がった悪魔は急いでララァから距離を取り逃げて行った。


「……ふっ。私が超絶美少女退魔士候補生のララァ様と知って恐れをなしたようね♪」



私は、もう少女で通じる歳じゃないだろと思いながら気を失った……








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